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ダンスパーティー

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 待ち合わせは校門だったよね? あ、あの人かな? 後ろ姿だけど……ジルベルト様っぽい!

「ジルベルト様!」

 ぽんっと背中を叩く。あれ? 反応がない。間違っちゃった?!

「あ、あの、」

 するとくるりと振り返ってきた。手で顔を隠している。

「あれ、ジルベルト様? メガネはどうしたんですか? 見えていますか?」

 メガネを取って私が分からなかったから返事が出来ないのかも。

「私ですよ、分かりますか? オフィーリアです」

 近くに寄ってみた。

「……うん、分かっている」

「そうですか? よかっ、」

 ジルベルト様が顔から手を離して素顔? を初めて、晒す事になる。

「……あれ? 私ジルベルト様のお顔に見覚えが……」

 どこで? あれ?

「オフィーリア、ごめん。僕目が悪い訳じゃないんだ」

「ではあのメガネは……変装とか?! 誰かに狙われて顔を隠しているのですかっ? 早くメガネを!」
 
「……なんでそうなるんだよ。違う」

 あら、違ったのね。

「僕、自分の顔が好きじゃないんだ。だからメガネで隠してた」

「えっ! あの、もしその、苦痛なら私のパートナーなんて断っても良かったんですよ」

 ダンスパーティーに出席するから? 素顔を……それなら悪い事をした。

「このままでいるわけにはいけないと思っていたから、今がタイミングだと思う。自分を偽るのも逃げている事になるから」

 人には事情があるのね。そう思っているとジルベルト様と目が合った。

「…………オフィーリア?」

 ……もうすぐなんだけど、確かどこかで……うーん。

「オフィーリア? どうした」
「ちょっと待ってください! 確か……女の子が転んで、ハンカチを、男の子! そうだキャンディ!」

 ハッとしてジルベルト様を見た。

「……身長が伸びましたね? 声も変わって、顔もシュッとしましたが、あの時、そうだ! ロワール領地内だったもの。私ジルベルト様に会ってましたね!」

「……覚えていたのか」
「はい。同じくらいの歳かなって! ロワール領の人は優しいと思ってあの町が更に好きになったんですよ。領主のお話や息子さんのお話を聞いていたのに、お顔を存じ上げなかったから。ふふっ。ジルベルト様だったんだぁ」

「怒ってない? くだらない理由で変装してた事」
「怒る? 何かそうしないといけない理由があったのではないですか? 別に騙されたわけじゃないですし、少し引っかかっていたのでスッキリしましたよ」

「今日をタイミングにしたから……オフィーリアをダシにしたとか思わないの?」
「うーん。ジルベルト様は優しすぎますよ? 心配になりました」

「僕そんなに優しい人間じゃないからね」
「いいえ、優しいですよ。ジルベルト様は悪くないのに謝ってくれましたし、なんだろ……あれです、壁が取れた感じですね」

 やっぱりジルベルト様と会ったことがあったのね! しかもあの時の男の子だったとは。なんだか嬉しい。

「あっ、私の事覚えていてくれましたか?」

 記憶にはあったみたいだけど。

「もちろんだよ。ロワール領地内にこんなに可愛い子はいないから学園であった時にすぐに分かったよ」

 ……ジルベルト様ってお世辞が上手。なんだか急に恥ずかしくなってきた……

「オフィーリア、今日のドレスすごく似合っている。か、その、か、可愛い。キレイだ」

 向かい合ってちゃんと褒めてくれた……

「……ありがとうございます。ジルベルト様のタキシード姿も……カッコいい、です」

 校門で二人もじもじと話しているのもおかしいので、フローリア様とルシアン様と合流する事にした。腕を出されたのでそっと手を添えた……パートナーだもんね。


 パーティー会場に入るとすぐにルシアン様が見つけてくれた。

「? なんだ二人とも赤い顔をして……付き合いたてのカップルか?」

「なっ、ルシアン、」
「ル、ルシアン様、あの」

 周りに人がたくさんいるんだけど! 誤解されたらどうするのよ! と非難の目を向けた。

「周りに聞かせておけば良いじゃないか。それよりすぐにジルベルトが分かったのか?」
「? 分かりますよ。メガネをかけているか、かけていないかだし、ジルベルト様自体は変わりませんからね」

「そうだな、オフィーリアと友達で良かったと今思った。僕が変装していても気がついてくれそうだし」
「ふふっ私が変装してもちゃんと見つけてくださいね!」

 
 胸を張ってドヤ顔をした。見つけてやろうじゃないの!

「オフィーリア!」
 
「フローリア様! わぁ、キレイです! 美しいです! 輝いてます!」

 語彙力がなくなるくらいの美しさだわ! 本当に同じ歳なのかしら。

「オフィーリアは可愛いわ。そのドレスステキね!」

 きゃっきゃとお互いを褒め合った。

「フローリアもオフィーリアも楽しいのは分かるが、集合しなきゃならないから行くぞ」

「はーい」

 ジルベルト様の腕に手をかけた。講堂で学園長先生の話を聞いてからダンスパーティーが始まった。 
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