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冒険者ギルド編 ~昇級試験~
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しおりを挟む「え?私が試験官?」
「無理なら俺がやるからいいぜ?でもせっかく来るんなら、ちっと参加してもいいと思ってな」
「試験官って・・・なにすればいいの?」
昇級試験も間近。本当に行ってもいいのかな?と思っていたら、魔術研究所に『獅子王』が来た。
「俺も数回やった事あるが、基本的には結界魔法張ってどの程度の魔法を使ってくるか見るくらいでいいぜ」
「そのどの程度っていうのはどうやって見るの?」
コトン、と珈琲を出す。
悪ィな、と断って口に運ぶ。向かいに座る私を見て、眉を潜めた。
「んだよ、何でそっちに座る?」
「普通こっちでしょ?」
「普通はここだろ?」
自分の隣を指す。ああそこに座って欲しかったの?
でも別にそういう関係じゃないし?そりゃ1回寝たけど。
「そういう時はそっちに行くわ」
「へいへい、1回寝たくらいでいい気になるなって事な」
「何言ってるのよ?意外と1度寝た女には独占欲が湧くタイプなの?そうは見えませんけど」
「あんたは別だよ。繋ぎ止める事はしねえが、手が届く時は側に置いておきてえくらいには気に入ってる」
「私もよ?でも今はそういう気分じゃないの」
『そうかよ』と笑う『獅子王』。
このくらいの関係の方が楽でいい。彼も同じような人間ね、自分勝手ともいうけれど。今の私にはこのくらいがちょうどいい。
「んで、試験官な?結界魔法が壊されるような魔法撃てるやつがいるとは思わんが・・・基本的には『1番得意な魔法』を披露しろというのが試験内容だ。
計測器もあるからな、威力はそれで測定する事になってる」
「じゃあとりあえず守りに入ってればいいわけ?」
「まあそうだな。妨害しても構わないが。・・・俺はエンジュがどの程度の魔法を使うのかわからんが」
「んん~?どうかしらね、一応アナスタシアが全力で斬り込んできても防げる程度の強度はあるかな」
「・・・問題なさすぎるな、そりゃ」
どこまで行けるか!?という事で試した事がある。
最初は軽く、だったのだがだんだんアナスタシアが本気になってきて、もうどうしようもない状態だった。
怖すぎて結界魔法を重ねがけして震えてましたけど。5枚重ねて3枚目までヒビはいってたからな…
でも耐えるだけなら私じゃなくて良くない?
「なんか言いたそうだな?」
「いや、耐えればいいだけなら私じゃなくて良くない?と思って。ゼクスレンがあの子達にしてたような試験なら解るけど」
「あん?試験なんてすんのか?」
「そりゃそうよ、だってあの子達は『研究生』だからね」
研究室に所属する人達は、基本的に『生徒』である。
そこの研究室をまとめている管理者は、時折実力を見る為に試験を課す。
『塔』によって様々だと思うけど、ウチではゼクスさんが思いついてしまった時に試験がある。
今回は面白そうだったので、私も参加した。結果的にゼクスさんが飽きてしまったので、彼等が試験を突破するまでその魔法を維持したのは最初に解けてしまった私である。
なんていうかな?パズルみたいで面白かったけど。
「どんな試験だ?」
「そうね、実際にやった方がわかりやすいかも。こっち来て」
********************
さて、来たのは実験室。
イスト君に許可を得て連れてきた。
ここは私が魔法を撃ちまくっても大丈夫なので安心。
「こんなとこがあんのか。ギルドよりも高性能だな」
「魔法に関してはやっぱり譲れないんじゃない?
で、要領はわかった?始めるわよ」
「おう、やってやらあ」
説明は先程終えた。まあ百聞は一見にしかず。実際にやらないと理解するのは難しいだろう。
とりあえず簡単な感じから。
私は『獅子王』の周りに火属性で壁を作成する。一応触ってもケガしないようにしております。
「『難読障壁』」
「うおっ!・・・おいすげえなこれ」
「じゃ、中からその障壁を破ってね?」
「これ、物理じゃダメなんだろ?」
「試してもいいけど、反発すると思うわよ」
せーの、と殴りかかる『獅子王』。
まるで空気の壁を殴ったかのように、ぽいん、と跳ね返る。
「こりゃ、よく出来てる。腕に物を言わせて出る、って事が不可能な訳だな?」
「そうね、その壁自体に『物理無効』入れて組んでるから」
「・・・は?」
「だから、『物理無効』を属性付与してるの」
「んな事が可能なのか?」
「なんかね、出来ちゃったのよ」
「・・・ホントによ、お前ってなんかおかしくねえか?」
「そうね、自分でもそう思う」
「すげえ女に手を出したな、俺は」
「でも強くはないわよ?私が冒険者になっても貴方みたいに上級クラスにはなれないと思うの」
「いや、充分じゃねえか?今度ホントに一緒に迷宮潜るか?」
「それも楽しそうだけど、とりあえずコレよ」
「・・・つまり、この壁に内側から自分の魔力で相殺かけりゃいいんだな?」
「そう、当たり」
さすがは『獅子王』。S級冒険者だ。脳筋ゴリラかと思いきや、なかなかに頭も切れる。でなきゃ単独で動いたりしないか。
壁に手を添え、ブツブツとこうか?こうじゃねえな、なんて言いながら干渉を始めた。そうそう、壁の組成がどうなってるか鑑定魔法辺りでどうなってるかを見ることから始めるのが1番。
上級者になると、今『獅子王』がしているみたいに、直接魔力で探知を掛ける方が早い。
数分後、干渉が上手くいったのかフワッと障壁は解けた。
「・・・おし!」
「よくできました。これが初級編ね」
「あ?」
「だから、今のが基本です。本来はもっと属性を増やして分かりにくくしたり、一定時間置きにパターンを操作して組み替えたり出来るから難易度は自由に設定でき」「待て待て待て!」
「え、何?」
「んな事まで可能なのか!」
「そうね、今のところ出来るのはゼクスレンと私?」
と、セバスも入りますが。
これ、そもそも『影』の修行でしてた魔法訓練みたいだし。
今ではもっと複雑になっているそうだが、この訓練自体は公開してもいいのだという。騎士団でも使われているのだが、いかんせんこの魔力操作が難しいので、出来る人がいないそうだ。
私?私はなんていうの?テトリスとかぷよぷよとかパズドラやってたからなのか、こういうややこしいパズルみたいな操作は得意です。TVゲームってそう考えると凄いわよね。
「・・・参った、充分すぎる」
「そう?A級からC級ってくらいだし、ある程度難易度を変えてやる気はあるわよ?」
「わかったC級は今のでいい。他もそいつ等の属性見て足す程度でもいいくらいだ。俺ですら手こずるのに、これ以上の難易度だとクリアする奴がいない」
「え?そう?一応A級ならもうすこし挑戦しがいがある方が良くない?これコツ掴んだら簡単よ?」
「・・・あーもう、わかった。やってみてくれ」
その後、何度か難易度を変えて設定。
最初は『うがーーー!!!』と発狂していた『獅子王』だが、コツを掴むと割りとスイスイ解いている。
「・・・なるほどな、コツなあ?」
「ほら出来るじゃない。だから一定時間置きにパターンを操作して組み替えたりしないとサクッと終わるのよ」
「そうは言うがな、こりゃ俺は魔力操作に慣れがあったからどうにかなったが、普通の奴らはそこまで魔力操作に慣れてねえもんだぜ?」
「うーん?でもA級になろうっていうならその魔力操作って必須スキルじゃないの?」
「・・・そりゃ言えてんな。魔術師じゃなくても、剣士でも使えるに越したこたあねえし。必須にすっか?ちょっとグラストンに相談してみるわ」
「そうね、これができると、結界魔法も壊れにくく作れるし、必須だと思うわよ?ちなみに、研究室のあの子達はみんな出来るからね」
「っ、マジか?」
「当たり前よ、ここの研究室所属だもの。4人ともそっちの感覚で言うなら一流の魔術師じゃないかしら?」
実験室でたまに魔法の試し打ちとかしてるのを見ていると、強さは分からないが、魔力の流れはとても安定して無駄がない。
…あ、もちろん裸眼でなくあのペル〇ナ眼鏡を借りて見ています。今度の試験にもそれ借りていこう。楽そう。
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