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4話 暴かれるパトリシアの嘘

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 アルドゥールが怪訝な顔でパトリシアのことを見つめている。部屋には張り詰めた空気が流れはじめた。

 それを打ち破ったのは、ブランシュが医務室に入る前、階段の上から手招きしていた人物だった。

 がちゃりと勢いよく開かれた扉と同時にパトリシアに向けて心配そうな声がかけられる。

「大丈夫か? 怪我の具合は?」

「せ、先生……っ! 私、殺されかけたんですの、助けてください!」

 あとに戻れないパトリシアは、安堵の表情を浮かべて教師に縋るように媚びた声を出す。けれど、教師の態度は冷たかった。

「殺されかけた……ねぇ。僕からは君が自分で腕をきりつけていたように見えたんだが、見間違えたのかもしれないな?」

 怒りを感じるわけでもない、普通の口調なのがより一層パトリシアを追いつめた。

「なにを言ってるんでしょう? 先生までブランシュの肩を持つようなら私のお父さまだって黙っていませんわよ?」

「教師がそんな風に決めつけていいものなのですか? 僕のパトリシアがこんな怪我までさせられてるのに、自作自演だと?」

「ブランシュ! あなたも何とか言いなさい! いつでも潰せるのよ?!」

 鋭い目つきでブランシュを睨み付けると、キンキンと響く金切り声で怒鳴りつける。

 ブランシュが口を開こうとするのを手で制した教師は、パトリシアへと近づいていく。

「そう思うならお父さまに告げ口でもしたらいいんじゃないか? この手の傷が直ったあとにでも」

 パトリシアの包帯が巻かれていない方の手は固く握り込まれている。教師は強引に手を開かせると、親指の付け根あたりからざっくりと切れているのが見えた。

「これは……!」

「はさみで腕を切るときに強く握りすぎたんだろう。この傷が自作自演のなによりの証拠じゃないか?」

「僕はこの目で見たぞ! そっちの人がはさみを持っていた!」

「切りつける場面は見たのか?」

「いや、それは……」

「ブランシュは、パトリシアが自分の腕を切りつけたあと、はさみを取りあげただけだ。先生がはっきりとこの目で見たぞ! それに手のひらの切り傷……。もう言い逃れはよせ」

 アルドゥールはパトリシアのことを信じたいのか、必死に擁護したが教師の反論に返す言葉がなくなったみたいだった。

「ブランシュの婚約者から相談されていたんだ。ブランシュが人を貶めるなんておかしいと。確認のためにパトリシアのことをこっそりと着けていたら、自作自演の証拠がわんさか出てきた」

 ブランシュは込み上げてくる涙をぐっと堪えるだけで精一杯で何も言えなかった。話しだせば涙も流れてしまいそうだったから。

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