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厨房の中は好奇心の塊だった。
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厨房の中は好奇心の塊だった。
わたしはもちろんヘリーさんもリオナさんもそれからおばちゃん達もみんなアッシュとリリーとロリーを見ていた。
そう、こっそりと仕事の手を止めて。
息を殺しながら。
わたしは焦げてしまいそうなシチューの火を慌てて消した。
よし!これで夕食のおかずは死守できた!
そして三人を目で追う。
「アッシュ、久しぶり」
リリーはアッシュを見て抱きつく。
ーーそれを見た厨房の人たちは小さな音でゴクっと唾を飲む。
アッシュは慌ててリリーを引き離した。
「やめてくれ!どうして此処がわかった?」
「知り合いがアッシュが此処に就職したと教えてくれたのよ」
「………ポールか?」
「そうよ、この前お店に来てアッシュの話になって教えてくれたの」
ーーポールとは、アッシュと同じ伯爵邸で働いていた料理人のことだ。
リリーが働く娼館に通っていたのか、嫁さんに手紙でチクってやりたい。
ーーみんなはリリーの職種もポールも知らないから??な顔をしている。
「もう君とはなんの関係もない。帰ってくれ」
「どうして?会いたかったの」
「僕が愛していたのはユウナだけなんだ!君のことは同情でしかなかった」
「だから、どんなに迫っても抱いてくれなかったの?」
「いや、全く君に対してそんな気にはならなかった、ユウナだけだったんだ。もうそれも全てなくなったけどね」
「一度は貴方にそんなことを言われたけど……貴方はやっぱりわたしのことが好きだから奥さんがいてもわたしのところに通ってくれたんじゃないの?」
ーーアッシュ、「ユウナ」って名前出したよね?
厨房のみんながわたしの顔を見ているんだけど!
バレてるじゃん!
こいつ、バカなの?馬鹿でしょう!
ーーそれに、リリー……
どうみてももう終わってるよね?
なのに会いにくるなんて……アッシュって変な勘違い女と何やってたの?やっぱりバカなんだ。
「僕は君の弟達と遊ぶのが好きだったんだ。君があまりにも落ち込んで悲しそうだったからつい同情で抱きしめたけど、それだけだ」
「朝までそばに居てくれたじゃない」
「君が泣いて僕に抱きついて離れないから仕方なく同じベッドに寝かせてただけだ、君に対してなんの感情もない、愛していたのはユウナだけだ」
「そんな……だったら引き離せばいいじゃない!」
「すまない、突き放せなかった俺が悪い」
「ひどい、その気にさせて!」
「僕は何度も愛するユウナがいるから君のことはなんとも思っていないと言ったよね?愛しているのはユウナだけだから」
「それでも抱きしめてくれたは、何度も」
「いや、抱きしめたんではなくて抱きついて来たんだろう?だから仕方なく添い寝して君が離れたら家に帰っていたんだ。おかげで浮気夫になって別れたけどね。親からも縁を切られたし、友人達もみんな僕から離れてしまった。だから新しい場所で仕事を始めたんだ。まあ、まさか幼馴染のロリーがいるとは思わなかったけど」
ーーえ?ロリーのことも知らなかった?
まさかわたしが此処にいることも知らないとか?
そこまで馬鹿じゃないよね?
わたしは口を押さえて黙って話を聞いていた。
もちろん厨房のみんなも……
するとロリーが初めて二人に対して口を開いた。
「アッシュ兄、それでもユウナに黙ってこの変な女に会っていたんだ、それも抱きしめて添い寝?それは十分浮気だからね?それにあんたさあ、こんな所まで押しかけて一体何をしたいの?」
ーーいや、言ったわ!変な女ってハッキリ!
ロリー、あんた最高!
わたしは拳をギュッと握りしめて、オッシャァ!
と小さく呟いた。
すると周りも「うんうん」と頷いてくれていた。
みんなの生温かい目が、ちょっとあとで怖いけど。
リリーは、
「はあ?あんた誰?何失礼なこと言ってるの!」
段々綺麗な女性からちょっと怖いお姉さんへと変わっていく。
アッシュはロリーを見て言い訳を始めた。
「ユウナには悪いことをしたと思ってる。今さら謝っても許されない。でも、自分の仕事のイライラを家に持って帰りたくなくて知り合ったリリーの弟達と過ごすことで癒されていたんだ。リリーとは変な関係になったけど、変な気持ちになっても抱きたいとは思わなかった。やっぱりユウナだけを愛していたんだ」
「ふうん、でも、それはユウナへの裏切りでしかないよ」
「うん、だから、もうユウナに会おうとは思わない。ユウナには幸せになって欲しい」
「な、何言ってるの?ユウナ、ユウナって!あたしは幸せになれないの?アッシュ、あなたに会いに来たのよ!わたしはどうするの?」
ロリーはリリーを見て冷たい一言を言った。
「いや、あんた、邪魔だから」
「わたしはアッシュに会ってもう一度やり直してあげようと思ったのよ!」
アッシュもリリーに向かって言った。
「いや、必要ないから」
リリーは、体をぷるぷる振るわせて、真っ赤になって怒鳴り上げた。
「せっかく来てあげたのに、何その態度!もう二度と相手になんかしてあげないから、帰るわよ!後悔しても知らないからね!」
ロリーとアッシュは二人揃って
「「早く帰れば?」」
と扉を指さして言った。
リリーは扉をバン!!と、大きな音を立てて帰って行った。
ーーこ、こわ、すぎる……
厨房の中ではみんな顔を見合わせて、「ふー」と大きく息を吸い込み
「ねえねえ、すごかったわね、あの勘違い女」
「いやあ、ロリー見直したわ。いつもにこにこしてるだけの可愛い子なのに」
「アッシュって、あの女に騙されていたバカ男?」
「ユウナってやっぱり……」
みんなが私の顔を一斉に見た。
「………はあー、………は、はい」
わたしは渋々頷いてみせた。
わたしはもちろんヘリーさんもリオナさんもそれからおばちゃん達もみんなアッシュとリリーとロリーを見ていた。
そう、こっそりと仕事の手を止めて。
息を殺しながら。
わたしは焦げてしまいそうなシチューの火を慌てて消した。
よし!これで夕食のおかずは死守できた!
そして三人を目で追う。
「アッシュ、久しぶり」
リリーはアッシュを見て抱きつく。
ーーそれを見た厨房の人たちは小さな音でゴクっと唾を飲む。
アッシュは慌ててリリーを引き離した。
「やめてくれ!どうして此処がわかった?」
「知り合いがアッシュが此処に就職したと教えてくれたのよ」
「………ポールか?」
「そうよ、この前お店に来てアッシュの話になって教えてくれたの」
ーーポールとは、アッシュと同じ伯爵邸で働いていた料理人のことだ。
リリーが働く娼館に通っていたのか、嫁さんに手紙でチクってやりたい。
ーーみんなはリリーの職種もポールも知らないから??な顔をしている。
「もう君とはなんの関係もない。帰ってくれ」
「どうして?会いたかったの」
「僕が愛していたのはユウナだけなんだ!君のことは同情でしかなかった」
「だから、どんなに迫っても抱いてくれなかったの?」
「いや、全く君に対してそんな気にはならなかった、ユウナだけだったんだ。もうそれも全てなくなったけどね」
「一度は貴方にそんなことを言われたけど……貴方はやっぱりわたしのことが好きだから奥さんがいてもわたしのところに通ってくれたんじゃないの?」
ーーアッシュ、「ユウナ」って名前出したよね?
厨房のみんながわたしの顔を見ているんだけど!
バレてるじゃん!
こいつ、バカなの?馬鹿でしょう!
ーーそれに、リリー……
どうみてももう終わってるよね?
なのに会いにくるなんて……アッシュって変な勘違い女と何やってたの?やっぱりバカなんだ。
「僕は君の弟達と遊ぶのが好きだったんだ。君があまりにも落ち込んで悲しそうだったからつい同情で抱きしめたけど、それだけだ」
「朝までそばに居てくれたじゃない」
「君が泣いて僕に抱きついて離れないから仕方なく同じベッドに寝かせてただけだ、君に対してなんの感情もない、愛していたのはユウナだけだ」
「そんな……だったら引き離せばいいじゃない!」
「すまない、突き放せなかった俺が悪い」
「ひどい、その気にさせて!」
「僕は何度も愛するユウナがいるから君のことはなんとも思っていないと言ったよね?愛しているのはユウナだけだから」
「それでも抱きしめてくれたは、何度も」
「いや、抱きしめたんではなくて抱きついて来たんだろう?だから仕方なく添い寝して君が離れたら家に帰っていたんだ。おかげで浮気夫になって別れたけどね。親からも縁を切られたし、友人達もみんな僕から離れてしまった。だから新しい場所で仕事を始めたんだ。まあ、まさか幼馴染のロリーがいるとは思わなかったけど」
ーーえ?ロリーのことも知らなかった?
まさかわたしが此処にいることも知らないとか?
そこまで馬鹿じゃないよね?
わたしは口を押さえて黙って話を聞いていた。
もちろん厨房のみんなも……
するとロリーが初めて二人に対して口を開いた。
「アッシュ兄、それでもユウナに黙ってこの変な女に会っていたんだ、それも抱きしめて添い寝?それは十分浮気だからね?それにあんたさあ、こんな所まで押しかけて一体何をしたいの?」
ーーいや、言ったわ!変な女ってハッキリ!
ロリー、あんた最高!
わたしは拳をギュッと握りしめて、オッシャァ!
と小さく呟いた。
すると周りも「うんうん」と頷いてくれていた。
みんなの生温かい目が、ちょっとあとで怖いけど。
リリーは、
「はあ?あんた誰?何失礼なこと言ってるの!」
段々綺麗な女性からちょっと怖いお姉さんへと変わっていく。
アッシュはロリーを見て言い訳を始めた。
「ユウナには悪いことをしたと思ってる。今さら謝っても許されない。でも、自分の仕事のイライラを家に持って帰りたくなくて知り合ったリリーの弟達と過ごすことで癒されていたんだ。リリーとは変な関係になったけど、変な気持ちになっても抱きたいとは思わなかった。やっぱりユウナだけを愛していたんだ」
「ふうん、でも、それはユウナへの裏切りでしかないよ」
「うん、だから、もうユウナに会おうとは思わない。ユウナには幸せになって欲しい」
「な、何言ってるの?ユウナ、ユウナって!あたしは幸せになれないの?アッシュ、あなたに会いに来たのよ!わたしはどうするの?」
ロリーはリリーを見て冷たい一言を言った。
「いや、あんた、邪魔だから」
「わたしはアッシュに会ってもう一度やり直してあげようと思ったのよ!」
アッシュもリリーに向かって言った。
「いや、必要ないから」
リリーは、体をぷるぷる振るわせて、真っ赤になって怒鳴り上げた。
「せっかく来てあげたのに、何その態度!もう二度と相手になんかしてあげないから、帰るわよ!後悔しても知らないからね!」
ロリーとアッシュは二人揃って
「「早く帰れば?」」
と扉を指さして言った。
リリーは扉をバン!!と、大きな音を立てて帰って行った。
ーーこ、こわ、すぎる……
厨房の中ではみんな顔を見合わせて、「ふー」と大きく息を吸い込み
「ねえねえ、すごかったわね、あの勘違い女」
「いやあ、ロリー見直したわ。いつもにこにこしてるだけの可愛い子なのに」
「アッシュって、あの女に騙されていたバカ男?」
「ユウナってやっぱり……」
みんなが私の顔を一斉に見た。
「………はあー、………は、はい」
わたしは渋々頷いてみせた。
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