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スタイズとの出会い
33 僕は母さんのような人間にはなりたくない
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エイシア様は僕と相性が良さそうな人を見つけたと言っていたけれど、どんな流れで決まったんだろう?
気になったのでスタイズさんに聞いてみた。
「上官に命じられて、今朝よく分からないままにここに来たら、魔術士のエイシア様と魔術研究所の所長のファリウス様がいらっしゃってね。色々と説明を受けた上で、新しい魔術士のパートナーになって欲しいと頼まれたんだ」
ええええええ!????
今朝ってまだ数時間しか経ってないし、事前に話があったわけでもないようだし、凄く急な話じゃないか!
それに魔術研究所の所長のファリウス様は、王弟殿下……つまり王族だと看護士さんから聞いたことがある。
世界魔術士協会本部の凄い魔術士と王族直々の「お願い」なんて、普通の人にとっては「命令」と同じようなもののはず。
一応、面談という形を取ってはいるけれど、スタイズさんの方から断ることなんてできないだろう。
実は命令だからここに来ただけで、内心は魔術士のパートナーになんてなりたくないと思っているとしたら……
今まで優しくしてくれていたのは、魔術士である僕の機嫌を損ねないように気を使っていただけだとしたら……
そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまったんだ。
自分だけの都合で他人の人生を大きく変えるなんて、母さんや叔母さんと一緒じゃないか!
そんなのは絶対に駄目だ!
「あのっ、スタイズさん! もし僕の、パートナーになるのが、嫌だったら、え、遠慮なく、言って下さいね! そちらから、断ることが、できないのでしたら、僕が合わなかったと、断りますので……」
「えっ?」
「だって、いきなり、こんな知らない子どもと一緒に、研究所の中で、生活しないといけないとか、嫌じゃないですか? スタイズさんにも、壁の外に、仲の良い友人が、いらっしゃる、でしょうし……」
僕は、他人が積み重ねてきた人生を捨ててまで一緒になるような価値のある人間じゃない。
こんな優しくて良い人の人生を壊したくない、今ならまだ間に合う、パートナーは研究所の中の適当な人で妥協する……僕は頭を下げて、必死に想いを伝えた。
スタイズさんは黙って僕の言葉を聞いてくれているけれど、否定されないってことは、やっぱりそうなんだ……
ホッとしたと同時に、この機会を逃してしまうと、こんなに優しくて良い人にはもう巡り合えないんじゃないのか、とも思ってしまった。
悲しいような、よく分からない感情で頭の中がいっぱいになり、目が熱くなってきた。
……すると、頭を優しく撫でられたんだ。
「セルテ君、別に私は嫌ではないのだが?」
「!?」
スタイズさんの言葉に驚いた僕は、恐る恐る顔を上げて彼を見た。
彼は少し困ったような、でも優しい表情をしている。
そして、彼は穏やかな声で語り始めたんだ。
「元々私は、近いうちに軍を辞めて、孤児を引き取ってのんびり暮らすことを考えていた。そして今回、かつて関わりがあったカーレム先生の子どもである君が置かれた状況を知り、放っておくことはできないと思ってしまった。これも何かの縁だろうと思って、引き受けるつもりでいるんだ」
「でも……そんな……」
「仲が良い友人や同僚・部下とは離れることにはなるが、これまでも配置換えや家庭の事情で離れてしまい、文通だけでの交流になった人が何人もいる。同じ空の下で無事に生きていると分かれば、それだけで十分だ。それに魔術研究所の中で新しい人間関係もできるだろうから、私は悲観していないんだ」
そして彼は僕の方に向き直り、僕の両手を優しく支え持ってくれた。
「セルテ君。君さえ良ければ、私は君と家族になって、君を守り、支え、これからの人生を共に歩みたいと思っている……どうだろうか?」
気になったのでスタイズさんに聞いてみた。
「上官に命じられて、今朝よく分からないままにここに来たら、魔術士のエイシア様と魔術研究所の所長のファリウス様がいらっしゃってね。色々と説明を受けた上で、新しい魔術士のパートナーになって欲しいと頼まれたんだ」
ええええええ!????
今朝ってまだ数時間しか経ってないし、事前に話があったわけでもないようだし、凄く急な話じゃないか!
それに魔術研究所の所長のファリウス様は、王弟殿下……つまり王族だと看護士さんから聞いたことがある。
世界魔術士協会本部の凄い魔術士と王族直々の「お願い」なんて、普通の人にとっては「命令」と同じようなもののはず。
一応、面談という形を取ってはいるけれど、スタイズさんの方から断ることなんてできないだろう。
実は命令だからここに来ただけで、内心は魔術士のパートナーになんてなりたくないと思っているとしたら……
今まで優しくしてくれていたのは、魔術士である僕の機嫌を損ねないように気を使っていただけだとしたら……
そう思うと、申し訳ない気持ちでいっぱいになってしまったんだ。
自分だけの都合で他人の人生を大きく変えるなんて、母さんや叔母さんと一緒じゃないか!
そんなのは絶対に駄目だ!
「あのっ、スタイズさん! もし僕の、パートナーになるのが、嫌だったら、え、遠慮なく、言って下さいね! そちらから、断ることが、できないのでしたら、僕が合わなかったと、断りますので……」
「えっ?」
「だって、いきなり、こんな知らない子どもと一緒に、研究所の中で、生活しないといけないとか、嫌じゃないですか? スタイズさんにも、壁の外に、仲の良い友人が、いらっしゃる、でしょうし……」
僕は、他人が積み重ねてきた人生を捨ててまで一緒になるような価値のある人間じゃない。
こんな優しくて良い人の人生を壊したくない、今ならまだ間に合う、パートナーは研究所の中の適当な人で妥協する……僕は頭を下げて、必死に想いを伝えた。
スタイズさんは黙って僕の言葉を聞いてくれているけれど、否定されないってことは、やっぱりそうなんだ……
ホッとしたと同時に、この機会を逃してしまうと、こんなに優しくて良い人にはもう巡り合えないんじゃないのか、とも思ってしまった。
悲しいような、よく分からない感情で頭の中がいっぱいになり、目が熱くなってきた。
……すると、頭を優しく撫でられたんだ。
「セルテ君、別に私は嫌ではないのだが?」
「!?」
スタイズさんの言葉に驚いた僕は、恐る恐る顔を上げて彼を見た。
彼は少し困ったような、でも優しい表情をしている。
そして、彼は穏やかな声で語り始めたんだ。
「元々私は、近いうちに軍を辞めて、孤児を引き取ってのんびり暮らすことを考えていた。そして今回、かつて関わりがあったカーレム先生の子どもである君が置かれた状況を知り、放っておくことはできないと思ってしまった。これも何かの縁だろうと思って、引き受けるつもりでいるんだ」
「でも……そんな……」
「仲が良い友人や同僚・部下とは離れることにはなるが、これまでも配置換えや家庭の事情で離れてしまい、文通だけでの交流になった人が何人もいる。同じ空の下で無事に生きていると分かれば、それだけで十分だ。それに魔術研究所の中で新しい人間関係もできるだろうから、私は悲観していないんだ」
そして彼は僕の方に向き直り、僕の両手を優しく支え持ってくれた。
「セルテ君。君さえ良ければ、私は君と家族になって、君を守り、支え、これからの人生を共に歩みたいと思っている……どうだろうか?」
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