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13.いきなり甘々です!
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私を押し倒したジル様は、私の頬を優しく撫でながら蕩けるような笑顔で言った。
「フィー。愛してる。君だけを愛してるんだフィーリアス」
突然のジル様の告白に私は固まった。
えっ?? どう言うことですか??
ジル様はリリー様を愛していたのでは? 私ってなんで?
予想もしない返事で、頭は真っ白になる。でも、優しく頬を撫でながら怖いぐらいに整った美形に産まれて初めて甘い言葉で愛を囁かれ、免疫がない私の顔は真っ赤になる。
「……あ、愛してるなんて……な、何で……」
「初めて会った時から、ずっとフィーの事を愛していた。ずっとずっと君だけを見てきたんだ」
「え? 初めてって? ……天使?」
「ははっ! そうそう、僕が君の天使だった時から僕はずっと君を愛してる。君は僕の妖精だったんだけどね。……ふふっ」
無邪気に楽しそうに笑うジル様を見て、心がきゅんきゅんしてしまう。めちゃくちゃ可愛い……
いつもの怖いぐらいに整った顔立ちが少しあどけなく見えて、出会った頃の天使の面影がそこに見られた。
おまけに、押し倒されてそのお顔を間近で見続けるのは本当に心臓に悪い。
……だって、惹かれてる人だし……てか、多分……好きだし……
そう自覚すると、どんな顔をすればいいのか、どうしていいか分からなくなってきた。
居た堪れなくなって、両手で顔を覆う。
「……フィー。フィー。顔を見せて? なんで隠すの?」
「……うぅ~~……だって……恥ずかしい……」
「あぁ。本当フィーってば可愛いよね」
蕩けるような笑顔を見せながら隠してた両手を外される。
……恥ずかしい……自分でも、顔は真っ赤で目には涙が滲んだ酷い顔をしている自覚があるから、余計に居た堪れなくなって、視線を逸らす。
「……フィー。なんで恥ずかしがるの。ほらこっち向いて。恥ずかしがるフィーも可愛いね」
「……んんっ」
甘い言葉を囁きながら私に口付けをする。
もうダメーーー! 限界ーーー!! 甘すぎて恥ずかしいぃーーー! こんなセリフどこぞの王子様ですか!って本物の王子様でしたーーー!!
「ーーーな、な、なんで、私なんか好きなの? ……こんな悪役令嬢なのに」
「悪役令嬢? なんのこと? ……フィーって本当僕にはない発想するよね……」
少しだけジル様が遠い目をした。え? 私の発想ってそんなに変わってるのかな? 前世の記憶のせいかな?
……それだけじゃない気がちょっとだけする。
「私、嫉妬の挙句意地悪するし、いつも分かったような口を聞く可愛げのない女だし、おまけにこの容姿だって冷たそうで全然可愛くないし……そもそも、内面もこんなウジウジくよくよだし」
「えっ!? ……えっと。フィーの自己評価が低すぎて……ちょっと待って……そもそも嫉妬するのなら、僕もずっとそうだよ。僕はずっとフィーを奪いたかった。それに、フィーはわかったような口を聞くんじゃなくって、自分で考えた意見を述べてるだけだよね? おまけにフィーの容姿はもの凄く綺麗だよ? 僕には輝いて見えることを差し引いても、本当にこの国の中でもすごく整った顔立ちをしているよ? 内面だって、いつも一所懸命で凄く可愛いよ?」
……急にそんなこと言われても、なんだか信じられない。
こちとら11年間ずっとだれにも認められずやってきた。自分だって自分を信じられないぐらいだ。
容姿の件だって、綺麗だのなんだの言うのは所詮社交辞令でしかなくて、トリスティン様とかが陰で愛嬌がないだの冷たそうだの言っていたのは知っている。
あぁ。なんだかんだで、トリスティン様にずっと認めてもらえなかった挙句にフラれたことを、引きずっているのかもしれない。本当、嫌だ嫌だ。
結局、前世の記憶があっても自分の根幹は変わんないんだなぁって思った。
「それにね、僕は知っているよ。フィーがすごく頑張ってたことも、すごく傷付いていたことも、すごく辛かったことも知ってるよ。……フィーは本当によく頑張ったよ。僕はフィーの頑張りを全部知ってるよ。そのままのフィーでいいんだよ」
そう言うと、ジル様は私の頭をよしよししてくれた。
……うん。私、ずっと頑張ってた。婚約者になるって決まってから、大好きだったお兄様やお姉様達と遊ぶことを辞めて、ずっと努力し続けていた。
家族の時間が減っても、それはしょうがない事で我慢しなきゃって。家族なんて求めるのは子どものする事だと思ってた。
トリスティン様に子どもだって言われるたびに、追い付かないとって、もっと頑張った。
早く成長して、早く大人になって、私が子どもだからダメなんだって、もっともっと勉強しなきゃって。
でも、頑張っても頑張っても、ずっと満たされないまま。トリスティン様にとって、私はずっと子どものまま。
頑張ったね、もう十分だよ、これでいいんだよって誰も言ってくれない。
でもそれは、まだまだ自分の努力が足りないせいだ、もっと頑張らないとって思って……
でも。
でも、本当は辛かった。逃げたかった。傷付いていないフリをしないと逃げ出してしまうから、見ない様にした……
そして、ずっと淑女の笑顔を貼り付けて生きてきた。
リリー様がきて。私は絶望した。
私の11年間の努力は何だったのかって。
何のために私は全てを投げ打って頑張り続けていたのかって……
でも。ジル様はそんな私の事を見ていてくれてた。
私が頑張っていたのも、辛かったのも、傷付いているのも、全部知ってるって。
こんな本当はダメダメな私でもいいんだって言ってくれた……
ずっと私が欲しかった言葉。
頑張ったよって言ってくれる、私を認めてくれる言葉。
ーーー私にとってそれは、どんな愛の言葉よりも嬉しかった。
「……っぅううぅ~~~っ!!!」
ジル様の胸に縋り付いて、私は泣いた。
泣いている間、ずっと彼は抱きしめながら頭を撫でてくれていた。
泣いてスッキリしてしまったら、何だか恥かしくなってしまった。
「……ずいまぜん……」
過去の事をいつまでもぐちぐちと愚痴ってしまったあげくに、認めてもらった嬉しさから大泣きをするなんて……
何とまぁ、お恥ずかしい醜態を晒してしまったのだろう……! 今更ながらに羞恥心で顔が赤くなる。
「ふふ。いいよ。ずっとこうするのが僕の夢だったから。頑張ってきたフィーをドロドロに甘やかしてあげるんだ」
ドロドロにってっ!! そんなキラキラしたお顔で言われたら、胸がきゅんきゅんしてしまった。
……っは! 私ってやっぱ単純なのかなぁ……自分にイマイチ自信が持てない私は何だか疑ってしまう。
「……フィー。素直で真っ直ぐで純粋で真面目なのは、フィーの美徳だよ。兄上はそれを分かってなくて君の上っ面と自分の事しか見えてなかっただけだ。それに、僕は絶対に君を離さない。ーーー僕はフィーのためなら死ねるよ」
ひぃぃっ! 何で考えていることがわかったの!? おまけに死ぬって!! ジル様もしやとは薄々思っていたけど重いですっ! 愛が重めですっ!!
「し、死ぬなんて……だ、だめっ!」
「……あぁ。可愛い。フィー可愛いなぁ。そんな目でそんな事言ったら……」
蕩けた目で頬を撫でながら私を見つめるジル様は、色気が凄すぎてクラクラきた。
それに、ずっと抱きつかれていた状態でふと思い出した。
……そういえば、ここにくる前に目隠しをされていたけど、その間ずっと致していたのって……
そう思った途端、ボンって音が聞こえるくらい、自分の顔が真っ赤になるのがわかる。
密着した身体を途端に意識してしまい、思わずモゾモゾと動いてしまう。
何とか距離を取らないと……
「……あ、ジル様……あ、の……」
「ふふ。フィーは本当に可愛いね。大好き」
そう言って、ジル様は私の耳をペロっと舐めた。
「ひぃゃっ!」
びっくりして変な声が出た。
「あ、あ、あ、あの……っ!」
「もう僕たち何回もしてるでしょ。今更どうしたの?」
ひぃーーー! だって、最初は牢屋で結構暗かったし、あとは目隠しだから私はほとんど顔を見ていないのよぉ! それが、こんな綺麗な顔にいきなり迫られたらっ! おまけに愛を囁きまくられながらっ!
これまでの人生には全くカケラも無かった砂糖の様な甘々に、心も身体も付いていかない……
余裕なんて全くない。
「愛してる、フィー。…フィーリアス……君は僕の全てだよ……」
そう言って、ジル様は優しく口付けをしてきた。
私の努力を知っててくれて。
愚図愚図でダメダメで、こんなに大泣きした情けない姿を見せても愛を囁いてくれて。
ーーーあぁ、私この人を愛していいんだ……
素直にそう思う事ができた。
「フィー。愛してる。君だけを愛してるんだフィーリアス」
突然のジル様の告白に私は固まった。
えっ?? どう言うことですか??
ジル様はリリー様を愛していたのでは? 私ってなんで?
予想もしない返事で、頭は真っ白になる。でも、優しく頬を撫でながら怖いぐらいに整った美形に産まれて初めて甘い言葉で愛を囁かれ、免疫がない私の顔は真っ赤になる。
「……あ、愛してるなんて……な、何で……」
「初めて会った時から、ずっとフィーの事を愛していた。ずっとずっと君だけを見てきたんだ」
「え? 初めてって? ……天使?」
「ははっ! そうそう、僕が君の天使だった時から僕はずっと君を愛してる。君は僕の妖精だったんだけどね。……ふふっ」
無邪気に楽しそうに笑うジル様を見て、心がきゅんきゅんしてしまう。めちゃくちゃ可愛い……
いつもの怖いぐらいに整った顔立ちが少しあどけなく見えて、出会った頃の天使の面影がそこに見られた。
おまけに、押し倒されてそのお顔を間近で見続けるのは本当に心臓に悪い。
……だって、惹かれてる人だし……てか、多分……好きだし……
そう自覚すると、どんな顔をすればいいのか、どうしていいか分からなくなってきた。
居た堪れなくなって、両手で顔を覆う。
「……フィー。フィー。顔を見せて? なんで隠すの?」
「……うぅ~~……だって……恥ずかしい……」
「あぁ。本当フィーってば可愛いよね」
蕩けるような笑顔を見せながら隠してた両手を外される。
……恥ずかしい……自分でも、顔は真っ赤で目には涙が滲んだ酷い顔をしている自覚があるから、余計に居た堪れなくなって、視線を逸らす。
「……フィー。なんで恥ずかしがるの。ほらこっち向いて。恥ずかしがるフィーも可愛いね」
「……んんっ」
甘い言葉を囁きながら私に口付けをする。
もうダメーーー! 限界ーーー!! 甘すぎて恥ずかしいぃーーー! こんなセリフどこぞの王子様ですか!って本物の王子様でしたーーー!!
「ーーーな、な、なんで、私なんか好きなの? ……こんな悪役令嬢なのに」
「悪役令嬢? なんのこと? ……フィーって本当僕にはない発想するよね……」
少しだけジル様が遠い目をした。え? 私の発想ってそんなに変わってるのかな? 前世の記憶のせいかな?
……それだけじゃない気がちょっとだけする。
「私、嫉妬の挙句意地悪するし、いつも分かったような口を聞く可愛げのない女だし、おまけにこの容姿だって冷たそうで全然可愛くないし……そもそも、内面もこんなウジウジくよくよだし」
「えっ!? ……えっと。フィーの自己評価が低すぎて……ちょっと待って……そもそも嫉妬するのなら、僕もずっとそうだよ。僕はずっとフィーを奪いたかった。それに、フィーはわかったような口を聞くんじゃなくって、自分で考えた意見を述べてるだけだよね? おまけにフィーの容姿はもの凄く綺麗だよ? 僕には輝いて見えることを差し引いても、本当にこの国の中でもすごく整った顔立ちをしているよ? 内面だって、いつも一所懸命で凄く可愛いよ?」
……急にそんなこと言われても、なんだか信じられない。
こちとら11年間ずっとだれにも認められずやってきた。自分だって自分を信じられないぐらいだ。
容姿の件だって、綺麗だのなんだの言うのは所詮社交辞令でしかなくて、トリスティン様とかが陰で愛嬌がないだの冷たそうだの言っていたのは知っている。
あぁ。なんだかんだで、トリスティン様にずっと認めてもらえなかった挙句にフラれたことを、引きずっているのかもしれない。本当、嫌だ嫌だ。
結局、前世の記憶があっても自分の根幹は変わんないんだなぁって思った。
「それにね、僕は知っているよ。フィーがすごく頑張ってたことも、すごく傷付いていたことも、すごく辛かったことも知ってるよ。……フィーは本当によく頑張ったよ。僕はフィーの頑張りを全部知ってるよ。そのままのフィーでいいんだよ」
そう言うと、ジル様は私の頭をよしよししてくれた。
……うん。私、ずっと頑張ってた。婚約者になるって決まってから、大好きだったお兄様やお姉様達と遊ぶことを辞めて、ずっと努力し続けていた。
家族の時間が減っても、それはしょうがない事で我慢しなきゃって。家族なんて求めるのは子どものする事だと思ってた。
トリスティン様に子どもだって言われるたびに、追い付かないとって、もっと頑張った。
早く成長して、早く大人になって、私が子どもだからダメなんだって、もっともっと勉強しなきゃって。
でも、頑張っても頑張っても、ずっと満たされないまま。トリスティン様にとって、私はずっと子どものまま。
頑張ったね、もう十分だよ、これでいいんだよって誰も言ってくれない。
でもそれは、まだまだ自分の努力が足りないせいだ、もっと頑張らないとって思って……
でも。
でも、本当は辛かった。逃げたかった。傷付いていないフリをしないと逃げ出してしまうから、見ない様にした……
そして、ずっと淑女の笑顔を貼り付けて生きてきた。
リリー様がきて。私は絶望した。
私の11年間の努力は何だったのかって。
何のために私は全てを投げ打って頑張り続けていたのかって……
でも。ジル様はそんな私の事を見ていてくれてた。
私が頑張っていたのも、辛かったのも、傷付いているのも、全部知ってるって。
こんな本当はダメダメな私でもいいんだって言ってくれた……
ずっと私が欲しかった言葉。
頑張ったよって言ってくれる、私を認めてくれる言葉。
ーーー私にとってそれは、どんな愛の言葉よりも嬉しかった。
「……っぅううぅ~~~っ!!!」
ジル様の胸に縋り付いて、私は泣いた。
泣いている間、ずっと彼は抱きしめながら頭を撫でてくれていた。
泣いてスッキリしてしまったら、何だか恥かしくなってしまった。
「……ずいまぜん……」
過去の事をいつまでもぐちぐちと愚痴ってしまったあげくに、認めてもらった嬉しさから大泣きをするなんて……
何とまぁ、お恥ずかしい醜態を晒してしまったのだろう……! 今更ながらに羞恥心で顔が赤くなる。
「ふふ。いいよ。ずっとこうするのが僕の夢だったから。頑張ってきたフィーをドロドロに甘やかしてあげるんだ」
ドロドロにってっ!! そんなキラキラしたお顔で言われたら、胸がきゅんきゅんしてしまった。
……っは! 私ってやっぱ単純なのかなぁ……自分にイマイチ自信が持てない私は何だか疑ってしまう。
「……フィー。素直で真っ直ぐで純粋で真面目なのは、フィーの美徳だよ。兄上はそれを分かってなくて君の上っ面と自分の事しか見えてなかっただけだ。それに、僕は絶対に君を離さない。ーーー僕はフィーのためなら死ねるよ」
ひぃぃっ! 何で考えていることがわかったの!? おまけに死ぬって!! ジル様もしやとは薄々思っていたけど重いですっ! 愛が重めですっ!!
「し、死ぬなんて……だ、だめっ!」
「……あぁ。可愛い。フィー可愛いなぁ。そんな目でそんな事言ったら……」
蕩けた目で頬を撫でながら私を見つめるジル様は、色気が凄すぎてクラクラきた。
それに、ずっと抱きつかれていた状態でふと思い出した。
……そういえば、ここにくる前に目隠しをされていたけど、その間ずっと致していたのって……
そう思った途端、ボンって音が聞こえるくらい、自分の顔が真っ赤になるのがわかる。
密着した身体を途端に意識してしまい、思わずモゾモゾと動いてしまう。
何とか距離を取らないと……
「……あ、ジル様……あ、の……」
「ふふ。フィーは本当に可愛いね。大好き」
そう言って、ジル様は私の耳をペロっと舐めた。
「ひぃゃっ!」
びっくりして変な声が出た。
「あ、あ、あ、あの……っ!」
「もう僕たち何回もしてるでしょ。今更どうしたの?」
ひぃーーー! だって、最初は牢屋で結構暗かったし、あとは目隠しだから私はほとんど顔を見ていないのよぉ! それが、こんな綺麗な顔にいきなり迫られたらっ! おまけに愛を囁きまくられながらっ!
これまでの人生には全くカケラも無かった砂糖の様な甘々に、心も身体も付いていかない……
余裕なんて全くない。
「愛してる、フィー。…フィーリアス……君は僕の全てだよ……」
そう言って、ジル様は優しく口付けをしてきた。
私の努力を知っててくれて。
愚図愚図でダメダメで、こんなに大泣きした情けない姿を見せても愛を囁いてくれて。
ーーーあぁ、私この人を愛していいんだ……
素直にそう思う事ができた。
応援ありがとうございます!
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