【完結】今日も女の香水の匂いをさせて朝帰りする夫が愛していると言ってくる。

たろ

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あのヤロウ、ただじゃおかない!

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気がつけば生まれ育った場所に来ていた。

もう自分が住んでいた家はない。

古くなり取り壊されている。

お兄ちゃんとの思い出も家族との大切な思い出ももうここにはない。

そして……アッシュと過ごしてきた思い出ももう消えて無くなっている。

わたしは空き地に座り込み蹲り泣いた。

何が添い寝しただけ?
入れてない?

気持ち悪い、わたしとアッシュの過ごした時間は何だったの?

「………ユウナ?」

薄暗い空き地で泣いていると、聞いたことのある声が聞こえてきた。

「……おばちゃん?」

アッシュのお母さんだ。

普通ならお義母さんと呼ぶべきだけど、言い慣れてしまった呼び方を今更変えにくく、ずっとそのまま呼んでいる。

「アッシュの浮気で出て行ったと聞いていたんだ……そんなところで泣いているのはアッシュの所為?」

わたしはおばちゃんに抱きついてわんわん泣き続けた。
アッシュのお母さんだけど、わたしにとっては本当のお母さんのような人だ。

「わたしの家においで」

わたしはそのままおばちゃんに連れられて家に入った。

おじちゃんも居てわたしの泣き顔を見て驚いていた。

「ユウナ……アッシュか?あいつがお前を泣かせたんだろう?」

わたしはおばちゃんからミルクたっぷりのホットココアをもらい、フーフーして冷ましながらゆっくりと飲んだ。

とってもあったかくてホッとしたら、また涙が溢れてきた。

「っう、ぐしゅっ……」
は、鼻水が……

おばちゃんは「ほら鼻水拭いて」と笑いながらわたしにハンカチを手渡してくれた。

「ユウナ、あんな奴もう別れろ!」
おじちゃんは物凄い怖い顔をしながら言った。

「うん、離婚届10通渡してきた」

「10通?」

「うん、破って捨てられた時用に……」

「はあ、あと何枚か役場に行ってもらってこよう。ここにも予備を置いておけば破られても安心だ」

「ぶはっ!」
わたしはココアを吹きこぼしそうになった。

「おじちゃん、鼻水垂らしながら口からモノを吐いたらもうお嫁にいけなくなるわ」

「おじちゃんはそんな汚いユウナでも可愛いと思うぞ」

「ほんと?」

「ああ、アッシュの奴は馬鹿だ。こんな可愛いユウナがいながら他の女の所に行くなんて」

おじちゃん達にさっきの話をしたら、

「あいつ、ぶっ殺してきてやる!」

と、外に出て行こうとした。

「やめなさい!アッシュのことなんか放っておきなさい。どうせもうわたし達に会いにも来れないわ」

おばちゃんは悲しそうにしていた。

アッシュはおばちゃんにとっては大切な息子。

「あいつは、あいつは、馬鹿なのか?」
おじちゃんは馬鹿を連番していた。

「ユウナが出て行ってからアッシュは一度だけうちに来たの、ユウナが来ていないかって……何度聞いても事情を説明してくれなかった。でもあの子がわたしから目を逸らすように話すから原因はアッシュだってわかったの……」

おばちゃんは深い溜息を吐きながら言った。

「『もしあんたが不貞を働いたのならもうここには二度と顔を出すな、理由も言えないということはあんたが悪いんだろう?』って言ったんだ。でもあの子は『違う』って否定したんだ」

「おばちゃん……わたしはアッシュと離婚するけどおばちゃん達にとっては大切な息子だよ?駄目だよ、縁は切らないであげて!」

「ユウナだってわたし達にとっては大事な娘だよ、それをこんな形で傷つけたんだ、許せない」

おばちゃんの気持ちはとても嬉しい。
でもわたしには親がいないから、だからこそ縁を切ったりしないで欲しい。


「アッシュは優しいの、優しすぎるの。頼られると馬鹿だから何にも考えないで行動してしまうの。今回のことは許せないけど……許さないけど、おじちゃんとおばちゃんだけは許してあげて欲しい」

「そんなことしたらユウナにおばちゃん達は会えなくなる」
「そうだ、お前も俺たちの娘なんだ」

「おじちゃんおばちゃん、ありがとう。アッシュと別れても手紙は書くし会いに来るから……二人はわたしの親だと思ってるの」

「………わたし達がアッシュを許せる時がきたら受け入れる。それでいい?」

「うん」

わたしは一晩おばちゃんのところに泊めてもらって、朝早くにこの街を出ていくことにした。

わたしが今帰る場所はあの騎士団の寮だ。

数ヶ月しか過ごしてないけど、みんな優しくてあったかい人達。

一緒に働いているヘリーさんとリオナさんとのおもしろくて楽しい会話を思い出す。

少しお調子者が多いけど、力仕事はすぐに手伝ってくれる騎士さん達。
幼馴染でもいつもわたしの様子を心配してくれるロリー。
わたしが落ち込んでいたり悩んでいると、話を聞いてくれる団長さん。

今はみんな優しいあの職場に戻りみんなの笑顔がみたい。

わたしは馬車を乗り継ぎわたしの居たい場所へと急ぎ帰った。

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