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第五章 運命
72水無月 再会③
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「なんでこんな事になっているんだよ」
紫苑の目は決壊したダムの様に、次々と涙が溢れ、見たかった神無月の顔すら、ぼやけて見えなかった。
「気がついたら真っ白い天井を見ていた……」
「だから……なんでナイフなんか刺したんだ……」
消える様な切れ切れの声は、静かな部屋に、それでも鮮明に響き渡った。
「手はダメだろ。商売道具だ」
笑っていう神無月に紫苑は目一杯睨みを利かせ「当たり前だ!そういった意味じゃない」涙の中に青白い怒りの色を滲ませた。
「怒るなよ、抱きたくなかったんだ」
初夏の風を感じるように、開け放たれた窓からは、花の甘い匂いが舞い込んだ。
「甘い……」
紫苑が言うと、神無月は「お前の匂いみたいだ」と言った。
「何呑気な事言ってるのさ……。店どう……」
「いつ戻ってくるんだ?」
それこそ呑気に聞く神無月に紫苑はぐっと黙ってしまった。
「…………」
何分も黙り込む紫苑に、神無月は不思議に思い、ベッドから降りた。
歩み寄る神無月に、紫苑は抱きつきたい想いを必死に堪え、口をあけた。
「腹が冷える、美月。これを着て」
白城の手が紫苑の腹を撫で、愛情溢れる言葉がけは、そのまま神無月への牽制だった。
「白城さん、今言う事じゃ……」
「腹……?どうゆうことだ?」
ゆらゆらと立ち上る怒りのオーラに、白城も負けじと向き合った。
「美月……?なあ、美月……」
「紫苑君は悪くないよ。ヒートを起こした彼の中にダクダクと自分の物を流し入れたよ。君もヒートを起こしたオメガがどうなるかは知っているはずだ。その制御が出来ないからこそのヒートだろ」
「だからって、妊……」
妊娠と言おうとして、紫苑の泣きそうな顔をみて、神無月は言葉を飲み込んだ。
「ごめんなさい……」
その場に崩れ落ちた紫苑に白城が優しく抱きしめた。
「だから紫苑君は悪くないよ。アフターピルを飲まさなかったのは俺だ。このヒートを逃したら彼を孕ますチャンスは消える。半年後にきちんと意識があれば君のとこに返す。それが約束だった」
「なら約束位守れよ」
「守るよ。彼が帰るというならな」
「くそっ」
神無月の喉はひくつき、うまく声が出てこない。
「それだって、必ず孕むわけじゃない。とくに紫苑君は不妊体質だ。それが彼がオメガでいたくなかった理由だよ。俺は奇跡という運命にかけたんだ。彼が孕めばもう君のとこには帰るまい。かれの申し訳ないという君への気持ちがそうさせる」
「わかっていて、飲まさなかったのか。美月に触るな。そのオメガは俺のオメガだ!」
「それは彼が決めるよ。俺の子を孕んでいて、君はそんな彼と幸せになれるのかい?紫苑君は優しいよ。子供はオロすまい」
「んなこた――わかってる。なぁ、美月――」
神無月の唸るような声と、アルファのフェロモンに、紫苑の秘部はひくひくと――甘い匂いを放ち始めた。
紫苑の目は決壊したダムの様に、次々と涙が溢れ、見たかった神無月の顔すら、ぼやけて見えなかった。
「気がついたら真っ白い天井を見ていた……」
「だから……なんでナイフなんか刺したんだ……」
消える様な切れ切れの声は、静かな部屋に、それでも鮮明に響き渡った。
「手はダメだろ。商売道具だ」
笑っていう神無月に紫苑は目一杯睨みを利かせ「当たり前だ!そういった意味じゃない」涙の中に青白い怒りの色を滲ませた。
「怒るなよ、抱きたくなかったんだ」
初夏の風を感じるように、開け放たれた窓からは、花の甘い匂いが舞い込んだ。
「甘い……」
紫苑が言うと、神無月は「お前の匂いみたいだ」と言った。
「何呑気な事言ってるのさ……。店どう……」
「いつ戻ってくるんだ?」
それこそ呑気に聞く神無月に紫苑はぐっと黙ってしまった。
「…………」
何分も黙り込む紫苑に、神無月は不思議に思い、ベッドから降りた。
歩み寄る神無月に、紫苑は抱きつきたい想いを必死に堪え、口をあけた。
「腹が冷える、美月。これを着て」
白城の手が紫苑の腹を撫で、愛情溢れる言葉がけは、そのまま神無月への牽制だった。
「白城さん、今言う事じゃ……」
「腹……?どうゆうことだ?」
ゆらゆらと立ち上る怒りのオーラに、白城も負けじと向き合った。
「美月……?なあ、美月……」
「紫苑君は悪くないよ。ヒートを起こした彼の中にダクダクと自分の物を流し入れたよ。君もヒートを起こしたオメガがどうなるかは知っているはずだ。その制御が出来ないからこそのヒートだろ」
「だからって、妊……」
妊娠と言おうとして、紫苑の泣きそうな顔をみて、神無月は言葉を飲み込んだ。
「ごめんなさい……」
その場に崩れ落ちた紫苑に白城が優しく抱きしめた。
「だから紫苑君は悪くないよ。アフターピルを飲まさなかったのは俺だ。このヒートを逃したら彼を孕ますチャンスは消える。半年後にきちんと意識があれば君のとこに返す。それが約束だった」
「なら約束位守れよ」
「守るよ。彼が帰るというならな」
「くそっ」
神無月の喉はひくつき、うまく声が出てこない。
「それだって、必ず孕むわけじゃない。とくに紫苑君は不妊体質だ。それが彼がオメガでいたくなかった理由だよ。俺は奇跡という運命にかけたんだ。彼が孕めばもう君のとこには帰るまい。かれの申し訳ないという君への気持ちがそうさせる」
「わかっていて、飲まさなかったのか。美月に触るな。そのオメガは俺のオメガだ!」
「それは彼が決めるよ。俺の子を孕んでいて、君はそんな彼と幸せになれるのかい?紫苑君は優しいよ。子供はオロすまい」
「んなこた――わかってる。なぁ、美月――」
神無月の唸るような声と、アルファのフェロモンに、紫苑の秘部はひくひくと――甘い匂いを放ち始めた。
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