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第一章:リスタート
悪口を端から見れば
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風邪が治ってから数ヶ月が経った。
「また違う殿方と話していますわ」
不快そうに眉をしかめたマリエッタが、アメリアに嫌悪の視線を向けている。
「それだけ彼女に人気があるということでしょう?」
なにせ彼女は乙女ゲーム『ローズコネクト』のヒロイン。アメリアがモテるのは、攻略対象が多いのだから仕方がない。
次期国王候補のジェームス王子。童顔と明るい性格で人気者のデイビッド。寡黙でストイックなイケメンのリアン。俺様な豪商の息子カルロス。学園一の秀才スコット。
麗子の見た小説では、その五人がゲームの攻略対象だった。
今アメリアに話しかけているのはデイビッドだ。少し癖のある金髪、大きな青い瞳がくるくると動く彼は好奇心旺盛で交友関係も広い。
友人のベリンダを交え、三人で楽しそうに談笑している。
彼女たちはいつもそんなアメリアを見ては眉をひそめ、悪口を言う。その度にイザベラはやんわりとたしなめている。
ま、アメリアへの印象を良くしようという、下心ではあるけれどね。
と、毎回心の中で舌を出しているのだが。
「イザベラ様はご不快に思われないのですか? 殿方をとっかえひっかえして。はしたないではありませんか」
長いまつ毛に縁どられた瞳を横目に流し、マリエッタが鼻から息を吐く。
「マリエッタ様の言う通りですわ。あの方々があんな平民の小娘を構うなんて。どんな手を使って誘惑しているのでしょう。汚らわしい」
「大方、体でも売っているのでしょうよ。そうでなければ家柄も何もない、貧相な娘なんて相手にするものですか」
「いかにも平民らしい、卑しい売女ですわね」
周りにいる令嬢たちも次々とマリエッタの意見に乗った。
どの顔にも浮かんでいるのは嫌悪と侮蔑、優越感。
彼女たちは『平民』を見下すことで、自分たちが『平民』よりも優れているのだと優越感に浸っているのだ。
「別にとっかえひっかえではないでしょう? 別にアメリアは彼ら全員とつきあっているわけじゃないの。彼らがアメリアを放っておけないのよ」
イザベラは溜め息を混ぜながら、言葉を吐き出した。
当事者である時は彼女たちと同じ思いに囚われていたけれど、端から見ていれば面倒臭い感情だ。
なぜ美しく由緒正しい家柄の自分たちよりも、どちらかというと平凡な容姿のアメリアばかりが、学園でも人気の高い男性にちやほやされるのか。
そんなのおかしい、許せない。きっとアメリアが裏で何かしているに違いない、と。
けれど、やり直した今なら分かる。アメリアから彼らに話しかけたのではなく、むしろ彼らに話しかけられると慌てて避けていた。
そんな彼女が新鮮に映ったり、逃げる者ほど追いかけたくなるのだろう。ヒーローたちは盛んにアメリアに話しかけ、気を惹こうとしている。
もちろん、小説やゲームの強制力みたいなものがあるだろう。麗子の読んだ小説の流れと同じで、アメリアにはやたらと彼らと接近するような、ハプニングだったり偶然だったりというイベントが起こるのだから。
しかしそこからヒーローたちがアメリアに惹かれていくのは、アメリア自身の素朴な魅力なのだと思う。
「また違う殿方と話していますわ」
不快そうに眉をしかめたマリエッタが、アメリアに嫌悪の視線を向けている。
「それだけ彼女に人気があるということでしょう?」
なにせ彼女は乙女ゲーム『ローズコネクト』のヒロイン。アメリアがモテるのは、攻略対象が多いのだから仕方がない。
次期国王候補のジェームス王子。童顔と明るい性格で人気者のデイビッド。寡黙でストイックなイケメンのリアン。俺様な豪商の息子カルロス。学園一の秀才スコット。
麗子の見た小説では、その五人がゲームの攻略対象だった。
今アメリアに話しかけているのはデイビッドだ。少し癖のある金髪、大きな青い瞳がくるくると動く彼は好奇心旺盛で交友関係も広い。
友人のベリンダを交え、三人で楽しそうに談笑している。
彼女たちはいつもそんなアメリアを見ては眉をひそめ、悪口を言う。その度にイザベラはやんわりとたしなめている。
ま、アメリアへの印象を良くしようという、下心ではあるけれどね。
と、毎回心の中で舌を出しているのだが。
「イザベラ様はご不快に思われないのですか? 殿方をとっかえひっかえして。はしたないではありませんか」
長いまつ毛に縁どられた瞳を横目に流し、マリエッタが鼻から息を吐く。
「マリエッタ様の言う通りですわ。あの方々があんな平民の小娘を構うなんて。どんな手を使って誘惑しているのでしょう。汚らわしい」
「大方、体でも売っているのでしょうよ。そうでなければ家柄も何もない、貧相な娘なんて相手にするものですか」
「いかにも平民らしい、卑しい売女ですわね」
周りにいる令嬢たちも次々とマリエッタの意見に乗った。
どの顔にも浮かんでいるのは嫌悪と侮蔑、優越感。
彼女たちは『平民』を見下すことで、自分たちが『平民』よりも優れているのだと優越感に浸っているのだ。
「別にとっかえひっかえではないでしょう? 別にアメリアは彼ら全員とつきあっているわけじゃないの。彼らがアメリアを放っておけないのよ」
イザベラは溜め息を混ぜながら、言葉を吐き出した。
当事者である時は彼女たちと同じ思いに囚われていたけれど、端から見ていれば面倒臭い感情だ。
なぜ美しく由緒正しい家柄の自分たちよりも、どちらかというと平凡な容姿のアメリアばかりが、学園でも人気の高い男性にちやほやされるのか。
そんなのおかしい、許せない。きっとアメリアが裏で何かしているに違いない、と。
けれど、やり直した今なら分かる。アメリアから彼らに話しかけたのではなく、むしろ彼らに話しかけられると慌てて避けていた。
そんな彼女が新鮮に映ったり、逃げる者ほど追いかけたくなるのだろう。ヒーローたちは盛んにアメリアに話しかけ、気を惹こうとしている。
もちろん、小説やゲームの強制力みたいなものがあるだろう。麗子の読んだ小説の流れと同じで、アメリアにはやたらと彼らと接近するような、ハプニングだったり偶然だったりというイベントが起こるのだから。
しかしそこからヒーローたちがアメリアに惹かれていくのは、アメリア自身の素朴な魅力なのだと思う。
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