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第四章
望まぬ未来と信じる強さ2
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「そんな事……」
南雲は二の句が継げずただ黙って立ち尽くした。
「あの二人は、あの二人はどうなるんですか」
「分かりません……」
「分かりませんって、そんな無責任な! 彼らはやっと……、誠はやっと……」
結構な暴言をかなりの声量で吐いた気がする。
それを止めたのは、ここに居るはずのない三条先生だった。
「南雲先生落ち着いてください」
――あんた、なんでここに。
それを追いかけるように慌てて看護師さんが飛び込んできた。
「勝手に入られては困ります」
三条は止める手をやんわりと拒否するように、笑顔を張り付けた。
「触らないでください」
「今はとにかく外へ……」
無理矢理腕をつかんで引きずり出すなんて到底できない。看護師が説得を試みた。
「嫌です。僕が聞かないで誰が聞くんですか」
こんな細い体のどこにこんな強さが潜んでいたのだろうと、そこに居た者たちはそれをじっと見つめた。
「でもルールですから……」
お願いだと首を垂れる。
「聞けません」
「そんな我が儘を仰られても困ります」
それには三条は何一つ言葉を発しなかった。
「もういいですよ」
膠着した戦況を動かしたのはドクターの一言だった。
「ですが阿澄ドクター」
「この方は番になられる予定なのです。ならばこの方も部外者ではありませんから……」
「だからです! それはちょっと酷というものです」
看護師が批判じみた顔をした。
南雲はこの状況が最悪の結果なのだと勘が働き、慌てて三条を見た。
――くそ、こいつ、なんでこんな綺麗なんだよ。
十分意識しなければ漏れていただろうくらいには、感情は駄々洩れだった。
「何ですか?」
三条の顔は何もかもを受け入れている様だった。
「どこからお話ししましょう」
ドクターは椅子に座る様に促した。
あたりにある椅子を引き、画像の方を向いた。
「さっきもお伝えいたしましたが、今の生方さんは記憶がかけていく病気です」
「記憶が……ですか」
南雲は何も言えず押し黙り、三条は達観するように静かに聞いた。
南雲は二の句が継げずただ黙って立ち尽くした。
「あの二人は、あの二人はどうなるんですか」
「分かりません……」
「分かりませんって、そんな無責任な! 彼らはやっと……、誠はやっと……」
結構な暴言をかなりの声量で吐いた気がする。
それを止めたのは、ここに居るはずのない三条先生だった。
「南雲先生落ち着いてください」
――あんた、なんでここに。
それを追いかけるように慌てて看護師さんが飛び込んできた。
「勝手に入られては困ります」
三条は止める手をやんわりと拒否するように、笑顔を張り付けた。
「触らないでください」
「今はとにかく外へ……」
無理矢理腕をつかんで引きずり出すなんて到底できない。看護師が説得を試みた。
「嫌です。僕が聞かないで誰が聞くんですか」
こんな細い体のどこにこんな強さが潜んでいたのだろうと、そこに居た者たちはそれをじっと見つめた。
「でもルールですから……」
お願いだと首を垂れる。
「聞けません」
「そんな我が儘を仰られても困ります」
それには三条は何一つ言葉を発しなかった。
「もういいですよ」
膠着した戦況を動かしたのはドクターの一言だった。
「ですが阿澄ドクター」
「この方は番になられる予定なのです。ならばこの方も部外者ではありませんから……」
「だからです! それはちょっと酷というものです」
看護師が批判じみた顔をした。
南雲はこの状況が最悪の結果なのだと勘が働き、慌てて三条を見た。
――くそ、こいつ、なんでこんな綺麗なんだよ。
十分意識しなければ漏れていただろうくらいには、感情は駄々洩れだった。
「何ですか?」
三条の顔は何もかもを受け入れている様だった。
「どこからお話ししましょう」
ドクターは椅子に座る様に促した。
あたりにある椅子を引き、画像の方を向いた。
「さっきもお伝えいたしましたが、今の生方さんは記憶がかけていく病気です」
「記憶が……ですか」
南雲は何も言えず押し黙り、三条は達観するように静かに聞いた。
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