だって私、悪役令嬢なんですもの(笑)

みなせ

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44.幸せって、どんなものだったかしら?

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『ところでマチルダ、時々君の思考に出てくる【ゲーム】と言うのはなんだ』

 あら、急に何の話かと思えば……そう言えば私、ずっと声を出していなかったわね。
 いつのまにこの状態に慣れちゃったのかしら。

『そんなことはどうでもいい。【ゲーム】とは一体何か教えてくれ』

 人の考えてることを勝手に読んでおいてなんて言いざまなのかしら。そんなことなんて。
 って、考えてること全部筒抜けじゃないっ!

『仕方がないだろう。マチルダは話すのが苦手なんだろう? で、あるならば思考を読むしかない』

 人のことを愛し子だとか言ってるくせに、なんて横暴!!
 勝手すぎるわっ!
 そう思い切り精霊王たちを睨みつけたけど、二人(?)ともどこ吹く風。
 闇の精霊王なんて、

『いいから、さっさと【ゲーム】のマチルダとは一体誰のことか教えてくれ』

 と要求までしてくるじゃないの。
 超いらつくけど、どうせ読まれるならさっさと読ませちゃったほうがいいわね。面倒だけど。

 ゲームはゲームよ。
 主人公の愛し子を操って、この世界に似た世界を悪から救う、遊びのこと。

 そう前置きして、意気揚々と頭の中に描くゲームの世界。
 もうずいぶん昔のことだから、ちょっと……かなり脚色が入っているかもしれないけれど、主たるストーリーと印象的な場面はまだ頭の中に残っていた。

 一つめの映像は、パッケージ。
 愛し子と説明書きされたルフィナを攻略対象者と精霊王たちが囲み、それをマチルダ悪役連合が端のほうから、羨ましげに忌々しげに睨んでいるものだ。

『ルフィナが愛し子? あり得ない』

 早速、森の精霊王が文句を言い始めたわ。

『なんだこれはっ。愛し子はマチルダだぞ。あの娘ではないっ! それに私は愛し子の願いが無ければ聖女などに力を貸したりしないぞ!!』

 ルフィナに加護を与える森の精霊王――――自身の姿に目を瞠り、

『なんだこれは。マチルダが悪だとっ! それに愛し子を戦わせるなど!! あり得ないっ!』

 マチルダと相対するルフィナと攻略対象者、そして精霊たちの姿に、地団駄を踏み、

『聖女が愛し子に頭を下げさせるだとっ!』

 って、庭をざわざわさせ始めちゃった。
 草は伸びるし、花は咲くし、木々は一回り幹が太くなるし、かろうじて庭って状態から、森になっちゃいそう。

『そんな世界滅ぼしてしまえっ!』

 森の精霊王の中では、ゲームの中でもルフィナが聖女で、マチルダは愛し子のようね。
 闇の精霊王は、そんな森の精霊王を面白そうに眺めていたけど、私がいるガゼボの周りがやけに立派な葉をつけた蔦が暴れ回り始めたら、流石にも慌てて森の精霊王を拘束した。

『闇のぉ、止めてくれるな』
『馬鹿な事を言うな。ありもしないことでこの地を壊すつもりか』
『だけどぉ~』

 疲れ切った闇の精霊王に、ぐでぐでな森の精霊王は泣きごとを言っている。
 でも、このままだとみんな森に飲まれちゃうものね。

『マチルダ、ゲームと言うものはとても面白いね。君が考えたものなのか?』

 いいえ、違うわ。
 ゲームは私が前にいた世界で、私の知らない人が考えたもの。

『前の世界……』

 闇の精霊王が首をかしげる。
 あら、つい前の世界って考えたけど、異世界転生なんて言って分かるのかしら?

『イセカイ、テンセイ……あぁ、そうか。そうなのか……』

 闇の精霊王は、まじまじと私を見つめて、大きく頷いた。

『マチルダ、近いうちに光の神殿に行ってくれないか?』
「嫌ですわ」
『あぁ、分かっている。だが、是非行って欲しい』


 え、何故ですの? 二度とあんな所には近付きたくありませんわ! 

『だが、マチルダ。君が望まなくとも、この国の人々は君に愛し子としての役割を求めるだろう』
「役割?」
『闇を払うのは聖女の仕事だ。だが聖女が力を手に入れるには愛し子の願いが不可欠。いずれ聖女によって愛し子が明らかにされるだろう』

 なんてこと……そんな話、聞いてないわよ。

『だろうね。だからその前に、君の願いを叶えなければならない』


――――願い?

 あぁ、そうでしたわね。本来、望まなければ、叶えれないのでしたわね。
 でも、光の神殿と、私の願い。
 何の関係があるのかしら?

『マチルダの願いと言うよりは……歴代の愛し子の願いだ』

 意味が掴めなくて眉をひそめれば、闇の精霊王は何とも言えない表情になった。そして、

『マチルダ、君の言う前の世界で、君は幸せだったかい?』

 ってそう尋ねられて、頭の中に前世のイメージが浮かび上がった。
 胸に溢れた温かい気持ちに、答えを口にしようとして――――時間切れ。
 グリフ様に見つかってしまったから。

 闇の精霊王も、森の精霊王も、暴れまくった木々も、邸に続く扉が開いた途端、何事も無かったように元の状態に戻って……
 私だけがガゼボに取り残された。

 君が愛し子だとか言ってたくせに、酷いと思わない?

 私は、闇の精霊王に言ってやりたかった。




 私は……。



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