【完結】今日も女の香水の匂いをさせて朝帰りする夫が愛していると言ってくる。

たろ

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アッシュの言い訳。②

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僕は探し回った。

ユウナは仕事で遠くに行ったと近所の人には話して、いつでもユウナが戻ってこれるようにした。

仕事が終わってから街中を探して回った。
どこかのレストランで働いているかもしれない。
友人にも訪ねて回った。
休みの日には少し遠出をして街中を探して回った。

だが手掛かりは見つからない。
リュウは絶対にユウナの行き先を教えてくれない。

「もう別れてやってくれ」

リュウの言葉なんか聞きたくない。

可哀想だからと同情してリリーに関わったのが一番悪いことだとわかっている。

弟みたいで可愛がっていたリリーの弟達。

僕は調子に乗っていたのか。

仕事のストレスをユウナに見せたくなくて、彼らと関わることで気分転換をしていた。

リリーのことも浮気ではないからと言い訳をしていた。
だってキスもエッチもしていないんだ。
ただの添い寝だ。

でもユウナが僕の前から出て行った時、やはり間違いだと思い知らされた。
だからユウナが出て行ってから、キスマークのことをリリーに聞きに行って以来会いに行っていない。

僕は間違えてしまった。

大切なユウナに知られたくなくて、隠した。

そしてまた出て行った。

僕は必死でユウナを追いかけたのに見失ってしまった。

急いでリュウのところへ行ってみた。

「ユウナは来てないか?」

「お前のところへ帰ったはずだが?」

「……出て行ったんだ」

「話し合いが上手くいかなかったのか?もう諦めて離婚届にサインしろ」

「いやだ!僕はユウナを愛しているんだ!」

「愛しているなら解放してやってくれ!お前は裏切ったんだろう?」

「ち、違う……」

「だったら理由を教えてくれ!」

僕はさっきユウナに話した内容をリュウにも話した。

「バコッ!」

「………っう、い、っ……」
頬をグーで思いっきり殴ってきた。

口の中が切れて血の味がする。

「おまえ、最低だな!添い寝?ユウナが他の男と添い寝してもお前は平気な訳?
許せるのか?」

「………許せない……」

「はあ?自分はよくて相手は許せない?それ完全に浮気だから!エッチしていないから浮気じゃない?ふざけんな!ここに離婚届がまだ残っている」

リュウは引き出しから離婚届を出してきて、僕にペンを渡した。

「書きたくない……」

「ふざけんな!いいから書け!」

「僕はユウナと別れない!」

リュウは今度は僕のお腹を殴った。

「いい加減に諦めろ」

「いやだ!」

「だったら何故そんな女と添い寝なんかしたんだ!香水の匂いをつけてキスマークだと?ふざけんな!」

「………悪いことをしていると思っていなかった」

「お前は馬鹿か?いや馬鹿なんだ」

「……ユウナを愛しているんだ」

「やり直せると思っているのか?」

「……………」

「答えられないと言うことはわかっているんだろう?」

「………………」

「もういい。俺はユウナが心配だから探しに行く」
リュウは僕を冷たい目で一瞬見るとそのまま去って行った。

わかっている、もう駄目なことは。

浮気じゃない……認めると別れないといけない。

だから自分に言い聞かせていた。

リリーに惹かれていたのかもしれない。

必死で働く彼女に同情していた。

でもユウナのことを愛していたから一線だけは超えないようにしていたつもりだった。

僕はユウナを探しに行く事はできなかった。

もうユウナは僕に会いたくはないだろう。

この離婚届にサインするのがユウナへの罪滅ぼしなんだとわかっていた。

そしてサインした離婚届をポケットに入れてリュウの家を出た。

街をぶらぶら歩いた。

行く当てはなかったけど、僕が探してはいけないけどユウナの姿をつい人混みの中で探してしまう。

薄暗くなった街の中、街灯と店の明かりの中で、ユウナの姿を探した。

ポケットに入った離婚届を握りしめながら、ユウナが働いていたレストランへ足が向かっていた。

「アッシュ?」
聞き覚えのある声が聞こえた。

思わず振り向くとそこにはリリーが立っていた。

「リリー?」

「アッシュ……どうして会いにきてくれないの?弟達も寂しがっているのよ」

「………もう会いにはいけない……君との関係も続けるべきではなかった。へんに同情をして誤解させてごめん。僕は妻を愛しているんだ」

「……アッシュ……誤解?どうして?わたしは貴方を愛しているわ、奥さんがいても会いに来てくれていたのはわたしを愛していたからではないの?」

「ごめん……同情でしかなかった」

「バシッ!」
リリーの目には涙が溢れていた。

「……すまない」

リリーは僕を睨みつけて

「奥さんは出て行ったままなの?」

「………ああ」

「貴方の優しさって残酷だわ、期待させて同情?奥さんも可哀想」

リリーは呆れたように言うと去って行った。

レストランに向かうと、店の中からオーナーが現れて、冷たく言われた。
「アッシュ、もう二度と俺の前に顔を出すな」

次の朝、離婚届を役所に出すとその足でリュウに手紙を書いた。

離婚届を出したことを知らせるために。

そしてひと月後、僕は街を出た。






◆ ◆ ◆

皆様ご感想ありがとうございます。

最低浮気野郎を軽く書いていたらとてもすごく反応があり驚いています。

お怒り、気持ち悪い、ご意見ありがとうございます。
作者も書いていてそう思いました。(ーー;)

この後、話がユウナに戻り、✖️ ✖️ ✖️ ✖️になると思います。

あと少し、作者の話にお付き合いくださる皆様、よろしくお願い致します。





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