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13.二人きりの夜に
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いつか一緒に眠ったのは、王子がハクの魔法で小さい子供の姿に変えられていた頃のことだ。腕に抱いて、甘えさせていた。
初めて彼と寝所を共にする。
このときは彼も湯を使った後で、髪からじゃりじゃりと砂が落ちてはこなかった。抱きしめられてキスをし、彼の手がわたしの肌を滑る。
わたしを組み敷く身体の大きさ、わずかな抗いを許さない腕の強さと強引な欲望。知らない男らしい彼を直に感じた。
生々しいそれらに圧倒されつつも、行為の後はとても満たされた気分になる。
彼が好き。
自分に、こんな瞬間が訪れることはないと思っていた。今がうれしい。好きな人と抱き合って、結ばれて。
わたしは今、とても幸せなのだ。
知らない間に涙が瞳をあふれている。指でぬぐうと、彼が涙に気づいた。
「僕は乙女を知らない」
わたしの具合を探るようにぺたぺたと触れる。その変な仕草に抗うより、「乙女を知らない」の言葉に驚いた。
処女である乙女以外は知っているのだ。
当然だ。そうだろう。王子は成人した男性で、各地を旅する。以前わたしがハクをそれと誤解したように、実際夜伽の女性が侍ることもあったはず。
納得はしたが、少し、いやかなり動揺があった。
今後もそうなるのだろうか。
これまではともかく、この先も、外で誰かを抱くの?
「ダーシー?」
調べるように女の部分に触れて来るので、慌てて身体を閉じた。彼に背を向ける。
そうすると、彼がわたしから掛布をはいだ。
「嫌」
「見ないとわからないじゃないか。僕が乱暴で傷つけたかもしれない」
強引に脚を開くから、わたしははっきり泣き出してしまった。
「血が出てる。けがをさせたのか、僕は。爺を呼ぼう」
「呼ばないで!」
緩んだ彼の腕を蹴るようにして脚を閉じた。
破瓜を知らないのか、王子は。
「初めての場合、出血するものなの。けがじゃないの」
「でも、君は泣いている」
ショックだったのだ。
初夜を終えたばかりだ。王子の過去の女性経験に驚き、今後の女性問題に悩むところで、無理やり脚を開かれてのぞかれた。危うく爺まで呼ばれそうになった。取り乱したっておかしくない。
ひざを抱えて泣いた。
少し前まで彼の腕の中で幸せな気分でいたのに。
王子が側にきた。肩を抱く。
「痛い目に遭わせたのだろう? すまない。乙女の接し方がわからないんだ」
「…乙女以外は詳しいの?」
「え」
「乙女じゃない女性は、…たくさん知っているみたい」
「女の経験を聞いているのか?」
「言いたくなければ、それでもいいけど」
「ある」
「…そう」
「あったら、いけないのか?」
「そうじゃなくて…」
こんなことを聞いて、王子を困らせているみたいで嫌だった。彼の過去は彼のもので、それをわたしが妻になったからと支配していいものでもない。
「ううん、いいの。ごめんなさい」
「よくない。僕に怒っているみたいだ」
「怒ってなんていないから」
「君は思っていたよりずっと細くて小さくて、僕が無理をして壊してしまったのじゃないかと怖かった」
彼がわたしに口づけた。
手のひらが乳房を包んだ。やんわりと揉みしだかれて、くすぐったさと甘い刺激が走る。
愛撫を受けながら、やっぱり嫌だと思った。
彼が他の人にこうするのは嫌だ。
「他の人にしないで」
「え」
彼が顔を上げた。目が合う。
「わたし以外は嫌なの。勝手かもしれないけど…。嫌なの」
「妬いていたのか?」
彼の目に笑みが浮かぶ。気持ちを軽くとられたようで、逆にわたしはふくれた。
王子の彼から、任務のたまさかの気晴らしを奪うことは傲慢なのかもしれない。それでも、当たり前のことと認めてしまいたくなかった。
「しない」
「本当?」
「君がいるのに、他には要らない」
「…どうしてもほしくなったら?」
「一人でする」
彼の指がわたしの中に滑り込んだ。少し慣れて、ぬれて滑らかに動く。
「君のここを思い出して」
初めて彼と寝所を共にする。
このときは彼も湯を使った後で、髪からじゃりじゃりと砂が落ちてはこなかった。抱きしめられてキスをし、彼の手がわたしの肌を滑る。
わたしを組み敷く身体の大きさ、わずかな抗いを許さない腕の強さと強引な欲望。知らない男らしい彼を直に感じた。
生々しいそれらに圧倒されつつも、行為の後はとても満たされた気分になる。
彼が好き。
自分に、こんな瞬間が訪れることはないと思っていた。今がうれしい。好きな人と抱き合って、結ばれて。
わたしは今、とても幸せなのだ。
知らない間に涙が瞳をあふれている。指でぬぐうと、彼が涙に気づいた。
「僕は乙女を知らない」
わたしの具合を探るようにぺたぺたと触れる。その変な仕草に抗うより、「乙女を知らない」の言葉に驚いた。
処女である乙女以外は知っているのだ。
当然だ。そうだろう。王子は成人した男性で、各地を旅する。以前わたしがハクをそれと誤解したように、実際夜伽の女性が侍ることもあったはず。
納得はしたが、少し、いやかなり動揺があった。
今後もそうなるのだろうか。
これまではともかく、この先も、外で誰かを抱くの?
「ダーシー?」
調べるように女の部分に触れて来るので、慌てて身体を閉じた。彼に背を向ける。
そうすると、彼がわたしから掛布をはいだ。
「嫌」
「見ないとわからないじゃないか。僕が乱暴で傷つけたかもしれない」
強引に脚を開くから、わたしははっきり泣き出してしまった。
「血が出てる。けがをさせたのか、僕は。爺を呼ぼう」
「呼ばないで!」
緩んだ彼の腕を蹴るようにして脚を閉じた。
破瓜を知らないのか、王子は。
「初めての場合、出血するものなの。けがじゃないの」
「でも、君は泣いている」
ショックだったのだ。
初夜を終えたばかりだ。王子の過去の女性経験に驚き、今後の女性問題に悩むところで、無理やり脚を開かれてのぞかれた。危うく爺まで呼ばれそうになった。取り乱したっておかしくない。
ひざを抱えて泣いた。
少し前まで彼の腕の中で幸せな気分でいたのに。
王子が側にきた。肩を抱く。
「痛い目に遭わせたのだろう? すまない。乙女の接し方がわからないんだ」
「…乙女以外は詳しいの?」
「え」
「乙女じゃない女性は、…たくさん知っているみたい」
「女の経験を聞いているのか?」
「言いたくなければ、それでもいいけど」
「ある」
「…そう」
「あったら、いけないのか?」
「そうじゃなくて…」
こんなことを聞いて、王子を困らせているみたいで嫌だった。彼の過去は彼のもので、それをわたしが妻になったからと支配していいものでもない。
「ううん、いいの。ごめんなさい」
「よくない。僕に怒っているみたいだ」
「怒ってなんていないから」
「君は思っていたよりずっと細くて小さくて、僕が無理をして壊してしまったのじゃないかと怖かった」
彼がわたしに口づけた。
手のひらが乳房を包んだ。やんわりと揉みしだかれて、くすぐったさと甘い刺激が走る。
愛撫を受けながら、やっぱり嫌だと思った。
彼が他の人にこうするのは嫌だ。
「他の人にしないで」
「え」
彼が顔を上げた。目が合う。
「わたし以外は嫌なの。勝手かもしれないけど…。嫌なの」
「妬いていたのか?」
彼の目に笑みが浮かぶ。気持ちを軽くとられたようで、逆にわたしはふくれた。
王子の彼から、任務のたまさかの気晴らしを奪うことは傲慢なのかもしれない。それでも、当たり前のことと認めてしまいたくなかった。
「しない」
「本当?」
「君がいるのに、他には要らない」
「…どうしてもほしくなったら?」
「一人でする」
彼の指がわたしの中に滑り込んだ。少し慣れて、ぬれて滑らかに動く。
「君のここを思い出して」
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