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ずっと一緒にいようよ。ロリー編
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「ロリー、おいで!」
泣き虫のおれを見捨てずに手を差し出してくれるのはいつもユウナだった。
近所の友達も周りの年上のみんなも泣き虫の俺を面倒臭いのか仲間に入れるのを嫌がった。
「ロリーも一緒じゃなきゃ遊ばない!ロリー行くわよ!」
「で、でも、ユウナが嫌われてしまう」
俺はそれが嫌でまた泣く。
泣いていると必ず
「ロリーはわたしの可愛い弟なの。泣かないで、遊んでくれないなら二人だけで遊べばいいの」
と言って俺の手を握り二人で遊ぼうとする。
すると必ずアッシュ兄とユウナの兄ちゃんが仕方なく俺たちのところに来た。
「仕方ないからロリーも入れてやるよ」
二人がそう言うと他のみんなも「いいよ」「仕方ないな」と俺を遊びに入れてくれる。
それを見てユウナはプリプリ怒るんだ。
「だったら最初から入れてくれたらいいじゃない!」
俺は知ってるんだ。
俺が泣き虫だから入れてくれないのもあるけど、ユウナが俺に構うからアッシュ兄も他の男の子達もヤキモチ妬いて俺を入れようとしないことを。
だってユウナは自覚がないみたいだけど、メチャクチャ美人なんだ。
目が大きくて鼻筋も通っていてちょっとキツく見えるけど笑うと思わず目が離せなくなるくらい綺麗なんだ。
それに怒ると怖いけどすっごい優しくて料理も上手なんだ。
裁縫も得意で服が破れるとすぐに直してくれる。
男の子達はみんなわざとに服を破ってしまう。
ユウナに縫ってもらいたいために。
でも知ってるんだ。
ユウナはどんなに俺に優しくしてくれてもそれは弟みたいだから。
好きなのはアッシュ兄なんだ。
いつも目で追ってるからわかるんだ。
アッシュ兄だっていつもユウナのことを気にしている。
二人は両思いなのになかなか素直になれない。
俺はだから仕方なく二人のキューピッドになることにした。
「アッシュ兄、俺、ユウナが大好きなんだ!ユウナと大きくなったら結婚してもらえるように言おうと思うんだ」
「泣き虫ロリーじゃ無理だよ」
アッシュ兄は不機嫌に俺に言い返す。
「でもアッシュ兄みたいにユウナに意地悪しないもん。ユウナは優しい人が好きなんだ」
「ふん!ユウナの好きな人なんかしるか!」
アッシュ兄の顔が引き攣っていた。
素直になれなくてユウナについ意地悪なことをしたり言ったりしているアッシュ兄。
ヤバいと思ったみたいだ。
俺はさらに追い打ちをかけた。
「ユウナは両親が亡くなって今は兄ちゃんと二人だろう?俺の家、娘がいないからユウナのこといつでも引き取っていいって言ってくれてるんだ。婚約者として」
これは本当のこと。
俺の家は庶民だけど、いくつかの店を経営している。
結構金持ちの坊ちゃんなんだ。
俺の住む場所は平民でもどちらかと言うと裕福な家庭が多い。
両親が揃いそれなりに落ち着いた生活をしている。
ユウナの家だって貴族の侍従をしていた父親と侍女をしていた母親と兄の四人暮らしだった。
二人の両親は馬車の事故で亡くなった。
多少の蓄えがあったからそのまま兄ちゃんとユウナは暮らし続けていたんだ。
うちの親はユウナのところと仲が良かったからいつも二人のことを心配していた。
『ロリーのお嫁さんにユウナちゃんがなってくれたらいいのに』
母さんの口癖だった。
もちろんアッシュ兄もそれを知っている。
「ユウナがお前と結婚するわけないだろう!」
顔を引き攣らせ怒って俺を睨んだ。
「わかんないだろう?だって俺今頑張って強くなろうと努力しているから」
これも本当。
いつも泣き虫でユウナに助けてもらってばかりでは恥ずかしい。
俺は剣術を習い始めた。
「ふざけんな!ユウナを守るのは俺なんだ!」
アッシュ兄が俺の服を掴んで、俺を持ち上げた。
「お前なんかにユウナは渡さない!」
「……本当?」
アッシュ兄の後ろから出てきたユウナは目に涙をいっぱい溜めていた。
「……ユウナ」
アッシュ兄は後ろにユウナがいたことに気がついていなくて、顔を真っ赤にしていた。
「俺、お前のことが好きなんだ」
ーーったく、二人のキューピッドになんかならなければよかった。
二人が恥ずかしそうに見つめ合ってる姿を見て俺の心はズキズキと痛んだ。
「俺、帰る」
◇ ◇ ◇
俺がキューピッドになってから3年後、二人はさっさと結婚した。
俺も剣術を習い出してから泣き虫ロリーから、剣術の才能があるロリーへと変わった。
侯爵家の騎士としてスカウトされて、俺はユウナ達が住む街を離れた。
二人がずっと仲良く暮らしていると思っていたんだ。
だって二人は両思いだから。
なのに、アッシュ兄の浮気疑惑を聞いた時、俺は頭にきた。
久しぶりに実家に帰って来てユウナの働いているレストランに顔を出した。
懐かしくてユウナの仕事が終わるのを待って一緒にユウナのレストランで食事をした。
その時にアッシュ兄の話しを聞いた。
「アッシュ兄に少し心配させてみたらどうだい?」
ユウナはその言葉に乗った。
そして侯爵家の騎士団の料理人として働き始めた。
まさか心配させるだけだと思ったらユウナは離婚する気満々だったとは思いもよらなかったけど。
泣き虫のおれを見捨てずに手を差し出してくれるのはいつもユウナだった。
近所の友達も周りの年上のみんなも泣き虫の俺を面倒臭いのか仲間に入れるのを嫌がった。
「ロリーも一緒じゃなきゃ遊ばない!ロリー行くわよ!」
「で、でも、ユウナが嫌われてしまう」
俺はそれが嫌でまた泣く。
泣いていると必ず
「ロリーはわたしの可愛い弟なの。泣かないで、遊んでくれないなら二人だけで遊べばいいの」
と言って俺の手を握り二人で遊ぼうとする。
すると必ずアッシュ兄とユウナの兄ちゃんが仕方なく俺たちのところに来た。
「仕方ないからロリーも入れてやるよ」
二人がそう言うと他のみんなも「いいよ」「仕方ないな」と俺を遊びに入れてくれる。
それを見てユウナはプリプリ怒るんだ。
「だったら最初から入れてくれたらいいじゃない!」
俺は知ってるんだ。
俺が泣き虫だから入れてくれないのもあるけど、ユウナが俺に構うからアッシュ兄も他の男の子達もヤキモチ妬いて俺を入れようとしないことを。
だってユウナは自覚がないみたいだけど、メチャクチャ美人なんだ。
目が大きくて鼻筋も通っていてちょっとキツく見えるけど笑うと思わず目が離せなくなるくらい綺麗なんだ。
それに怒ると怖いけどすっごい優しくて料理も上手なんだ。
裁縫も得意で服が破れるとすぐに直してくれる。
男の子達はみんなわざとに服を破ってしまう。
ユウナに縫ってもらいたいために。
でも知ってるんだ。
ユウナはどんなに俺に優しくしてくれてもそれは弟みたいだから。
好きなのはアッシュ兄なんだ。
いつも目で追ってるからわかるんだ。
アッシュ兄だっていつもユウナのことを気にしている。
二人は両思いなのになかなか素直になれない。
俺はだから仕方なく二人のキューピッドになることにした。
「アッシュ兄、俺、ユウナが大好きなんだ!ユウナと大きくなったら結婚してもらえるように言おうと思うんだ」
「泣き虫ロリーじゃ無理だよ」
アッシュ兄は不機嫌に俺に言い返す。
「でもアッシュ兄みたいにユウナに意地悪しないもん。ユウナは優しい人が好きなんだ」
「ふん!ユウナの好きな人なんかしるか!」
アッシュ兄の顔が引き攣っていた。
素直になれなくてユウナについ意地悪なことをしたり言ったりしているアッシュ兄。
ヤバいと思ったみたいだ。
俺はさらに追い打ちをかけた。
「ユウナは両親が亡くなって今は兄ちゃんと二人だろう?俺の家、娘がいないからユウナのこといつでも引き取っていいって言ってくれてるんだ。婚約者として」
これは本当のこと。
俺の家は庶民だけど、いくつかの店を経営している。
結構金持ちの坊ちゃんなんだ。
俺の住む場所は平民でもどちらかと言うと裕福な家庭が多い。
両親が揃いそれなりに落ち着いた生活をしている。
ユウナの家だって貴族の侍従をしていた父親と侍女をしていた母親と兄の四人暮らしだった。
二人の両親は馬車の事故で亡くなった。
多少の蓄えがあったからそのまま兄ちゃんとユウナは暮らし続けていたんだ。
うちの親はユウナのところと仲が良かったからいつも二人のことを心配していた。
『ロリーのお嫁さんにユウナちゃんがなってくれたらいいのに』
母さんの口癖だった。
もちろんアッシュ兄もそれを知っている。
「ユウナがお前と結婚するわけないだろう!」
顔を引き攣らせ怒って俺を睨んだ。
「わかんないだろう?だって俺今頑張って強くなろうと努力しているから」
これも本当。
いつも泣き虫でユウナに助けてもらってばかりでは恥ずかしい。
俺は剣術を習い始めた。
「ふざけんな!ユウナを守るのは俺なんだ!」
アッシュ兄が俺の服を掴んで、俺を持ち上げた。
「お前なんかにユウナは渡さない!」
「……本当?」
アッシュ兄の後ろから出てきたユウナは目に涙をいっぱい溜めていた。
「……ユウナ」
アッシュ兄は後ろにユウナがいたことに気がついていなくて、顔を真っ赤にしていた。
「俺、お前のことが好きなんだ」
ーーったく、二人のキューピッドになんかならなければよかった。
二人が恥ずかしそうに見つめ合ってる姿を見て俺の心はズキズキと痛んだ。
「俺、帰る」
◇ ◇ ◇
俺がキューピッドになってから3年後、二人はさっさと結婚した。
俺も剣術を習い出してから泣き虫ロリーから、剣術の才能があるロリーへと変わった。
侯爵家の騎士としてスカウトされて、俺はユウナ達が住む街を離れた。
二人がずっと仲良く暮らしていると思っていたんだ。
だって二人は両思いだから。
なのに、アッシュ兄の浮気疑惑を聞いた時、俺は頭にきた。
久しぶりに実家に帰って来てユウナの働いているレストランに顔を出した。
懐かしくてユウナの仕事が終わるのを待って一緒にユウナのレストランで食事をした。
その時にアッシュ兄の話しを聞いた。
「アッシュ兄に少し心配させてみたらどうだい?」
ユウナはその言葉に乗った。
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