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シャノン、ロスワート侯爵様の心を知る
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ロスワート侯爵様の話を聞いた。
今まで知らなかったことばかりだった。
わたしに会いにも来ない冷たい父親は本当は邸に帰るとわたしに会いに来ていたらしい。
ただし寝ている時限定で。
わたしが父親に対して慣れなくて泣いていたと知った時は驚いた。原因の一つはわたし自身だったのだ。
さらに喘息が出た時いつも抱っこしてくれていたのが父親だったなんて知らなかった。
苦しい時に優しい誰かが抱きしめて背中を摩ってくれていたのは何となく覚えていたのだが…あれが父だったなんて。
ラウルとの婚約も幼い頃仲良しだったからだとは思わなかった。
亡くなる前にお母様が
「大きくなったら婚約させましょうね」
と、父親に話した最後の言葉を叶えたいと思い、
本当に婚約者になったこと
ロイスとダンからも婚約の打診がきていたこと
ラウルの女性に対しての素行の悪さに気づき調査していたこと
アイリスとラウルの関係にも気づいていたこと
アイリスの違法薬物の売買のことに気づき監視していたこと
わたしが公爵家を出てからおじ様を頼って邸に来た時、本当は迎えに来てくれていたことを知って驚いた。
まさかわたしを迎えに来るなんて思いもしなかった。
いつも使用人任せで自分からわたしのために動くなんて考えられなかった。
「ロスワート侯爵様……いえ、お父様……今までのことを思うと素直に受け入れることはできません。
わたしは何度も何度も貴方に踏み躙られてきました。わたしの心は壊れてしまったのです……」
「シャノン、すまなかった」
お父様は深々と頭を下げた。
「頭をお上げください」
おじ様は怒って言ってくれた。
「シャノン嬢、別にスティーブを許してあげろとは言わない。こいつはほんとに聞いていて父親として駄目過ぎる!
ただもし良ければこいつの歪んで素直になれない哀れな男を少しだけでいいから父親として見てあげて欲しい……」
お父様は項垂れていた。
「ごめんなさい、わたしも今は素直に許してあげることはできません。ただ嫌われていなかったって知って、少しだけ心が救われました」
「……除籍のことなんだが、ラウルと離縁したあと何があってもしたいと言うならもう止めない。よく考えてから決めて欲しい。
今まで辛い思いをさせてすまなかった」
こうしてわたしとロスワート侯爵様、いえお父様との話し合いは終わった。
わたしは、離縁したら除籍してもらうことには変わりはない。
今さら許せるものでもない。
◇ ◇ ◇
ロニーに話すと、なんとも言えない顔になった。
「シャノン様、旦那様のことを黙っていて申し訳ありませんでした。
旦那様は確かに見えないところでお嬢様を大事にしていたかもしれません。
でもあの態度は、ひどいものでした。
隠れて優しくしても、現実は冷たい人でした。
そんな旦那様に腹が立って旦那様の優しさなんかお嬢様に教えてあげたくなかったんです。
あのクズ野郎の旦那様なんか捨ててしまって傷つけてやればいいんです!!!」
「ロニー、こ、怖いわ……それにまたお嬢様呼びになっているわよ⁉︎」
「あ!すみませんでした。シャノン様」
ロニーはずっとわたしの辛い気持ちに寄り添ってくれた唯一の大事な人だ。
「ロニー、貴方や邸のみんながいてくれたからわたしはあの邸で寂しくても辛くても生きていけたの。いつもありがとう」
ロニーはわたしを抱きしめて
「わたしの大事なお嬢様です。何があってもお守りすると決めているのです」
と言ってくれた。
今まで知らなかったことばかりだった。
わたしに会いにも来ない冷たい父親は本当は邸に帰るとわたしに会いに来ていたらしい。
ただし寝ている時限定で。
わたしが父親に対して慣れなくて泣いていたと知った時は驚いた。原因の一つはわたし自身だったのだ。
さらに喘息が出た時いつも抱っこしてくれていたのが父親だったなんて知らなかった。
苦しい時に優しい誰かが抱きしめて背中を摩ってくれていたのは何となく覚えていたのだが…あれが父だったなんて。
ラウルとの婚約も幼い頃仲良しだったからだとは思わなかった。
亡くなる前にお母様が
「大きくなったら婚約させましょうね」
と、父親に話した最後の言葉を叶えたいと思い、
本当に婚約者になったこと
ロイスとダンからも婚約の打診がきていたこと
ラウルの女性に対しての素行の悪さに気づき調査していたこと
アイリスとラウルの関係にも気づいていたこと
アイリスの違法薬物の売買のことに気づき監視していたこと
わたしが公爵家を出てからおじ様を頼って邸に来た時、本当は迎えに来てくれていたことを知って驚いた。
まさかわたしを迎えに来るなんて思いもしなかった。
いつも使用人任せで自分からわたしのために動くなんて考えられなかった。
「ロスワート侯爵様……いえ、お父様……今までのことを思うと素直に受け入れることはできません。
わたしは何度も何度も貴方に踏み躙られてきました。わたしの心は壊れてしまったのです……」
「シャノン、すまなかった」
お父様は深々と頭を下げた。
「頭をお上げください」
おじ様は怒って言ってくれた。
「シャノン嬢、別にスティーブを許してあげろとは言わない。こいつはほんとに聞いていて父親として駄目過ぎる!
ただもし良ければこいつの歪んで素直になれない哀れな男を少しだけでいいから父親として見てあげて欲しい……」
お父様は項垂れていた。
「ごめんなさい、わたしも今は素直に許してあげることはできません。ただ嫌われていなかったって知って、少しだけ心が救われました」
「……除籍のことなんだが、ラウルと離縁したあと何があってもしたいと言うならもう止めない。よく考えてから決めて欲しい。
今まで辛い思いをさせてすまなかった」
こうしてわたしとロスワート侯爵様、いえお父様との話し合いは終わった。
わたしは、離縁したら除籍してもらうことには変わりはない。
今さら許せるものでもない。
◇ ◇ ◇
ロニーに話すと、なんとも言えない顔になった。
「シャノン様、旦那様のことを黙っていて申し訳ありませんでした。
旦那様は確かに見えないところでお嬢様を大事にしていたかもしれません。
でもあの態度は、ひどいものでした。
隠れて優しくしても、現実は冷たい人でした。
そんな旦那様に腹が立って旦那様の優しさなんかお嬢様に教えてあげたくなかったんです。
あのクズ野郎の旦那様なんか捨ててしまって傷つけてやればいいんです!!!」
「ロニー、こ、怖いわ……それにまたお嬢様呼びになっているわよ⁉︎」
「あ!すみませんでした。シャノン様」
ロニーはずっとわたしの辛い気持ちに寄り添ってくれた唯一の大事な人だ。
「ロニー、貴方や邸のみんながいてくれたからわたしはあの邸で寂しくても辛くても生きていけたの。いつもありがとう」
ロニーはわたしを抱きしめて
「わたしの大事なお嬢様です。何があってもお守りすると決めているのです」
と言ってくれた。
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