【完結】今日も女の香水の匂いをさせて朝帰りする夫が愛していると言ってくる。

たろ

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え?それは……でも。

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辞めたいと言ってからもわたしはまだ侯爵家で働いている。

周りのみんなも親切だし、みんなと仲良くなったし、やっぱり居心地がいい。
団長さんとはやはりぎこちないけど、お互い無視することもなく差し障りのない程度の話はしている。

ロリーは「もうしばらく待って」と言ってわたしが辞めることを止めている。
おかげで辞めようと思っていたのに、最近はどうしようかと迷い始めている。

ヘリーさんとリオナさんと買い物に出かけたりランチに行ったりするのも楽しいし。

やっと気持ちが落ち着いてきた頃にロリーから話があると呼び出された。

仕事が終わりいつもの庭のベンチに行くと……

ーーうっ、なぜ団長さんが?
ロリーと二人で立っていた。

「ユウナ!遅かったね」
ロリーがわたしに気がついて声をかけてきた。

「ご、ごめんなさい。片付けが多くて時間が長引いてしまったの」

言い訳をしながらも隣にいる団長さんが気になる。

ーーなぜ?どうして?ここに居るの?

「ユウナ、もう一度だけ団長と話してみない?」

「俺がロリーに頼んだんだ、もう一度だけユウナと話したいと」

「………」
なんと返事をしていいのか分からず答えに窮していると

「オリヴィアのことなんだが、あれからきちんと話してもう会わないと伝えた。もちろんそのまま放っておくことは流石に出来ないから、弁護士を紹介したんだ。アレの実家は商家で弁護士料くらい払えるから金の心配はいらない。
最初からそうすれば良かったのについ相談に乗ってしまった」

「……そうですか」

ーー今更言われても断ってもう終わったのに。

「俺はユウナのことが好きだった。俺のせいでこの職場を辞めていくのは考え直して欲しい」

「でもお互い居づらいのでは?」

「大丈夫だ、俺は配属が変わり王都にある侯爵家の本家に配属が変わる。次の団長は副団長がなる」

「え?」

「元々向こうにと話があったんだ、ずっと断っていたが今回受けることにした」

「それは……わたしの所為ですか?」

「違う、きっかけではあったが向こうに行くのは俺にとって栄転であって悪いことではないんだ。ただ生まれ育ったこの土地から出る踏ん切りがつかなかっただけなんだ」

「それなら良かったです」
団長の一言でわたしは少しホッとした。

「ただ、きちんとユウナに別れを告げたかったんだ」
団長さんのその言葉に泣きそうになった。

わたしは振って気不味くて……なのに団長さんは前に進んでいたんだ。

「団長さんお世話になりました」
わたしは頭を下げてそのまま頭を上げることはできなかった。
だって涙が出て、どうしてもこの顔を見せられなかったから…
それに気がついた二人は何も言わずにいてくれた。

「ユウナありがとう」

団長さんはわたしのそばを離れて行った。

今追いかけたらもしかしたら受け入れてくれますか?

喉まで出かかったが、飲み込んだ。
自分が終わらせたのだ。

何も言わずにさよならしないと……

「わたしの方がたくさんお世話になりました。ありがとうございました」

泣いているのを悟られないように(バレているけど)必死で声を出した。

団長さんは振り返らずに帰って行った。

ロリーがわたしの顔を見て言った。

「ユウナ、追いかけなくていいの?」

「………うん、終わったことだから、今更自分の気持ちに気がついても仕方がないよ」

「後悔しないの?俺は団長が必死で元妻さんのこと早く終わらせてユウナに会いに来ようとしているのを知っていたから、ユウナに仕事を辞めるのを待っていてって頼んだんだ。本当は団長もう一度ユウナに告白するつもりだったんだと思うよ」


「え?嘘……」

「団長が女性と会っていたのが気になって調べたんだ。そしたら元妻さんで今の旦那さんとのことで悩んでいて団長に相談していることが分かったんだ。団長も優しいから困っているのを放っておけないみたいで悩みを聞いてあげていたみたい。
そんな人放っておけばいいのにね、そこが団長のいいところなんだけどさ」

「ユウナが告白されて断ったって聞いて、団長が必死で元妻さんの問題解決しようとしていた理由がなんとなく分かった。だからユウナに待ってって頼んだんだ。団長がもう一度ユウナを諦めずに頑張ったらいいなと思ったんだ」

「ほんとは、諦めろって心の中では思ってたんだけど」
ロリーがボソッと言った呟きはわたしの耳には入っていなかった。

「ユウナ、追いかけなくていいの?」
ロリーがもう一回聞いた。

わたしは……
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