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8話 ジェフ編
しおりを挟む「バセット宰相補佐官、なんてこと言い出すんですか!」
「煩い!わたしの大事な娘が倒れたんだ」
「だったら一人で茶会に置いて行く事が間違いなんです、普通は侍女をそばに置くものなんですよ」
「そうなのか?」
「男親しかいないから仕方がないかもしれないが6歳の女の子に誰も知らない場所に一人で放ってしまうなんて非常識です」
「……し、知らなかった、もしかしてエリーゼにわたしは酷いことをしたのか?」
「はっきり申しますがとても可哀想だとしか言えません」
わたしは跪いて項垂れた。
エリーゼを今度こそ不幸にはしないと誓ったばかりなのに。
「わたしは子育てを知らなすぎる……」
「再婚なさるのは如何ですか?そうすれば娘さんにどうしたらいいかわかるのでは?」
「絶対にしない。わたしが愛したのはオーリス、一人だ」
いくらエリーゼのためとはいえそれだけは出来ない。
「そうだ!お前の嫁さん、子育て終わってるだろう?我が家に家庭教師で来ないか?」
医者は、いや、幼馴染のグレイは口調を崩した。
「お前、何考えているんだ?」
「わたしではこの子が必要なものもどうするべきかもわからない。だからたまにでいいんだ。
この子にとって今何をするべきなのかアドバイスが欲しいんだ。この子は笑うことも泣くこともない。
何も求めない、生きて息をしているだけなんだ。頼む、助けてくれ」
わたしとコイツは幼馴染だ。
そして嫁さんのこともよく知っている。
だからこそ、適任だと思った。
「はぁー、嫁さんに聞いてみるよ、期待はしないでくれ」
「ありがとう、駄目ならほかに良い人を紹介してくれ、頼む」
「わかった、わかった。お前変わったな、少し前までは子どもに関わろうとせず逃げてばかりだったのに」
「今でも逃げたいよ、どう関わって良いのかわからないんだ、でもこの子をこのままにしてたら不幸になることはわかったんだ。だから今からでも幸せにしてやりたいんだ」
「だから時期宰相と言われているのに辞めるのか?」
「地位などあっても仕方がない。わたしは二人の子どもを守って領民たちを守れれば良いんだ。わたしはもう一度エリーゼの笑顔を見たい、取り戻したいんだ。そのためなら人に頭を下げることなんか厭わない、頼む、エリーゼを救いたいんだ」
「うちの嫁に自分で会いに行け。今のお前なら多分会ってくれるよ、前のお前のことは嫌ってたからな無理だったと思うけど」
「嫌われているのはわかっている。オーリスの死に際に仕事が入り看取ってやる事ができなかったからな」
「女にはわからないからな、男がどうしても手が離せなかった理由なんて。
あの時お前が隣国の宰相と話し合いを途中で辞めていたら我が国は戦争になっていたかもしれない。
お前が執り成してくれなかったら今頃わたし達はどうなっていたかわからない。あの時は本当に不運だった。
まさかお前が話し合いをしている時にオーリスが亡くなるとは思っていなかった。突然容態が悪化したからな」
「それでもわたしが悪い。言い訳は出来ない」
「お前は不器用だからな、オーリスもわかってくれていたと思うぞ。まぁだからこそ親友だった嫁はオーリスの代わりに怒っているんだけどな」
「怒られた方がマシだ。戒めになる」
「今日は仕事しながらでもいいからそばに居てやれ。仕事が終わらないと辞めれないんだろう?」
「ああ、あともう少し残っている。これさえ終われば屋敷にいられる時間が増える、そしたら少しでもエリーゼとスコットと一緒に過ごそうと思う。スコットも寮を出て屋敷から学園に通うようになるんだ」
「へぇ、勉強のためには時間が惜しいからと無理矢理寮に入れたのはお前だろ」
「そうだ、その所為でエリーゼは笑顔が消えた。スコットも冷めた子になってしまった。良かれと思ってした事が全て悪い方にいってしまった」
「どこまで取り戻せるかはお前次第だな、自業自得だ」
わたしはエリーゼの寝顔を見ながら急ぎ仕事を終わらせていく。
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