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第290話 酒と筋肉
しおりを挟む「お帰り!どうだった?」
「ただいま!
酒はやっぱり地球と同じ感じで作ってたよ。
でも、菌のことを分かってなかったからね。
運頼りだったみたいだね。」
「運?」
「そう。いくら数を作っていても失敗することが少なからずあるって。」
「そんなざっくりした感じでもお酒って作れちゃうんだね。」
「作る場所に菌が棲みついてるもんなんだけど、それを知らないから安易に場所移動させたりしてたみたいだよ。」
「味噌とか醤油作るのと同じってこと?」
「そうそう!」
「そりゃ失敗するよね。」
「うん。
だからそれはやめろって言ってきた。」
「お酒の味はどうだったの?」
「濁酒は、正直滅茶苦茶不味かった。
臭いのと酸味。
あと何より色見に抵抗があり過ぎたよ。
言い方悪いけど泥水っぽい感じ。
だから原料の米見せてもらったんだ。
優汰に見せないとハッキリ言えないけど、多分あれ古代米じゃないかな。
原料の色がほぼ黒と少しの赤だったらあの色になるのは仕方ない。
麦酒は、まぁ…飲めないこともないかな。
でもビールってさ、冷えてないと上手いやつでも不味く感じるもんなんだよ。
それに炭酸も弱い。
常温のビールも飲みたいとは思わないな。」
「此処に持ってくれば良かったのに。」
「何で!?飲みたかったの!?
しーちゃんは飲んじゃ駄目だよ!」
「ちっがーーーう!
飲みたくないってさっき言ったよ!
此処に持ってきたらって言ったのは私が冷やしてあげられるから!」
「あ!!そうか!!しまった!」
「古代米だったらカオリンも優汰も喜ぶよね!
貰って帰ろう!」
「そういえば古代米の話になった時香織さん興奮してたね。」
「因みになんだけど、あっくんてお酒強いの?」
「強いと思うよ。」
「酔ったりはしないの?」
「ビールじゃどれだけ飲んでも酔えないよ。」
「どれだけ飲んでも?」
「どれだけ飲んでも。」
「そっか!あっくん身体が大きいからお酒が回りにくいんじゃない?
ほら、お相撲さんもかなりお酒強いって言うでしょ?
いつもどんなお酒飲んでたの?」
「俺はテキーラが好きだったよ。」
「テキーラ!?それすんごいアルコール度数高いんじゃないの!?」
「そうでもないよ?
あ!しーちゃんのその情報源ってまた映画の影響なんじゃないの?
テキーラってショットグラスで飲むイメージしかないんじゃない?」
「よく分かったね!
そう!上に乗ってるライム齧りながら飲むやつ!」
「そうだと思ったよ。
確かにあれは強いよ。テキーラをストレートで飲むスタイルだからね。
齧りながらじゃなくて、ショットを一気に煽った後、口にまだテキーラが残ってるうちに齧るんだよ。
ちなみに度数は40度。」
「激強じゃないか!!!」
「俺が好きだったのはショットガンって飲み方だったから。
これもショットグラスで飲むんだけど、ショットガンはジンジャーエールとテキーラを半々で割って飲むんだよ。」
「半分でも20度じゃないか!」
「でも割ってるのがジュースだからね。
飲みやすいよ?
テキーラもカクテルは色々あるし。
それに度数だけで言ったら焼酎の方がよっぽど高いと思うけど。」
「焼酎ってそんなに度数高いんだ…」
「うん。
俺は常温の酒が好きじゃないんだ。
邪道って言われるけど、赤ワインもクラッシュアイス入れて飲んでたし。」
「それは美味しいの?」
「まぁ、ジュース感覚だよね。」
「私には分からん世界だ。」
「分からなくても問題ないよ。
そうだ!日本に帰ったら一緒に飲みに行ってみる?
初心者でも飲みやすい甘くて美味しいカクテルもいっぱいあるよ?」
「行かない。それなら私はジュースでいい。」
「ははっ!しーちゃんらしいね!」
「それよりアイス食べたい。」
「しーちゃんはアイスが好きなの?」
「うん!」
「どんな味が好き?」
「アイスクリームなら何でも好き。」
「シャーベットやジェラートは?」
「酸っぱいのが多いでしょ?」
「あー、確かに。爽やかさがウリだからね。
酸味は苦手?」
「果物なら平気になった。
でも、私がアイスに求めてるのは甘さとコクと滑らかさ。
冷たいと普通は感覚が鈍るもんなのに美味しいって感じるなんて奇跡だよ!
味覚障害があったって言ったでしょ?
その影響なのか、加工した後の酸味って不自然に感じて警戒しちゃうんだよね。
酢飯駄目だし。」
「じゃあ寿司食べれないの!?」
「うん、無理。
多分組み合わせが最悪。
生魚+酸味って即腐敗のイメージに繋がっちゃうの。」
「じゃあここの果物は!?大丈夫なの!?」
「覚悟してれば大丈夫。
果物は最初からある程度酸味もあるし。」
「もしかしてミルクが美味しくなればアイスクリーム作れたりする?」
「無理だと思う。
アイスクリームの作り方は知ってても牛乳から生クリームを作る方法知らないし、そもそも卵を生で食べられないと駄目なの。
ここでは卵食べないんだって。
食べる習慣がないってことは私達が食べてたのは産みたての有精卵。
そんなの知らなかったからガレットもどき作った時はちょっと半熟にしちゃったけど、食中毒が怖くてもうあれも二度と作れない。」
「まじかよ……」
「そう。だからアイスは無理そう。」
「……じゃあミルクシャーベットは?
あれってコクがないから生クリームいらないんじゃない?」
「それなら作れると思う。
でも牛乳がアレだからね。
あっ!!!
それなら豆乳シャーベットが作れるかも!
……駄目だ、大豆がわかんないんだった。」
「優汰に頼もう。」
「なんか、あっくん必死?
もしかしてあっくんもアイス系好きだった?」
「俺はそんなにだけど、そんなに好きならしーちゃんに食べさせてあげたい。
それに豆乳作れれば絢音の栄養面の心配も解決するしね。」
「そうだったね!
色んなことがありすぎて思いついてもすぐ他のことに気を取られちゃうよ。」
「しーちゃん、ここで米って炊ける?」
「そっか!パンしか出てこなかったけどお米あるなら食べたいよね!」
「うん。塩もあるからオニギリがいいなぁ。」
「いいねそれ!
うーーーん…蓋さえなんとか作れればフライパンでも炊けるけど、古代米は触ったことないからなぁー。」
「フライパンで!?
……しーちゃんて本当に凄いね。」
「お金なかったからね。
調べて色々やってた。
そういえばあっくんは食事足りてるの?
かなりお肉の量は食べてるけど、好きな食べ物あったりする?」
「うーん、正直言うとカロリーが足りてないんだよね。
味はさ、食べられないくらい不味くなければ何でもいいんだ。
そういう生活を紛争地帯で長く続けてきたしね。
此処での食事に肉は足りてる。
圧倒的に足りないのは脂質。
脂肪がなくて筋肉ばっかりつけると見た目がちょっと…ね。」
「見た目の問題なの?」
「しーちゃんはボディビルダーの身体見たことある?」
「直接はないけど、TVではあるよ。」
「俺は気を抜くとあーゆーふーになるんだよ。
………気持ち悪くない?」
「キモ!?えっ!!??
あっくんて筋肉好きかと思ってたけど違うの!?」
「あの筋張った見た目と浮き出た血管が嫌いなんだよ。
筋肉と血管に直接肌が張り付いてる感じがどうにもゾワゾワするっていうか…
まあ、そこまでいくには普通の人は苦行とも言える食事制限とトレーニングが必要なんだけど。
丸みが無いとしなやかさがないでしょう?
俺は脂肪込みの丸い筋肉が好きなんだ。
で、どういう訳か俺は普通では考えられないくらい筋肉がつきやすい。
そして極端に落ちにくいんだ。
だから俺は大したトレーニングもしてないのに筋肉落ちてないでしょ?
でも丸みがね……減ってきてる。
維持の為の肉は欠かせないけど、それより俺の体質で問題なのはカロリー摂取量なんだよね。
肉以外での食事の拘りも制限もしてなかったんだけど、丸みを維持するために大して好きでもない板チョコを寝る前に五枚胃袋に詰め込んだり、激甘の生クリームを直で食べたりしててさ…
俺にはそっちの方がよっぽど苦行だった。
それに体脂肪が減りすぎると免疫力が低下して体調崩しやすくなるしね。」
「すっごい拘りがあるんだね……」
まさかの事実発覚だ。
甘い物を食べるのが苦行だなんて、世の女子達を敵に回す発言だよ!?
応援ありがとうございます!
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