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第三章 共生
43睦月 狙われた紫苑④
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白城が帰ったあとのテーブルを片付けながら紫苑は先刻から気になっていた事を聞いた。
「なあ、柊は白城さんが嫌いなのか」
紫苑がカウンター越しに覗き込むと、神無月は計量カップに水を量っていた。
「何作ってんの?」
「テリーヌ」
「キラキラして綺麗だな」
テリーヌ型に海老やホタテ、人参やアスパラガスなんかを綺麗に並べ、そこにコンソメにゼラチンをふやかしたものを静かに流し込む。
そーっと流し込む様を見ていると、緊張が走る。
コンソメを注ぎ終わった神無月はテリーヌ型を冷蔵庫に移すとゆっくりと顔をあげた。
「お前は好きなのか?」
不愉快そうに視線を絡めた。
「いや、あのオメガをバカにしてる生き方が好きじゃない。ってそもそも僕もオメガなんかバカにしていたんだから僕の言えた義理じゃないか」
紫苑は自嘲気味に言った。
「それは違うだろ」
神無月は紫苑が自分の言葉で傷つかぬように必死に庇った。
「何も違わない。オメガをバカにしていたのは事実だよ。オメガなんか繁殖しか能がない、ヒートになればセックスの事しか考えられなくなる最低な奴らだと思っていた」
「でも今は違うだろ!」
「どうだろう……」
「紫苑……」
神無月の泣きそうな顔に紫苑は心が傷んだ。
「ただあんな風にバカにされるのは嫌だって思うようにはなった……かな」
本心だ。オメガなんかに生まれたくはなかった。
いや、まともなオメガならこんな風にはなっていなかったかもしれない。
キッチンから出てきた神無月はカウンターの紫苑の横に腰かけて「キスしよ」と言うと、強引に抱き寄せた。
「バカッ、営業中。誰かに見られたらどうするんだよ」
「構わないよ。俺は誰に見られても困らない」
自信家の神無月は人に後ろ指を指されることになれてない。
「カミングアウトなんかしないのはお前の為だよ。バカ……嫌われる事になんか慣れてないくせに」
「俺はお前が好きだ」
「知っている……」
うつむいたまま表情の読めない紫苑の耳はそれでも赤く、ただその一点だけで想いを伝えるには十分だった。
「なあ、柊は白城さんが嫌いなのか」
紫苑がカウンター越しに覗き込むと、神無月は計量カップに水を量っていた。
「何作ってんの?」
「テリーヌ」
「キラキラして綺麗だな」
テリーヌ型に海老やホタテ、人参やアスパラガスなんかを綺麗に並べ、そこにコンソメにゼラチンをふやかしたものを静かに流し込む。
そーっと流し込む様を見ていると、緊張が走る。
コンソメを注ぎ終わった神無月はテリーヌ型を冷蔵庫に移すとゆっくりと顔をあげた。
「お前は好きなのか?」
不愉快そうに視線を絡めた。
「いや、あのオメガをバカにしてる生き方が好きじゃない。ってそもそも僕もオメガなんかバカにしていたんだから僕の言えた義理じゃないか」
紫苑は自嘲気味に言った。
「それは違うだろ」
神無月は紫苑が自分の言葉で傷つかぬように必死に庇った。
「何も違わない。オメガをバカにしていたのは事実だよ。オメガなんか繁殖しか能がない、ヒートになればセックスの事しか考えられなくなる最低な奴らだと思っていた」
「でも今は違うだろ!」
「どうだろう……」
「紫苑……」
神無月の泣きそうな顔に紫苑は心が傷んだ。
「ただあんな風にバカにされるのは嫌だって思うようにはなった……かな」
本心だ。オメガなんかに生まれたくはなかった。
いや、まともなオメガならこんな風にはなっていなかったかもしれない。
キッチンから出てきた神無月はカウンターの紫苑の横に腰かけて「キスしよ」と言うと、強引に抱き寄せた。
「バカッ、営業中。誰かに見られたらどうするんだよ」
「構わないよ。俺は誰に見られても困らない」
自信家の神無月は人に後ろ指を指されることになれてない。
「カミングアウトなんかしないのはお前の為だよ。バカ……嫌われる事になんか慣れてないくせに」
「俺はお前が好きだ」
「知っている……」
うつむいたまま表情の読めない紫苑の耳はそれでも赤く、ただその一点だけで想いを伝えるには十分だった。
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