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襲撃
5☆少し前の阿倍野屋敷
しおりを挟む「今日はいいの?宮中見回り休んで…」
橘は桜庭咲羅子が突然遊びにきてくれた嬉しさもあるけれど誇りにしている仕事をしなくていいのか?と心配で聞いた。
「滝口家の若が代わりをしてくれるから大丈夫。」
ニヤッと咲羅子は笑いをした。
余裕の休みで嬉しいようだ。
「今日はおばさま宮中でしょ?」
「母様はルカの神の化身だから対の神の依代になる威津那を見守る役目があるんだって……」
屋敷に一人もいないというので留守番する事になった。
母はルカの神の化身なのだから宮中に留まりお守りする事が本来の役目でもあるが、鬼門の方角にある阿倍野家に嫁いだので屋敷に留まりいつもは遠隔的に宮中を守っている。
今日はハルの神の化身の対であるルカの神の化身が威津那が依代になるために見守るために陰陽寮にいる。
「私もルカの神の化身になりたかったわー。そしたら神様同士も対になれたのにー」
暖炉の前のカーペットでごろごろと転がりながら言う。
「そしたら、今みたいにゆっくりできないわよ?」
咲羅子もごろごろして、顔が合うと微笑み合う。
両親も姉たちもいない親友二人だけの家もたまにはいいかもと、橘は自宅でのんびりできる幸せを噛み締める。
「でも、威津那が神誓いしてなければ、親のいぬまにあんなことやこんなことできたかもー?」
橘は妄想して、うふふと笑う。
「私じゃあんたを満足させられないかしら?」
そう言って、橘の背中にまたがって体をくすぐる遊びをする。
「咲羅子姐さんと一晩中いるのも楽しいから好きだよ!」
「うふふ、私もよ。季節と一緒にいたいけど好きだから緊張しちゃうし、たまには宮中じゃなくてこういう風に気楽に遊ぶのもいいわね。
もう、お子様って年頃じゃないけど、橘と一緒なら子供返りしても恥ずかしくないもの」
「私も~!いつも咲羅子姐さんの妹分でいたい」
寒い外とは対照的に夜で電気もついて暖炉で暖かいのは幸せなことだと互いに思う。
宮中でいつも一緒にいるけれど、仕事中なので気を引き締めているが、家は格別だと思う。
だけど、数時間前に家の明かりが陰ったままだった。
この屋敷全体の明るさは屋敷の持ち主の父の力によって左右される。
結界が緩んだ?と娘である橘は感じる。
宮中で何かあったのか?と不安に思うことを今は咲羅子と過ごしたくて橘は黙っていたけれど……
窓に赤い明かりが煌めいた。
何事かと思って窓から覗くと、隣の家の香茂家が轟々と燃えていた。
「な、なんてことなの!助けに行かなきゃ!」
橘と咲羅子は急いで香茂の家に向かった。
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