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第2章 となりの女神と狐様

20.二つ目の料理

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 実は今回、俺達はお互いの料理の味見をしていなかった。というのも、どちらが豊月に認められる料理を作れるか、競い合っていたのだ。

(元々の狙いとしては、万が一料理が否定された場合の保険のつもりで複数案を用意しておいたのだが……)

 そんな事を考えていると、うどんを食べている豊月の白い頬はみるみる赤みがさして、耳の先がぴくぴくと動いた。



『お味はどうかな?』

 西原が声を掛けると、豊月は箸を置いて悔しそうな顔でこちらを見上げた。

『ふん、なかなかやるじゃない……』

『それは合格って事でいいのか?』

 俺も横から確認する。豊月は目を合わさずに、コクリと頷いた。

『よっしゃ! きつねうどん採用!』

 西原は嬉しそうにガッツポーズする。

『ここにやってくる獄卒達には、忙しそうな奴も居るからな。直ぐ出てきて、さっと食べられるメニューがあってもいいかと思ったんだ』

『それは有難いな』

 蓮雫も微笑んだ。さすが、西原は長年ホテルで働いてきただけあって、食べる側のニーズや運用をしっかり理解している。

(既に勝った先の事まで考えているとはな……)

 俺は既に気が抜けてしまったが、手元の料理が焼き上がったので、皿に乗せてテーブルへと向かった。

『西原のうどん程、調理の効率は良くないが……』

 俺は皿を豊月の前に置く。

『これは……焼いた油揚げ? あら、中に何か入っているのね?』

『生姜醤油をつけて食べてみてくれ』

 彼女は表面が香ばしく焼かれた油揚げの包みを、箸で挟んで口へと運ぶ。

 サク……

『!?』

 サクッとした揚げの食感に続くのは、ジュワッとした肉の旨味とふんわり感。そして、隠されている宝物は、

『……これは、たまごね!』

 油揚げの中には、鶏ひき肉とゆで卵を詰めてあった。

『油揚げの面白いところは、中に何かを包めるところだからな。表面と中身で食感に差をつけて、肉の旨味をぎゅっと閉じ込めてみたんだ』

 豊月は瞳と唇を輝かせながら、ペロリとひとつ平らげた。そして、隣の包みに箸をつけながら言った。

『もう一つあるわよ?』

『そっちはおまけだ。俺は大好きなんだが、アンタの口に合うかな……』

 豊月が不思議そうな顔で、もう一つの揚げに齧り付くと、
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