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73話
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「エリーゼ……無理はしないで欲しい……わたしは許されるべきではない事は分かっている……」
お父様は横を向き、わたしに見えないようにそっと涙を流していた。
わたしは気づいていない事にして
「ユイナ・ミレーヌ様は今どうなっているのですか?」
「今は牢に入れられて処罰がおりるのを待っている。だが、反省はないようだ」
「そうですか……偶に学園でお顔を見かける程度しか知りませんが、マリーナ様や殿下のことでわたしに殺意を抱かれたのですね、あの気持ち悪い視線は彼女だったのでしょう……もうアンは前回のように亡くなることはありませんね。これで前回の因縁は全て終わったのでしょうか?」
「わたし達にもわからないが、お前を害した者は全ていなくなった。もうこれ以上お前が被害に遭うのは耐えられない……お前に護衛や影をつけていたのにお前を守れなかった……お前が目を覚ましたのにそばにいてやることも出来なかった…………本当にすまなかった……」
「お父様は精一杯わたしを守ってくれました。それは今回記憶が変わる前も今も同じです。どこで誰が襲ってくるかなんてわかりませんし、恨んではおりません。
……影さん……わたしをいつも見守ってくれていた影さんはそのことで処罰など受けていませんよね?」
わたしはいつも守ってくれる影さんの存在を思い出した。
刺される前に影さんにお礼を言い忘れていた。
「影?」
「ええ、マリーナ様の時もユイナ様の時もわたしを守ってくれた人は……たぶん同じ人ではないかと思うのです」
「……あの影か……一度目はお前を助けてくれた。二度目は目の前で助けることができなかった。しかしそれは他の護衛や影も同じだった。だから、処罰を受けることはない」
「よかった……あの影さんがいつもわたしを守ってくれていたので何故か安心して過ごすことが出来ていました……もしわたしの所為で何か処罰を受けていたら心苦しかった……」
わたしはまだまだ聞きたいことが沢山あるが流石に話し疲れて、また後日ゆっくり話を聞かせてもらう事にした。
アンが世話をしてくれてわたしの体は少しずつ回復した。
そして退院の日にユンとミリアがアンと迎えに来てくれた。
「ユン、ミリア、会いたかった」
わたしは二人に会えてとても嬉しかった。
「会いに来れなくてすみませんでした」
ユンとミリアが神妙な顔をして謝るので
「どうして謝るの?」
だってわたしが面会謝絶なのは分かっていたし、わたし自身も自分の記憶の整理をしないとみんなには会えないと思って、来ることを控えてもらっていた。
「だって、会いたかったけど会うのが怖かったんです、わたし達はそばに居て守ってあげられなかった」
「わたしも……1人で行かせないで、ついて行けばよかった。ずっと後悔して、悔やんでも仕方がないのに、悔しくて……本当にすみませんでした」
「2人とも久しぶりに会うんだから謝ってばかりはやめて、お帰りって行ってあげなくっちゃ、ね?エリーゼ様」
アンの言葉にわたしも頷いた。
「うん、わたしもそっちがいい!」
「エリーゼ様お帰りなさいませ」
「お帰りなさい」
「ありがとう、しばらくまた屋敷で過ごすけどよろしくね」
「もちろん喜んでお世話させていただきます」
わたしは目覚めてから3週間後に久しぶりの屋敷に戻って来た。
屋敷の中に入った瞬間、周りを見たが刺される前と今の記憶に違和感はなかった。
屋敷の者が全員並んで挨拶をしてくれた。
半年以上も屋敷から離れていたので、働いてくれている人に数人見知らぬ人がいた。
「……うん?」
わたしは見知らぬ数人の中の一人に何故か目が止まった。
会ったことがある顔ではない。
なのにとても気になる人。
わたしよりひと回りくらい年上の、たぶんお兄様より年上の人。
ジイっと見ていると、後ろからお父様がわたしを見て
「エリーゼ?どうしたんだ?」
「………影さん?」
わたしは何故かボソッとその言葉が出た。
お父様は横を向き、わたしに見えないようにそっと涙を流していた。
わたしは気づいていない事にして
「ユイナ・ミレーヌ様は今どうなっているのですか?」
「今は牢に入れられて処罰がおりるのを待っている。だが、反省はないようだ」
「そうですか……偶に学園でお顔を見かける程度しか知りませんが、マリーナ様や殿下のことでわたしに殺意を抱かれたのですね、あの気持ち悪い視線は彼女だったのでしょう……もうアンは前回のように亡くなることはありませんね。これで前回の因縁は全て終わったのでしょうか?」
「わたし達にもわからないが、お前を害した者は全ていなくなった。もうこれ以上お前が被害に遭うのは耐えられない……お前に護衛や影をつけていたのにお前を守れなかった……お前が目を覚ましたのにそばにいてやることも出来なかった…………本当にすまなかった……」
「お父様は精一杯わたしを守ってくれました。それは今回記憶が変わる前も今も同じです。どこで誰が襲ってくるかなんてわかりませんし、恨んではおりません。
……影さん……わたしをいつも見守ってくれていた影さんはそのことで処罰など受けていませんよね?」
わたしはいつも守ってくれる影さんの存在を思い出した。
刺される前に影さんにお礼を言い忘れていた。
「影?」
「ええ、マリーナ様の時もユイナ様の時もわたしを守ってくれた人は……たぶん同じ人ではないかと思うのです」
「……あの影か……一度目はお前を助けてくれた。二度目は目の前で助けることができなかった。しかしそれは他の護衛や影も同じだった。だから、処罰を受けることはない」
「よかった……あの影さんがいつもわたしを守ってくれていたので何故か安心して過ごすことが出来ていました……もしわたしの所為で何か処罰を受けていたら心苦しかった……」
わたしはまだまだ聞きたいことが沢山あるが流石に話し疲れて、また後日ゆっくり話を聞かせてもらう事にした。
アンが世話をしてくれてわたしの体は少しずつ回復した。
そして退院の日にユンとミリアがアンと迎えに来てくれた。
「ユン、ミリア、会いたかった」
わたしは二人に会えてとても嬉しかった。
「会いに来れなくてすみませんでした」
ユンとミリアが神妙な顔をして謝るので
「どうして謝るの?」
だってわたしが面会謝絶なのは分かっていたし、わたし自身も自分の記憶の整理をしないとみんなには会えないと思って、来ることを控えてもらっていた。
「だって、会いたかったけど会うのが怖かったんです、わたし達はそばに居て守ってあげられなかった」
「わたしも……1人で行かせないで、ついて行けばよかった。ずっと後悔して、悔やんでも仕方がないのに、悔しくて……本当にすみませんでした」
「2人とも久しぶりに会うんだから謝ってばかりはやめて、お帰りって行ってあげなくっちゃ、ね?エリーゼ様」
アンの言葉にわたしも頷いた。
「うん、わたしもそっちがいい!」
「エリーゼ様お帰りなさいませ」
「お帰りなさい」
「ありがとう、しばらくまた屋敷で過ごすけどよろしくね」
「もちろん喜んでお世話させていただきます」
わたしは目覚めてから3週間後に久しぶりの屋敷に戻って来た。
屋敷の中に入った瞬間、周りを見たが刺される前と今の記憶に違和感はなかった。
屋敷の者が全員並んで挨拶をしてくれた。
半年以上も屋敷から離れていたので、働いてくれている人に数人見知らぬ人がいた。
「……うん?」
わたしは見知らぬ数人の中の一人に何故か目が止まった。
会ったことがある顔ではない。
なのにとても気になる人。
わたしよりひと回りくらい年上の、たぶんお兄様より年上の人。
ジイっと見ていると、後ろからお父様がわたしを見て
「エリーゼ?どうしたんだ?」
「………影さん?」
わたしは何故かボソッとその言葉が出た。
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