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50話
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「陛下と結婚してクロードが産まれたのに、陛下はわたしの事を見ようともしなかったわ。
愛してくれない。
抱いてもくれない。
話しかけてもくれないの。
陛下がヴィクトリア様と居た時のような、あの優しい愛おしそうな笑顔でわたしを見てくれないのよ」
とても悲しそうな顔……
「だったら、要らないわ。わたしを愛してくれないのなら要らない。そう思っていたのに、陛下は酔っ払ってわたしをヴィクトリア様と思い込み、抱いたの。貴女の代わりに抱かれたのよ。こんな惨めなことはなかったわ」
そして院長先生を見ながら言った。
「レンスは正真正銘、陛下の子どもよ。わたしにそっくりで彼には似ていないだけ。彼はわたしが不貞を働いてどこの誰ともわからない男の子どもを産んだと思っているわ。だから、レンスに興味も示さないし、王位継承権も与えない。一度だけ貴方の子どもだと言ったら、物凄い形相で『よくも有り得ない嘘を平気でつくな』と、言われて舌打ちされたわ」
「ユシリス様……」
院長先生は、何を言えばいいのかわからなかった。
あまりにも酷すぎる話で、頭が追いつかなかった。
「わたしは、決めたの。クロードではなくてレンスを次の国王にすると、わたしの愛情全てをレンスに与えるの。
そして陛下と貴女をわたしの目の前から消し去るの」
ふふふふふ
「決めなさい!お父様のモノになるか、孤児院を焼いて子ども達を見捨てるか」
わたしは狂ったように笑っているのを見て、体が寒くなって震えた。
「エリーゼ、もう見るのはやめなさい」
お父様が映像を止めようとしたが、
「お父様、見ます、最後まで見させてください」
青い顔をしたわたしを心配してくれたが、最後まで目を逸らさずに見ないといけない。
よくわからないけど、逃げることが出来なかった。
院長先生は、二人を見て
「どちらか選んでも地獄ならわたしは愛人を選びます。でも子ども達を殺さないと約束してください。エリーゼのこともどうか何もしないで下さい。お願いします」
「貴女にお願いをする権利はないわ。ねえお父様、早速わたしの前で抱いたらいいのではないですか?」
ニューベル公爵は、娘に気圧されて固まったまま返事がなかった。
「お父様!!貴方のことを言っているのよ!!さっさとこの女を辱めなさい!!」
ヒステリックに叫ばれて、ニューベル公爵は我に返った。
「あ、あぁ、ユシリス。少し待ってくれ」
「お父様がしないのならわたしがこの女を裸にして差し上げますわ」
「やめなさい!」
突然後ろから声が聞こえてきた。
「へ、陛下……」
ニューベル公爵は、真っ青になってまた固まってしまった。
「あら?陛下。よくこの場所が分かりましたね?体調がお悪くて寝込んでいたのにヴィクトリア様の事になると、こんなところまで探し出して会いに来るのね」
「もうやめなさい。君を狂わせたのはニューベル公爵とわたしなんだ。レンスがわたしの子どもだったなんて……すまない。ずっと君には恋人がいるんだと思っていたんだ」
「貴方の子どもなんかではないわ。わたしだけの息子なの。一度も愛情をかけたこともないくせに。冷たい目で我が子をずっと見ていたくせに!」
「自分の子だと思っていなかったんだ。君に対して誠実でなかった」
「謝罪なんか要らないわ。ヴィクトリア様、約束よ。お父様、さっさと連れて行ってちょうだい。貴女はこれからお父様の愛人よ」
「ニューベル公爵、ユシリス、君達を拘束する。ユシリス、君が辛い思いをしたのはすまないと思っている。だが、犯した罪は償わないといけない」
「わたしは何もしていないわ。どうして?」
ユシリス様はキョトンとして、子どものようなあどけない笑顔で、
「貴方がわたしを見てくれたの初めてだわ、とても嬉しい。愛しているわ」
と、クスクス笑い出した。
陛下は辛そうな顔をしながら、騎士達に二人を拘束させた。
「ヴィクトリア……」
陛下が院長先生に声を掛けると
「わたしのそばに来ないで!」
と叫んだ。
陛下は
「すまなかった。ただ君をずっと愛していたんだ」
と言って謝った。
「さよなら」
と、院長先生が言うと
「ああ、これが本当のさよならだね」
と言って、部屋を出て行った。
愛してくれない。
抱いてもくれない。
話しかけてもくれないの。
陛下がヴィクトリア様と居た時のような、あの優しい愛おしそうな笑顔でわたしを見てくれないのよ」
とても悲しそうな顔……
「だったら、要らないわ。わたしを愛してくれないのなら要らない。そう思っていたのに、陛下は酔っ払ってわたしをヴィクトリア様と思い込み、抱いたの。貴女の代わりに抱かれたのよ。こんな惨めなことはなかったわ」
そして院長先生を見ながら言った。
「レンスは正真正銘、陛下の子どもよ。わたしにそっくりで彼には似ていないだけ。彼はわたしが不貞を働いてどこの誰ともわからない男の子どもを産んだと思っているわ。だから、レンスに興味も示さないし、王位継承権も与えない。一度だけ貴方の子どもだと言ったら、物凄い形相で『よくも有り得ない嘘を平気でつくな』と、言われて舌打ちされたわ」
「ユシリス様……」
院長先生は、何を言えばいいのかわからなかった。
あまりにも酷すぎる話で、頭が追いつかなかった。
「わたしは、決めたの。クロードではなくてレンスを次の国王にすると、わたしの愛情全てをレンスに与えるの。
そして陛下と貴女をわたしの目の前から消し去るの」
ふふふふふ
「決めなさい!お父様のモノになるか、孤児院を焼いて子ども達を見捨てるか」
わたしは狂ったように笑っているのを見て、体が寒くなって震えた。
「エリーゼ、もう見るのはやめなさい」
お父様が映像を止めようとしたが、
「お父様、見ます、最後まで見させてください」
青い顔をしたわたしを心配してくれたが、最後まで目を逸らさずに見ないといけない。
よくわからないけど、逃げることが出来なかった。
院長先生は、二人を見て
「どちらか選んでも地獄ならわたしは愛人を選びます。でも子ども達を殺さないと約束してください。エリーゼのこともどうか何もしないで下さい。お願いします」
「貴女にお願いをする権利はないわ。ねえお父様、早速わたしの前で抱いたらいいのではないですか?」
ニューベル公爵は、娘に気圧されて固まったまま返事がなかった。
「お父様!!貴方のことを言っているのよ!!さっさとこの女を辱めなさい!!」
ヒステリックに叫ばれて、ニューベル公爵は我に返った。
「あ、あぁ、ユシリス。少し待ってくれ」
「お父様がしないのならわたしがこの女を裸にして差し上げますわ」
「やめなさい!」
突然後ろから声が聞こえてきた。
「へ、陛下……」
ニューベル公爵は、真っ青になってまた固まってしまった。
「あら?陛下。よくこの場所が分かりましたね?体調がお悪くて寝込んでいたのにヴィクトリア様の事になると、こんなところまで探し出して会いに来るのね」
「もうやめなさい。君を狂わせたのはニューベル公爵とわたしなんだ。レンスがわたしの子どもだったなんて……すまない。ずっと君には恋人がいるんだと思っていたんだ」
「貴方の子どもなんかではないわ。わたしだけの息子なの。一度も愛情をかけたこともないくせに。冷たい目で我が子をずっと見ていたくせに!」
「自分の子だと思っていなかったんだ。君に対して誠実でなかった」
「謝罪なんか要らないわ。ヴィクトリア様、約束よ。お父様、さっさと連れて行ってちょうだい。貴女はこれからお父様の愛人よ」
「ニューベル公爵、ユシリス、君達を拘束する。ユシリス、君が辛い思いをしたのはすまないと思っている。だが、犯した罪は償わないといけない」
「わたしは何もしていないわ。どうして?」
ユシリス様はキョトンとして、子どものようなあどけない笑顔で、
「貴方がわたしを見てくれたの初めてだわ、とても嬉しい。愛しているわ」
と、クスクス笑い出した。
陛下は辛そうな顔をしながら、騎士達に二人を拘束させた。
「ヴィクトリア……」
陛下が院長先生に声を掛けると
「わたしのそばに来ないで!」
と叫んだ。
陛下は
「すまなかった。ただ君をずっと愛していたんだ」
と言って謝った。
「さよなら」
と、院長先生が言うと
「ああ、これが本当のさよならだね」
と言って、部屋を出て行った。
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