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襲撃
7☆行き着く間
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「そんな…っ!紺太が……っ」
橘は胸が締め付けられ涙が溢れて止まらない。
小生意気だけど気遣いは出来て、元気で宮中見回りにもよく付いてきてくれた紺太を咲羅子も思うと涙が止まらない。
「それに、陰陽寮長の父も負傷を負うなんて……宮中におわす陛下に危険が及んでしまうじゃない!」
咲羅子は気が気じゃない。
本来今すぐ警護の任につきたい所だが……
「そうよね…私も宮中で陛下をお守りしたいけど…私を狙ってるなら、宮中にはいない方がいいのよね……」
家の留守番をしていてよかったと思うが、そうでもない不安が押し寄せる。
香茂家が燃やされて、阿倍野に襲撃しない理由は何なのだろうか?
それにあの威津那に似た焔の事を思うとゾクリと震える。
「威津那……」
橘はいつも自分を守ってくれる愛しの威津那の名前を無意識につぶやく。
不安いっぱいな橘を高良は真剣な顔で見つめて手を握り、
「安心しろ、オレが威津那殿の代わりに守るよ。」
「そうよ。わたしも橘を守ってあげるわ!威津那が目覚めるまでね。」
「香茂の家をもやした恨みもはらさなきゃだしねぇ……」
牡丹は怒りに燃える。
致命傷どころじゃ済まさない雰囲気が話の重大さを聞いて付け足されている。
子供たちは母の怒りに怯える。
祖父母も母と同じ気持ちで香茂一族に喧嘩売ったことを後悔させてやるつもりだとテレパシーで伝わる。
「うん!わたしも守られてばかりはいられないから最大限警戒するわ!」
橘は早速腕すぐりのあやかしを召喚して屋敷の警護に当たらせ、寝ない決意をしたが……
☆☆☆
人の心を持たない人間にあやかしは力のない動物のようなものだった。
「やっと、辿り着いたけど、人間界じゃ一日も経ってないようだな」
夜明け前のくらい空をみて焔はそう判断した。
焔は阿倍野に召喚してした蛟の道標を見逃さず阿倍野屋敷にたどり着いた。
着いたそうそう眼鏡橋の鬼のあやかしに襲われるが一瞬で首を落とす。
黒御足家にもあやかしを瞬殺するような退魔刀を持っている。
それは小刀だが色々便利な代物だ。
帯刀も許されない世に隠し持つことができるのだから。
これで九尾の尻尾を切り落としたという伝説がある。
だが今はむしろ九尾を復活させる代物がほしかった。
なので常に阿倍野家の隣を座す香茂家を襲った部下たちが秘蔵の香木を手に入れ焔に渡す。
香茂家は九尾を引きつける力を呪物を持っているはずだということで、手当たりしだい盗み出し、その中でも呪力のある札つきの封印された香木を見つけ出したのだ。
威津那が香茂家の書物から唯一見つけた一文には
『香茂家は香の力で九尾を従わせた』
と書いてあった。
それは、威津那が文献で見た重要な唯一の一行だった。
それを、焔は瞳を通してみたのだ。
部下を向かわせ襲わせて奪ったが、香茂家は家宝よりも家族を選んだ。
「人間の本能ってそういうものだよなぁ。異界に迷った間に何度この女と交わって子をなしたことか……」
と、呟いた。
焔と一緒に異界に迷い込んだ女と交じり子をなし、命を繋がせるためにあやかしを食わせた。
体感的に三ヶ月彷徨い、あやかしを脅し従わせては生き延びたのも意外と楽しい経験だったと焔は思う。
一人だと流石につまらなかったかもしれないが、一族の嫉妬深い者に邪魔されず好みだった女と過ごせたのだから……
母方の一族の遠い血縁の娘で巫女の素質はかなりあった。
その神秘さが母の面影に似ていて気に入っていたが、今や腹に子をなすためだけの器で興味もない。
男の本能を満たさなくなった女は必要ないと切り捨ててしまうのは、常のことだった。
あやかしの世界で流石に疲弊しきった女を乱暴に部下に押し付ける。
「お前が世話をしろ。オレの子が宿ってる。わかるよな?」
「は、仰せのままに…」
部下の男は女を抱きかかえると組織の巣に戻っていった。
普段は興味など失せてしまうはずなのに異界であやかしを食わせ宿した自分の子はどれほどの力を得ただろうか?
すでに数人、子はいるが、特殊に宿した子供の能力に期待をしてしまう……
父が子に期待する気持ちを少しは理解できた気分になる。
「もっと、期待に答えなくてはな……」
フフッと笑って、あやかしたちが守る屋敷を獲物を捕らえた瞳で楽しげに見つめた。
橘は胸が締め付けられ涙が溢れて止まらない。
小生意気だけど気遣いは出来て、元気で宮中見回りにもよく付いてきてくれた紺太を咲羅子も思うと涙が止まらない。
「それに、陰陽寮長の父も負傷を負うなんて……宮中におわす陛下に危険が及んでしまうじゃない!」
咲羅子は気が気じゃない。
本来今すぐ警護の任につきたい所だが……
「そうよね…私も宮中で陛下をお守りしたいけど…私を狙ってるなら、宮中にはいない方がいいのよね……」
家の留守番をしていてよかったと思うが、そうでもない不安が押し寄せる。
香茂家が燃やされて、阿倍野に襲撃しない理由は何なのだろうか?
それにあの威津那に似た焔の事を思うとゾクリと震える。
「威津那……」
橘はいつも自分を守ってくれる愛しの威津那の名前を無意識につぶやく。
不安いっぱいな橘を高良は真剣な顔で見つめて手を握り、
「安心しろ、オレが威津那殿の代わりに守るよ。」
「そうよ。わたしも橘を守ってあげるわ!威津那が目覚めるまでね。」
「香茂の家をもやした恨みもはらさなきゃだしねぇ……」
牡丹は怒りに燃える。
致命傷どころじゃ済まさない雰囲気が話の重大さを聞いて付け足されている。
子供たちは母の怒りに怯える。
祖父母も母と同じ気持ちで香茂一族に喧嘩売ったことを後悔させてやるつもりだとテレパシーで伝わる。
「うん!わたしも守られてばかりはいられないから最大限警戒するわ!」
橘は早速腕すぐりのあやかしを召喚して屋敷の警護に当たらせ、寝ない決意をしたが……
☆☆☆
人の心を持たない人間にあやかしは力のない動物のようなものだった。
「やっと、辿り着いたけど、人間界じゃ一日も経ってないようだな」
夜明け前のくらい空をみて焔はそう判断した。
焔は阿倍野に召喚してした蛟の道標を見逃さず阿倍野屋敷にたどり着いた。
着いたそうそう眼鏡橋の鬼のあやかしに襲われるが一瞬で首を落とす。
黒御足家にもあやかしを瞬殺するような退魔刀を持っている。
それは小刀だが色々便利な代物だ。
帯刀も許されない世に隠し持つことができるのだから。
これで九尾の尻尾を切り落としたという伝説がある。
だが今はむしろ九尾を復活させる代物がほしかった。
なので常に阿倍野家の隣を座す香茂家を襲った部下たちが秘蔵の香木を手に入れ焔に渡す。
香茂家は九尾を引きつける力を呪物を持っているはずだということで、手当たりしだい盗み出し、その中でも呪力のある札つきの封印された香木を見つけ出したのだ。
威津那が香茂家の書物から唯一見つけた一文には
『香茂家は香の力で九尾を従わせた』
と書いてあった。
それは、威津那が文献で見た重要な唯一の一行だった。
それを、焔は瞳を通してみたのだ。
部下を向かわせ襲わせて奪ったが、香茂家は家宝よりも家族を選んだ。
「人間の本能ってそういうものだよなぁ。異界に迷った間に何度この女と交わって子をなしたことか……」
と、呟いた。
焔と一緒に異界に迷い込んだ女と交じり子をなし、命を繋がせるためにあやかしを食わせた。
体感的に三ヶ月彷徨い、あやかしを脅し従わせては生き延びたのも意外と楽しい経験だったと焔は思う。
一人だと流石につまらなかったかもしれないが、一族の嫉妬深い者に邪魔されず好みだった女と過ごせたのだから……
母方の一族の遠い血縁の娘で巫女の素質はかなりあった。
その神秘さが母の面影に似ていて気に入っていたが、今や腹に子をなすためだけの器で興味もない。
男の本能を満たさなくなった女は必要ないと切り捨ててしまうのは、常のことだった。
あやかしの世界で流石に疲弊しきった女を乱暴に部下に押し付ける。
「お前が世話をしろ。オレの子が宿ってる。わかるよな?」
「は、仰せのままに…」
部下の男は女を抱きかかえると組織の巣に戻っていった。
普段は興味など失せてしまうはずなのに異界であやかしを食わせ宿した自分の子はどれほどの力を得ただろうか?
すでに数人、子はいるが、特殊に宿した子供の能力に期待をしてしまう……
父が子に期待する気持ちを少しは理解できた気分になる。
「もっと、期待に答えなくてはな……」
フフッと笑って、あやかしたちが守る屋敷を獲物を捕らえた瞳で楽しげに見つめた。
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