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命を救われたら(4)
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幸せの余韻に浸っている猶予はなかった。急がなければならない。
ここでいきなりまたもふもふの狐と猫の姿に戻ってしまうわけにはいかなかった。
私は荷物をまとめるためにジョシュアと共に皇太子妃の部屋に戻った。ドレスと下着と乗馬服をいくつかまとめた。ジョシュアは着のみ着のままやってきてしまったので、貴賓室の来客用のガウンをジョシュアのために持ってきた。
ジョシュアは皆に指示を出すために部屋を出て行った。そしてすぐに戻ってきた。
「疲れたから休ませて欲しいと皆には伝えた。この部屋にはしばらく誰も来ないだろう。当座はハリー宰相に任せると伝えたので、大丈夫だろう。みな僕たちのロマンスが衝撃的すぎたようで、てっきり、これから僕らが久しぶりのロマンスの続きをするのだと思い込んでいる」
私はその言葉に赤面した。ジョシュアの真意は分からないが、今のところ私の方がジョシュアに惹かれていると私は思っている。
――もう抱かれたけれど、あれは命を助けてもらった見返りだから、勘違いしちゃダメよ。
私たちはいつからこんなに面倒な関係になったのだろう。素直に愛を伝えることができない。
「わかったわ。私は乗馬服に着替えるわ。このドレスだと動きにくいから。ちょっと背を向けておいてくださる?」
そうジョシュアに断ると、私はドレスから乗馬服に着替えた。ジョシュアはドレスを脱ぐのを手伝ってくれた。私は素早く乗馬服に着替えた。
「さあ、行きましょうか」
ジョシュアはうなずき、私の肩を抱き寄せた。私はびくりと飛び上がった。
「なあに?」
ジョシュアはイタズラっぽく私を見つめて微笑んだ。少しジョシュアの頬も赤く染まっている。私もドギマギしてしまい、視線が思わず泳いでしまった。これほど至近距離ではジョシュアの顔をまともに見れない。先ほど抱かれたことで一気に距離感がおかしくなってしまっている。周りに誰もいないことで、私の心臓はおかしなぐらいに鼓動が早くなった。まるで恋をしているみたいだ。いや、また恋はしている。
「あぁっ!戻らなければ!」
私は変に気合いの入った声をわざと出した。
「結界よ、金塊の契約を果たしに行きます」
***
よく分からないものの、多分あっているだろうという言葉を言ってみた。
「ああ、戻ってきたんですね!」
知らない声が弾むようにして、ランプが私とジョシュアの目の前にかざされた。
――これがお迎えかしら?
私の目の前にはたぬきがランプを持って立っていた。
「あなた誰?」
「私が迎えの者です。第三皇女ミラと申します。今はたぬきですが。ふふっ……なかなか可愛いでしょう?」
第三皇女ミラと名乗ったふくふくに膨れたたぬきは丸顔に心なしか微笑みを浮かべて挨拶をしてくれた。
「私はグレートバーデン国の第三皇女です。第八騎士団と一緒に姉である第一皇女に命を狙われましたところを円深帝に救われました。ここ1年ほど前からこちらにお邪魔して、金塊の契約を果たそうとしております。そちらはグレースとジョシュアですよね?お二人は私たちのチームの新メンバーです」
「あ……そうですか」
「なるほど」
ジョシュアと私はよく分からないが、自分たち以外にも仲間がいることに少し安堵して挨拶をした。
「さあさ、皆が待っているのでこちらへいらしてください」
私たちはたぬきの案内を頼りに、ランプの灯りに照らされる山道を歩いて進んで行った。
第三皇女ミラはたぬきの姿で軽快に山道を降りて行った。麓に着くと、若く美しい女性の姿になった。ドキリとするほどの美女だった。
他のメンバーが第三皇と第八騎士団の仲間だということは分かった。同じく、権力争いに巻き込まれて死を回避するために金塊の契約を果たそうとしていると理解できた。
――第三皇女ミラは姉に命を狙われたと言ったかしら?
骨肉の争いのようだ。どこもかしこも王権の争いは激しいようだ。私は身震いした。
ただ、仲間がいるという事実に非常に勇気づけられた。
――早くきつねの姿から解放されるように頑張るわっ!
ここでいきなりまたもふもふの狐と猫の姿に戻ってしまうわけにはいかなかった。
私は荷物をまとめるためにジョシュアと共に皇太子妃の部屋に戻った。ドレスと下着と乗馬服をいくつかまとめた。ジョシュアは着のみ着のままやってきてしまったので、貴賓室の来客用のガウンをジョシュアのために持ってきた。
ジョシュアは皆に指示を出すために部屋を出て行った。そしてすぐに戻ってきた。
「疲れたから休ませて欲しいと皆には伝えた。この部屋にはしばらく誰も来ないだろう。当座はハリー宰相に任せると伝えたので、大丈夫だろう。みな僕たちのロマンスが衝撃的すぎたようで、てっきり、これから僕らが久しぶりのロマンスの続きをするのだと思い込んでいる」
私はその言葉に赤面した。ジョシュアの真意は分からないが、今のところ私の方がジョシュアに惹かれていると私は思っている。
――もう抱かれたけれど、あれは命を助けてもらった見返りだから、勘違いしちゃダメよ。
私たちはいつからこんなに面倒な関係になったのだろう。素直に愛を伝えることができない。
「わかったわ。私は乗馬服に着替えるわ。このドレスだと動きにくいから。ちょっと背を向けておいてくださる?」
そうジョシュアに断ると、私はドレスから乗馬服に着替えた。ジョシュアはドレスを脱ぐのを手伝ってくれた。私は素早く乗馬服に着替えた。
「さあ、行きましょうか」
ジョシュアはうなずき、私の肩を抱き寄せた。私はびくりと飛び上がった。
「なあに?」
ジョシュアはイタズラっぽく私を見つめて微笑んだ。少しジョシュアの頬も赤く染まっている。私もドギマギしてしまい、視線が思わず泳いでしまった。これほど至近距離ではジョシュアの顔をまともに見れない。先ほど抱かれたことで一気に距離感がおかしくなってしまっている。周りに誰もいないことで、私の心臓はおかしなぐらいに鼓動が早くなった。まるで恋をしているみたいだ。いや、また恋はしている。
「あぁっ!戻らなければ!」
私は変に気合いの入った声をわざと出した。
「結界よ、金塊の契約を果たしに行きます」
***
よく分からないものの、多分あっているだろうという言葉を言ってみた。
「ああ、戻ってきたんですね!」
知らない声が弾むようにして、ランプが私とジョシュアの目の前にかざされた。
――これがお迎えかしら?
私の目の前にはたぬきがランプを持って立っていた。
「あなた誰?」
「私が迎えの者です。第三皇女ミラと申します。今はたぬきですが。ふふっ……なかなか可愛いでしょう?」
第三皇女ミラと名乗ったふくふくに膨れたたぬきは丸顔に心なしか微笑みを浮かべて挨拶をしてくれた。
「私はグレートバーデン国の第三皇女です。第八騎士団と一緒に姉である第一皇女に命を狙われましたところを円深帝に救われました。ここ1年ほど前からこちらにお邪魔して、金塊の契約を果たそうとしております。そちらはグレースとジョシュアですよね?お二人は私たちのチームの新メンバーです」
「あ……そうですか」
「なるほど」
ジョシュアと私はよく分からないが、自分たち以外にも仲間がいることに少し安堵して挨拶をした。
「さあさ、皆が待っているのでこちらへいらしてください」
私たちはたぬきの案内を頼りに、ランプの灯りに照らされる山道を歩いて進んで行った。
第三皇女ミラはたぬきの姿で軽快に山道を降りて行った。麓に着くと、若く美しい女性の姿になった。ドキリとするほどの美女だった。
他のメンバーが第三皇と第八騎士団の仲間だということは分かった。同じく、権力争いに巻き込まれて死を回避するために金塊の契約を果たそうとしていると理解できた。
――第三皇女ミラは姉に命を狙われたと言ったかしら?
骨肉の争いのようだ。どこもかしこも王権の争いは激しいようだ。私は身震いした。
ただ、仲間がいるという事実に非常に勇気づけられた。
――早くきつねの姿から解放されるように頑張るわっ!
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