Re:Blue

伊佐ヅカ

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第三話:Blue Dive

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「きよ先生、今日は先生の好きなアジフライだよ。」

ふふんと得意げに笑うと、我妻は遠慮なく僕のワンルームアパートへ上がり込む。
どうやら、僕のところがお弁当配達ルートの最後らしい。
いつもジュースかお茶を飲みながら、僕が食べ終えるまで世間話をしながら見届けてくれている。

我妻のお弁当は、いつも温かい家庭の味だ。
島で水揚げされた新鮮な魚介類を中心に、季節の野菜を使った副菜にも手が掛かっている。

 初めは我妻のお母さんが作ってくれたお弁当だと思うと残せなくて、何とか胃に詰め込んだ。
しかし、今ではぺろりと食べきることが出来るようになった。
何より料理を美味しいと感じる。

「ありがとう。こんな立派なアジフライ…すごいよね。」

我妻から受けっとったお弁当の中心に、ババンと鎮座していた。
それは本当に鯵なのか疑いたくなるような、大きさで肉厚。

「今日、フライを作ったのは俺なんだ。また、感想聞かせてね。」

花のような笑顔で、ダブルピースをわちゃわちゃしてお道化た。

我妻とは良好な関係が築けている。
学校では、生徒と教師としての距離感をきちんと保ってくれているからだ。

それなのに、こうしてアパートに上がり込んできても、何故か不快じゃない。

適度に踏み込んで、でも決して越えてこない――。その加減が、どこか心地よかった。


「そういえば、もう島は見て回った?」


島へ来て既に二か月。
僕は過去に引っ張られる隙が無い程に、仕事に没頭していた。
これでもかという程に、受験対策用のプリントや小テストを作りまくった。
帰ったら、我妻の弁当を食べて、寝たら終わりだ。
そして、土日の休みは、そんな過労気味の身体を労わるように寝て過ごす。
毎日欠かさず届けられる、我妻のお弁当だけが生命線だ。

「本当にきよちゃんて、駄目な大人だ。」

休日の夕方に、寝起きの僕を見て、我妻は目を真ん丸にして驚いていた。

「昼から飲んだくれている漁師のおっちゃんはよく見るけど、きよちゃんは不健康の路線が違う。」



そんなことがあったから、気を使わせているのかもしれない。
我妻と自分用のコップへ麦茶を注ぎ、アジフライを頬張る。
我妻が作った料理だからか、食べる僕を目を細めて嬉しそうに眺めている。

「僕の土日の過ごし方、知ってるだろ?」

「ずっと寝ているなんて、もったいないよ。次の土曜日、おがさわら丸の見送りに一緒に行かない?」

そう、学生の頃は僕も知らなかった。
社会人になって、睡眠時間を確保することの大変さを。

「いいよ。…ねて…」

寝ていたいから、とお断りをする言葉の、「いいよ。」に脊髄反射で反応して、我妻は僕の手を両手でがっちり包み込んだ。

「嬉しい!!是非、一回先生に見せたいと思っていたんだ。だって先生、最近ちょっと元気ないからさ。」

嬉しそうにブンブンと振られる大型犬の尻尾が見えそうなほどに、嬉しいのオーラが全身から出ている。
そんな顔で心配されたら、今更違うとは言い出せない。
喉まで出かかった、否定の言葉を飲み込む。

「???見送りって、誰を見送るの?僕、見送るような知り合いはいないけど…。」

「うちに宿泊中だったお客さん。父島の見送りって、盛大で結構有名なんだ。」

「それは僕が行っても、いいものなんだろうか。」

「知り合いじゃなくても、一生懸命見送られて、悪い気はしないでしょう?」

「………。」

…そういうものなのか。釈然としないまま、了承してしまった手前、土曜日に我妻と出掛けることになった。


六月の第三土曜日ー。
内地との違いを実感する前に、既に梅雨が明けたといわれて驚いた。
燦々と照り付ける太陽。
からりとした海風に吹かれる、ひめつばきの白い小さな花たち。
日中の気温は二十七度を超え、既に夏日でつらい。
思い起こせば、先月のゴールデンウイークに海水浴をしている子供を目撃した気がしていた。
適当なベージュの半ズボンに白のTシャツという、ダラダラした格好。
それでも、迎えに来た我妻は嬉しそうに、僕を港へと引っ張っていく。

港は既にごった返していた。
スーツケースを抱えた観光客。
応援幕のような、各業者のロゴが入った旗を広げて見送る宿泊業者やツアーガイド業者。
中央にはいくつかの和太鼓が置かれている。
久しぶりに間近で見るおがさわら丸は、やはり大きかった。

あの日、僕は船室でうずくまりながら、ただ窓の外に揺れる波を見ていた。
過去を捨てるために、この船に乗ったはずだった。

けれど、あれから二か月。

何一つ捨てきれていないまま、ただ時間だけが過ぎていた。
このままじゃ駄目だ。


「きよ先生、俺達はこっちで見送るんだ。」

我妻はフェリー乗り場を抜けると、ずんずんと進んでいく。

「俺達?」

唯斗ゆいと萌咲もえも、そこの防波堤の灯台から見送るんだよ。」

唯斗と萌咲と呼ばれた二人も、父島高等学校の生徒で湊と同じ高校三年生だ。

木村唯斗の家は、イルカやクジラのツアーを行うクルージング業者だ。
本池もといけ萌咲の家もパラセールを中心に、観光ツアーを請け負う業者と聞いている。

産業が限られる父島では約三割が公務員で、約二割が観光業だ。


フェリー先端の、丁度真正面から全体を見渡せる位置に、灯台はあった。
そこにも数十人の旗を抱えた業者と思われる人がおり、その中に見知った後ろ姿があった。

「おー、湊。」

「湊っ!!」

我妻に気が付いた二人は同時に声を上げる。
本池は我妻への好意が全面に出ていて、隠そうともしない。
学校でも態度は変わらない。

熱烈に気持ちを伝えても、我妻が相手にしないという関係は中学からずっと続いているらしく、本池の態度について、いまさら誰も何も言わない。

たった十五人しかいない同級生の中では、萌咲の“湊好き”は、もはや挨拶のようなものだ。

誰もが「どうこうならない」とわかっていて、それが空気のように定着していた。

「うぉ、きよ先生…。」

我妻の後ろにいた僕に、木村が気が付いて低い声が漏れる。
まぁ、休みの日まで教師の顔なんて見たくないだろうよ。

木村の顔は嫌そうに歪められていた。

「きよちゃん、マジ休日一歩も部屋から出ないんで、連れて来た。」

「えー、何で湊がきよ先生の世話を焼いてんのよ。」

「生活能力が皆無だから?」

生活力皆無……我妻からの評価が痛い。

いやいや、やろうと思えば全部一人で出来るよ。
これまで、料理、洗濯、掃除もそれなりにこなしてきた。

……でも、そうかもしれないな。
好かれたくて、必要とされたくて、あの人のためなら何だってできた。
今はもう、誰のためでもないから——やる気が起きないだけだ。


「あー、きよ先生って生気ない感じだよね。」

「それな。授業はわかり易いけど、目の前にいる人間の気がしねぇー。有料のオンライン授業受けているみたい。」

生徒のリアルな感想に、打ちのめされる。
一生懸命よりよい授業を作っているつもりで、現実から目を逸らすための作業だった。
そんな僕の心内を、生徒である二人は敏感に見抜いていた。

「もっと力抜いたら?ここにはヤバイ親も煩い教育委員会もいないんだからさ。」
「モンペ?ああ、内地とか親ヤバそう。」

本池は無邪気に、ドラマで見たモンスターペアレントの話を木村へ語っていた。

「ってか、きよ先生。古典って必要ですか?…古典の時間、別の教科の勉強がしたいんですけど。」

木村は進学志望だ。偏差値の高い国公立を希望している。

「古典なんて、社会に出て使わないじゃん。特に私、看護学部希望なんでマジで使わない。」

本池の言わんとしていることは、よくわかる。

「大学入学共通テストの国語の問題。四分の一が古典から出題される。漢文も四分の一。捨てるにしては、大きすぎないか?」

「……半分なんだよな。」

「現代文が難しいのきたら、終わりじゃん。」

社会に出る前のハードルとして聳え立つ、大学入試に古典は必要だ。
日本文化に少し深く携わろうとすると、案外すぐに古語にぶち当たる。
本当は、学生のうちに古典に興味を持ってもらえるのが有難いが、受験生を前に悠長なことは言ってられない。

「やっぱ、やるしかないのか。」

「マジかー。」


文法も独特の言い回しも、掴んでしまえば難しくないのだが、興味がないとその水準へ至るのが難しいのもまた事実。

「湊はいいよね。実家に就職するんだろ。」

「まーね。俺、この島好きだし。きよ先生の古典、のりじぃの古典よりわかり易いけど。」

のりじぃというのは、僕の前任で昨年度定年退職された先生のようだ。
そうか、我妻は成績が良いのに就職希望なのかと、その時は漠然と思った。

「湊、のりじぃの授業は寝てたけど、きよ先生のは起きてるんだ?」

揶揄う本池の声に、どやっと褒めて欲しそうにこちらを見て我妻が微笑む。
いや、生徒として授業を聞くのは当たり前だぞ。
でも、熱心に聞いてもらえていると知って、悪い気はしない。


ドンドンとけたたましく和太鼓が鳴り、声援のような声が聞こえる。
ゆっくりとフェリーは動き出し、少しずつ岸から離れていく。

「またねー。」

「また来てねー。」

という声と共に、島の皆が一斉に手を振る。

「ここでは、さよならって言わないんだ。行ってらっしゃい、また来てねって言うんだよ。」

我妻が港から手を振る人を見て、そう教えてくれた。

ああ、なんて優しいルールなんだろう。
島を出るという行為は同じなのに、掛ける言葉一つで、別れは旅立ちに変わる。

十年一緒にいたのに、結局別れの言葉はなかったな…。

フェリーが灯台へ近づくと、周囲の島民たちは次々に防波堤からアクロバティックに飛び込んでいく。
それを甲板から見ている人々は、ヒューっと嬉しそうに囃し立てる。

「ちょ、これってまさか…。」

「ほら、きよちゃん。一緒に飛び込むよ。」

差し出された我妻の大きな手。
完全な確信犯なのに、目尻が下がった嬉しそうな顔で微笑む。

防波堤から海面までは三メートル。
飛び込めない距離ではないが、真っ青に透きとおる海は、透明度が高すぎて逆に深さが全く読めない。

隣にいた木村と本池は、慣れた様子で奇声を上げながら、一回転を披露して飛び込んでいった。


ああ、次は僕の番だ。

緊張で心音が耳元から聞こえるようにドクドクいっている。

……あの日、達臣とちゃんと別れの言葉も交わせなかったくせに。
捨てたはずの全部が、まだ心のどこかで澱みのように沈んでいる。

でも、この島で初めて「またね」って言葉を聞いた。
行ってらっしゃい、と笑って背中を押してくれる声が、胸の奥を揺らした。

——もう一度、ちゃんと前に進んでみよう。

その一歩を踏み出すように、僕は走り出した。

ぐっと伸ばした手が、湊の手に触れる。  
思っていたよりも温かくて、驚くほどしっくりきた。  
そのまま、湊の手をぎゅっと掴んで、思いきり跳ねる。

「うわっ、きよちゃん!?」

湊の驚いた声が背中を押すように響き、僕らは一緒に、澄み切った海の中へと飛び込んだ。

海は想像以上に冷たく、深く、そして澄んでいた。

ポコポコという真っ白な空気の泡に揉まれながら、海中から見上げた太陽は屈折してキラキラと輝いている。
水の浮力によって重力から解放され、全てが軽かった。

初めて見る色とりどりのサンゴ礁の上を揺蕩う。

突如、逞しい腕が僕の腕を掴むと、海面へ引っ張り上げた。
掴まれた感触の強さと、思ったよりもずっとあたたかな体温に、幻想のような世界から現実へと引き戻される。

「きよちゃんっっ!」

ぎょっとした我妻に抱きしめられて、驚く。


「急に自分から飛び込むから、…びっくりして。」


湊の声が震えている気がして、少し申し訳なくなる。

「ははっ、やっぱりまだ水は冷たいや。」

びしょ濡れで張り付いたTシャツ越しに、熱い我妻の体温が伝わる。

「どうして、急に。」

「あー、またねっていい言葉だと思って。」

「???」

「何て表現したらいいんだろう、前向きに考えるって大事だなって痛感したっていうか。少しは、前向きに考えてみようかと…。」

「よくわからないけど、いいことじゃん。」

湊は笑いながら、でもどこか、視線が泳いでいる。

「……きよちゃん、今、自分から……俺の手、握ったよね。」

小さく呟いたその声は、波の音にかき消されそうだった。

気のせいかもしれない。
でも湊の心の奥に、何かが、確かに落ちた。

「うん。…って、海、深いって!」

「俺の後ろ、岩場の階段あるから! 先生、こっち!」

湊の声が少し高くて、耳まで赤く見えた。



気が付いたら、フェリーはずいぶん沖の方に移動している。
船団ともいえそうな、多数の漁船やクルーザーがフェリーに並走し手や旗を振っている。

「ああ、確かに盛大な見送りだった…。」

これは有名になるなと、防波堤から眺める。

「きよ先生。ナイス、ダイブ!」

木村と本池もびしょ濡れで笑っていた。

「俺達が卒業して、島を出る時も、ちゃんと見送ってくれよな。」

そう言われて、実感する。

この子達は、あと数ヶ月で島を離れるのだと。
それは内地の卒業とは比べ物にならない程に、重く感じた。


フェリーが見えなくなっても、海には手を振っていた人たちの熱が残っているようで。
潮風と太陽のあいだに、まだ鼓動が微かに揺れていた。

「……今日の先生、なんか…ちゃんと、生きてるって感じがした。」

湊の声は、海風に溶けるようにか細くて。
けれどその言葉は、不思議と心の奥に残った。

それが何を意味するのか、僕はまだ、よく分かっていなかったけれど。

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