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第一章 ラバネス半島編

7.香水をつくろう!

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僕、アレン兄上、レミリアの三人で相談をした結果、まずは香水を作ってみることになった。

前世の日本の記憶では、精油にエタノールを加えるだけで香水を作ることができる。

このエクストリア世界では怪我をしても、ポーションで治療すればいいから、傷口を消毒するという考えに乏しい。

だから、エタノールは存在していないのだ。

まずはエタノールを作る必要がある。

僕の記憶が正しければ、アルコール濃度の高い酒を蒸留すれば、エタノールを精製することができたはず。


次に香りの成分である精油だけど……


どんな精油を作ろうか悩んでいると、レミリアが何かを思い出したようにウットリした表情をする。


「ラバネス半島の森にはキラーパンサーという魔獣が生息しているのですが、その革には女性を虜にするような香りを放っているんです」

「それはいいね。レミリアの案を採用しよう」

「女性が好む香りなら、私も興味がある」


レイミアには普段からお世話になっているから、彼女の好きな香水を作ってあげたい。

アレン兄上も乗り気だし、キラーパンサーの香水を作ってみよう。


僕はレイミアに頼んで、ジョルドを部屋に呼んでもらった。


「ジョルド、至急で用意してもらいたいモノがあるんだ。レミリアと二手に分かれて準備してほしい」

「今度は何事ですか?」

「香水を作ろうと思ってるんだ。大至急でキラーパンサーの皮、それとアルコール純度の高い酒を調達してきてほしい」


僕の指示により、二人は邸を出て、レイミアは冒険者ギルド、ジョルドは酒屋へと走っていった。

しばらく待っていると、ジョルドが荷馬車に酒樽を積んで戻ってきた。


「この酒は『ドワーフの火酒』と言いましてアルコール濃度が九十九だそうです。こんなキツイ酒を用意して何をされるんですか?」

「まあ、見てて」


自室の床に羊皮紙を広げて、僕は『創造魔法陣』のスキルを使って、『蒸留』の魔法陣を描いていく。

酒樽を魔法陣の上に乗せて、手から魔力を流す。

すると魔法陣が輝きだし、酒樽の中でボコボコと音がし始める。

そしてその音が静かになり、魔法陣の輝きも次第に小さくなって消えていった。


これで酒樽の中に蒸留されたエタノールが溜まっているはずだ。


そんなことをしている内に、レイミアが解体前のキラーパンサーの皮を持って帰ってきた。

ドサっと目の前に置かれたキラーパンサーの皮からは、じゃ香に似た香りが漂ってくる。

日本の記憶ではじゃ香は、ジャコウジカの内臓にある香嚢から成分を抽出するけど、キラーパンサーに香嚢があるかわからないし、そもそも内臓を見てもどれが香嚢かわからない。

だから濃い香りがする皮の部分を加工して、成分を抽出できないか試してみようと思ったのだ。


羊皮紙に『香りの成分抽出』の魔法陣を描き終え、その上にキラーパンサーの皮を入れた樽を乗せる。

そして魔法陣に手を添えて魔力を流すと、樽の中のキラーパンサーの皮のが空中に浮かび上がり、クルクルと回転しながら粉々に分解され、粉と液体に分離されて樽の中へと溜まっていった。


この液体がキラーパンサーの香り成分を抽出した精油のはず。


どうやら液体のほうが精油のようで、粉のほうは残りカスのようだ。

それから、僕の指示に従って、レミリアはスプーンを使い、エタノールの樽と精油の樽から液体を取り出し、瓶の中で調合を始めた。


何度か失敗しながら、試行錯誤を繰り返し、やっと彼女好みの香水が完成した。


こういう香水の調合って、男の僕にはちょっと難しいから、レイミアに頼んでよかったよ。


完成した瓶に顔を近づけ、アレン兄上がクンクンと香りを嗅ぐ。


「ほう……これがキラーパンサーの香水か。独特の香りだが、確かに癖になる香りだね」

「女性が好まれる香りですか。これは私も試してみないと」


ジョルドは香水の瓶を片手で持ち、もう片方の手の平の上に香水の液を出して、ガバガバと首や手に塗り始めた。

その様子を見て、レイミアは残念そうな目でジョルドを見る。


「香水はそんなに多くつけるものではありません。手首や首、両耳の後ろなどにチョンチョンとつけるものです」

「そうなんですね。香水などつけたことがないので、わかりませんでした。さすがはレイミアさんですね」


長年ディルメス侯爵家に仕えているジョルドは悲しいけど女性との恋愛をする機会が少ない。

この香水で、少しでも女性と仲よくなれればいいのだけど……

もうそろそろジョルドも二十歳後半だから、お嫁さんをもらってもいい年頃だからね。

影ながら応援してるよ。


できあがった香水の瓶を手に取って、アレン兄上が僕に問いかける。


「これ何本かもらっていってもいいか?」

「誰かにプレゼントするんですか?」

「貴族学院の女子達に配ってみようと思ってね。もし気に入ってもらえたら顧客が増えるじゃないか」


アレン兄上は王都にある貴族学院に通っている。

貴族学院には大勢の貴族の子息が、勉学のために集まってきているから商品の宣伝には丁度いいかもね。

キラーパンサーだけでなく、色々な植物や花からも香水を作ってみよう!
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