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第1章

幼馴染が有名になりました

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リオンと私はステージに立った。観客席の方から歓声が聞こえる。
「待たせた」
「おう、遅かったな」
 軽く言葉を交わしただけなのにすでにピリピリとした空気を漂わせている。ステージでは、次の相手として承認されて、カウントダウンが始まった。
 5、4、3、2、1、はじめ
はじめと同時に私が攻撃をする。
「先手必勝!」
私が叫びながら、基礎魔法の詠唱をする。
「私の手に宿したまえウィンドブレード!」
風の刃を3発お見舞いする。すると通信の方からリオンの怒鳴り声が響いてきた。
「(ルリ! 前に出過ぎ! 俺が戦うから!)」
「(このくらい許してよー!)」
 私がむくれていると、相手の攻撃が来る。この人は、性格が悪いのか相手が打ってきた魔法と同じ魔法を使ってくる。
「我が手に宿したまえ、ウィンドブレード!」
「魔法障壁!」
 ウィンドブレードは私が打ったのと同じく3発だ。リオンが私に風魔法が当たる前に魔法障壁を詠唱省略で私の前に発動させる。
ウィンドブレードが私の目の前で魔法障壁にぶつかって消滅する。
「(ありがと、リオン!)」
「(……次はないからな)」
 リオンの声がやれやれと言った口調だ。
「(大丈夫、今度は後ろ下がってる)」
 私がポジションを交代すると、向こうから声がかかった。
「そこの金髪は詠唱省略が使えるのか、それにお前らは戦い慣れてる感じがするな」
これは面白いと言って鋭い目つきをする。
「じゃあ、手加減なしで行くぞ」
そういうと少年は、深呼吸をひとつして集中している。
「(リオンこの感じ……)」
「(ああ、応用魔法だな……)」
魔法には、基礎魔法、応用魔法、発展魔法の3つに分かれる。魔力量によって威力は違うが基礎魔法は広く一般的に使えるものだ。そして、応用魔法は、魔法兵の者が使ったりするような魔法であり、生徒はあまり使う事はない。そして、発展魔法は5大魔法使いの者などが使うような、魔法の終着点とも言える。ただ、発展魔法は規模が大きいものから、応用魔法よりのものまで数が多く、発展魔法が使えるものは、オリジナルの魔法を作ることが可能になるとも言われていて、奥が深い魔法なのだ。
そしてここにいる私とリオンは応用魔法が使える。
「(リオンサポートは任せて!)」
「(ルリ、お願い。俺も応用魔法を使う)」
「(最近練習してたあの水魔法とかいいんじゃない?!)」
「(おい、あれをここでやらせるのか…………? )」
「(大丈夫、リオンならできるよ!)」
渋っていたリオンだが、私の言った水魔法をやるみたいだ。頑張って、リオンー。私が心の中で応援しながら見守る。
「水よ私の声を聞きたまえそして、私の理想とする姿になりたまえ」
リオンが詠唱をすると水がゆっくりと集まり始め、私の背丈の1.5倍ほどの高さの水のトルネードができた。
これには、相手も目を丸くしている。ちなみに、相手は、炎の槍を5本の追尾型魔法であり、これももちろん応用魔法だ。ただ、インパクトが強いのは、リオンの方だろう。
リオンの魔法と少年の魔法の一騎打ちだ。
これには、観客席にどよめきが走る。これまでとは規模の違う魔法の戦いにみんな興奮しているようだ。先に攻撃を仕掛けたのは、相手の方だ。
炎の槍が水魔法に飛んでいく。しかし、水魔法に当たると次々と消滅していく。水魔法は、炎の槍が当たっても威力が下がることはなく、前にゆっくりと進んでいく。
「くっ」
少年は苦い顔をして炎の槍が消えていくのを見つめる。少年はもう成す術がないのか、立ち尽くしている。応用魔法を使ったことと私たちが戦う前から少年は戦っていたために魔力が尽きてしまったのだろう。そのまま水魔法は、相手を飲み込んでいった。そして、リオンの水魔法が消えたときには、相手はぐったりとしており、戦闘不能な状態だった。観客席からは、「うおー」と歓声が飛んでくる。
「(なんか悪いことしたな…………)」
 リオンがすまなそうな顔をしている。それにすごくショックを受けている。
「俺、ルリに影響を受けすぎじゃないか…………。俺まで、これから規格外扱いか…………?」
 などとボソボソと呟いている。
そして、わたしたちの前には、勝者という文字が表示された。
 観客席からは拍手をもらいすごかったぞと言った言葉を投げかけられる。相手は、ゆっくりと動き出しこっちに向かって歩いてくる。
「お前ら、強いな。特に金髪お前すげーじゃん!」
 そしてニカっと笑った。
 リオンは「あはは…………」と苦笑している。
「俺の名前は、ライオット・アンネルだ」
「僕の名前は、リオン・マイラー」
お互いに自己紹介をしてから、握手を交わす。
これを機に私たち(主にリオン)は有名になった。観客から歓声と拍手にリオンは困惑顔ながらも手を振って応じている。
 ただ、ひとつ解せないものがあった。リオンが手を振って応じているなかキャーという黄色い歓声が聞こえるのだ。リオンの外見は金髪に美形を持ち合わせている。リオンは気づいていないようだが、ときどきリオンと町で一緒に歩いていると、度々かわいい女の子に声をかけられるのだ。その意味をリオンは気づいていない。ここに留まっていたら、リオンの新規のファンがどんどん増えていってしまう………!
チラチラとリオンを見ているとリオンもチラッとこっちを見てくる。そして、目が合うとスッと目線を逸らされるのだ。
…………なんか変だ。
私がジトーッとした視線を送る。またこっちをチラッと見た時に私のジト目にビクッとしていた。
「な、何?」
「なんか、様子が……変」
「……そんなことは、ない」
なんか、カタコトだ、目線逸らしてるし。うーんと訝しんでいると、ライオットから声をかけられた。
「なあ、お前もいい戦いだった。名前はなんというんだ? 俺の名前は……」
「あ、それはいいわ。ちゃんと聞いてたからライオット」
 私は、もう一度名乗ろうとしたライオットを止める。
「私の名前は、ルリカ・マーリスよ」
私の名前にライオットはやっぱりという顔をしていた。
「あのルクシア様の娘か。お前も、詠唱省略とか、応用魔法使えるのか?」
これは慎重に答えなければいけない。チラッとリオンを見る。リオンが頷いた。
「……そうね。私も詠唱省略できるわ。応用魔法は…………使えないこともないわ。でも使えても、リオンより劣るけど」
「そうか! 使えるのか! これからよろしくな! 同じ五大魔法使いの家族ってことで!」
ガハハっと笑っているライオットに私はえっ?と返す。
「ライオットは、現5大魔法使いのアンネル家のものだぞ」
リオンがなんでもないかのように言った。
「えーー! リオンそれ早く言ってよー」
「(そしたら、私だって、応用魔法使って戦ってもよかったんじゃ……?)」
私は、未だに繋がっている通信の方でリオンに話しかける。
「(ルリは、戦いになると色々忘れるだろ? 応用魔法は大体一個使えて優秀な方なんだから。ルリみたいに何個も使ったら不審がられるぞ)」
「あれ、知らなかったのか?」
ライオットが意外そうに言った。
「ルリはちょっと世間に疎くてな、許してやってくれ」
リオンがフォローを入れるが、私は納得がいかない。
反論はしないけど……。
「おう、俺も詳しくはないしな。おっと、そうだ戦った後の握手し忘れるところだった」
ライオットが私に手を出して握手を求める。そういえば………と思い、私も手を差し出し握手をする。しかし、すぐに離れるはずの手がいっこうに離れない。
………………あれ、長くない?
私が困っているとリオンが無理やり引き剥がす。
「え、ああ。すまない」
と言いつつ少しぼんやりとしている。
どうかしたのだろうか?
横にいるリオンを見ると、なんだかリオンがピリピリしている。そして、リオンがまだいる観客の一ヶ所をなぜか睨みつけていた。
「どうしたの?」
 私が顔を覗き込んで聞くとリオンはなんでもないと言って首を横に振った。
そろそろ帰ろうかという話になり私たちはライオットに別れを告げて帰路についた。





 








 
 


 
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