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79話 五人のお茶会
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そして、待ちに待った週末になった。
クロード殿下に会うのは少し気が引けるが、レンス殿下と話したいと言う気持ちがとても強かった。
お二人を屋敷の客間に案内すると、人払いをしてもらった。
もちろん扉の外にはしっかりと護衛や近衛騎士が見張っているし、窓の外にも数人が中を覗けるように見張りをしている。
わたし達がお二人に危害を加えてもすぐに対処できるようにしている。
わたし達としては、話の内容さえ聞かれなければどんなに見張られても困る事はない。
「クロード殿下、レンス殿下ようこそ我が家においで下さりました」
お父様が挨拶をすると二人は柔かに返事をした。
そしてすぐに人払いをした。
「ここからは畏まらないで話して欲しい」
クロード殿下から提案があり、わたし達は承知した。
「わかりました、では普通に話させていただきます」
わたしは、レンス殿下を見て一番聞きたかったことを聞いてみた。
「レンス殿下は、わたし達四人が巻き戻ったことをご存知ですか?」
レンス殿下はいつものにこにことした優しい笑顔をそのままに返事をした。
「兄上に聞いているよ。でも僕自身は巻き戻った訳ではなくて、記憶が蘇ったんだ」
「わたしが刺される前は、マリーナ様もカイラもエレンも記憶が蘇っていました。でもわたしが刺されて半年意識をなくしている間に、記憶が蘇っていたはずの二人は何も覚えていません。マリーナ様は処刑されたのでわかりませんが……」
「兄上から話は聞いているよ、エリーゼ様のことは公爵が手紙で兄上に問い合わせしていたからね」
わたしは思わずお父様に振り向いた。
「すまない……勝手に話をしてしまった」
お父様はシュンとしていた。
「いえ、大丈夫です。わたしもクロード殿下に話しておきたかったので。でも出来れば一言話して欲しかったです」
「エリーゼが嫌がると思ったんだ」
確かにもうクロード殿下と関わりたくないと思っている。
だってわたしは前回の人生で彼が好きだったんだと気づいてしまったから。
認めたくない気持ち。
今更その事に向き合う事は出来ない。
彼をそして父を嫌い続ける事でしか、今の人生を生きる事は出来ない。
わたしの頑なまでのこの気持ちは、何度も死ぬ目に遭ったのに変わらない。
ううん、変わらないといけないのに、前回の自分を思い出すと、わたしは自分をぎゅうっと抱きしめてあげたくなるくらい切なくなる。
苦しくて辛くて、寂しくて………そして恋しくて……
あの時の自分を忘れて今の人生を生きるなんて、絶対に出来ない。
「……………?…エリーゼ?」
お父様のわたしを呼ぶ声にハッとして思わず周囲を見回した。
「ご、ごめんなさい……レンス殿下は、では突然前回の記憶が蘇ったのですか?」
「……うん、そして……エリーゼ様と同じで貴女が刺される前の記憶も持っているんだ。そして突然変わった記憶も持っている。だから三つの記憶を同時に持っているんだ」
「え?」
「ええ?」
「それは本当なのか?」
わたしとお父様、お兄様は思わず驚いてレンス殿下をまじまじとみつめてしまった。
クロード殿下はレンス殿下を見て頷くと
「エリーゼ、僕は公爵から手紙をもらい考えてみたんだ。
前回と今回があまりにも話が違う事に違和感もなく過ごしていたが、よくよく考えるとおかしいんだよね。だって巻き戻ったのに、全く事情が最初から変わっているんだよ。
父上と母上が愛し合っていたり、ニューベル公爵は過去の人物になっていたりしているんだ。
それにヴィクトリア様は結婚していて子供もいる。前回存在しなかったウィリアンと2歳年下のナタリーア、考えるとおかしい話だよね」
「僕は途中で今と少し前までの記憶が突然現れてしまって頭の中でパニックになっていたんだ。僕の頭がおかしくなったのかもしれないと思ったんだ」
レンス殿下は複雑そうな顔をしていた。
「そんな時兄上も手紙を読んで溜息が増えていたんだ。
僕は思い切って兄上に相談してみたんだ。僕の記憶のことを……」
クロード殿下に会うのは少し気が引けるが、レンス殿下と話したいと言う気持ちがとても強かった。
お二人を屋敷の客間に案内すると、人払いをしてもらった。
もちろん扉の外にはしっかりと護衛や近衛騎士が見張っているし、窓の外にも数人が中を覗けるように見張りをしている。
わたし達がお二人に危害を加えてもすぐに対処できるようにしている。
わたし達としては、話の内容さえ聞かれなければどんなに見張られても困る事はない。
「クロード殿下、レンス殿下ようこそ我が家においで下さりました」
お父様が挨拶をすると二人は柔かに返事をした。
そしてすぐに人払いをした。
「ここからは畏まらないで話して欲しい」
クロード殿下から提案があり、わたし達は承知した。
「わかりました、では普通に話させていただきます」
わたしは、レンス殿下を見て一番聞きたかったことを聞いてみた。
「レンス殿下は、わたし達四人が巻き戻ったことをご存知ですか?」
レンス殿下はいつものにこにことした優しい笑顔をそのままに返事をした。
「兄上に聞いているよ。でも僕自身は巻き戻った訳ではなくて、記憶が蘇ったんだ」
「わたしが刺される前は、マリーナ様もカイラもエレンも記憶が蘇っていました。でもわたしが刺されて半年意識をなくしている間に、記憶が蘇っていたはずの二人は何も覚えていません。マリーナ様は処刑されたのでわかりませんが……」
「兄上から話は聞いているよ、エリーゼ様のことは公爵が手紙で兄上に問い合わせしていたからね」
わたしは思わずお父様に振り向いた。
「すまない……勝手に話をしてしまった」
お父様はシュンとしていた。
「いえ、大丈夫です。わたしもクロード殿下に話しておきたかったので。でも出来れば一言話して欲しかったです」
「エリーゼが嫌がると思ったんだ」
確かにもうクロード殿下と関わりたくないと思っている。
だってわたしは前回の人生で彼が好きだったんだと気づいてしまったから。
認めたくない気持ち。
今更その事に向き合う事は出来ない。
彼をそして父を嫌い続ける事でしか、今の人生を生きる事は出来ない。
わたしの頑なまでのこの気持ちは、何度も死ぬ目に遭ったのに変わらない。
ううん、変わらないといけないのに、前回の自分を思い出すと、わたしは自分をぎゅうっと抱きしめてあげたくなるくらい切なくなる。
苦しくて辛くて、寂しくて………そして恋しくて……
あの時の自分を忘れて今の人生を生きるなんて、絶対に出来ない。
「……………?…エリーゼ?」
お父様のわたしを呼ぶ声にハッとして思わず周囲を見回した。
「ご、ごめんなさい……レンス殿下は、では突然前回の記憶が蘇ったのですか?」
「……うん、そして……エリーゼ様と同じで貴女が刺される前の記憶も持っているんだ。そして突然変わった記憶も持っている。だから三つの記憶を同時に持っているんだ」
「え?」
「ええ?」
「それは本当なのか?」
わたしとお父様、お兄様は思わず驚いてレンス殿下をまじまじとみつめてしまった。
クロード殿下はレンス殿下を見て頷くと
「エリーゼ、僕は公爵から手紙をもらい考えてみたんだ。
前回と今回があまりにも話が違う事に違和感もなく過ごしていたが、よくよく考えるとおかしいんだよね。だって巻き戻ったのに、全く事情が最初から変わっているんだよ。
父上と母上が愛し合っていたり、ニューベル公爵は過去の人物になっていたりしているんだ。
それにヴィクトリア様は結婚していて子供もいる。前回存在しなかったウィリアンと2歳年下のナタリーア、考えるとおかしい話だよね」
「僕は途中で今と少し前までの記憶が突然現れてしまって頭の中でパニックになっていたんだ。僕の頭がおかしくなったのかもしれないと思ったんだ」
レンス殿下は複雑そうな顔をしていた。
「そんな時兄上も手紙を読んで溜息が増えていたんだ。
僕は思い切って兄上に相談してみたんだ。僕の記憶のことを……」
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