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23話
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遠くから何度か見かけた事があったシャノン様。
彼女は俺のことを気にかけてくれていたようだった。
『誰かの『アラン』ではなく、唯一自身の『アラン』なのです。周りのしがらみに潰されることなく前を向いて欲しいと思っています』
俺自身を見てくれる人………
エイミー以外にいるのか……
みんな色眼鏡で俺を見る。
それに慣れてしまって感覚が麻痺していた学生時代。
いくら女の子達が周りで騒いでいてもどうでも良かった。
適当に笑顔で対応していれば楽だし、俺自身も寂しくなくてすむ。
なのにエイミーはそんな適当でいい加減な俺を許してくれなかった。
いつも俺をライバルだと思い、目の敵にして俺に勝つのを素直に喜ぶ変わった奴だった。
侯爵の息子とか関係なかった。
まさか父上の本当の娘とは思わなかったが、彼女と居るとホッとして何故か落ち着いた。
どんなに皮肉を言ってもムキになって言い返して来ても、それが楽しかった。
カイル様とエイミーが引っ付いた時もショックだったけど、幸せになって欲しいと心から願うことが出来た。
俺は店を出て、適当に宿を探した。
こんな時に限って、空室がない。
汽車にもう少し乗れば父上(ラウル)の領地へ行ける。
仕方がないので、もう一度駅へ行き、ベルアート領へ戻ることにした。
あと数日は王都へ帰れない。
一応謹慎処分だから。
こんな時行きたい場所なんてあまりない。
考えてみたら趣味もないし、博打にも女にも興味がない。
唯一楽しいのは剣の鍛錬の時間くらいだ。
父上のところへ行って、稽古でもつけてもらおう。
そう考えて駅へ向かうと、
「やめてください!」
何人かの男達に絡まれて、必死で抵抗しているジンジャー嬢に出会ってしまった。
(この子ってなんでだろう、運の悪い子だよな)
俺はこの子を見てそう思った。
この運の悪さが親に対しても出てしまったのだろう。
良いところがあるのに偶々悪い所しか見てもらえなくて怒られて、落ち込んで辛い思いをしていた。あんな優しい両親に恵まれているのに、と思ってしまった。
周りを見渡したが、ジンジャー嬢の母親も付き人もいない。
これはこの子が迷子になったのだろう。
仕方がないので、ジンジャー嬢の前に立って、
「この子に何をしているんだ!」
俺が睨みあげると
「何ってこの子がぶつかって来たんだ。怪我したんだから治療費を払ってもらうのは当たり前だろう?」
ニヤニヤしながら俺を見て言った。
「どこを怪我したんだ?見せてみろ!今から診療所へ連れていく」
俺はその男の腕を掴んで引っ張って連れて行こうとした。
「いてて、怪我したところ抑えたから骨が折れたかもしれない」
「大変だな、どこだ?折れているところは?」
俺は折れたと言っている箇所を見せてもらった。
「ふうん、折れてなさそうだな。本当に折れているか診てやるよ」
そう言って折れたと言っている腕を捻り上げた。
「うわぁ!い、痛い!!やめろ!!」
周りにいた別の男が慌てて俺を止めようとした。
「何してるんだ、やめてやってくれ!」
「何って折れてるって言ってるんだ。診療所へ行く時に折れていないとおかしいだろ?だから折ってやろうと思ったんだ。俺の優しさだ」
俺がにっこり微笑むと、
「ば、馬鹿か?お前!たかが女の子にぶつかったくらいで折れるわけないだろう!」
「帰るぞ」
男達は慌てて帰って行った。
「ねえ、君。なんでこんなところに一人でいるんだい?わたしに絡んで下さいとお願いしているのと一緒だよ。お嬢様?」
俺の冷たい言葉に、ジンジャー嬢は凄く傷ついた顔をしていたが、気づかないフリをした。
「送っていくよ、どこに行けばいい?」
「……け、結構です……」
下を向いて涙を堪えているのがわかる。
ちょっと意地悪をし過ぎたかなと思い
「危ないからね、また何かあってもいけない。送っていくよ」
「……一人で帰れます」
「帰れないから絡まれていたんでしょう?素直に送って下さいと言えないの?」
俺の言葉にとうとう泣き出した。
「わ、わたし……どうせ……意地っ張り…で、す、素直……になれ…ません……」
「はぁー、泣かないで。ごめんね、俺も君と同じ意地っ張りで素直じゃないんだ。危ないから送らせて欲しい。君を放って行くなんて出来ない」
素直に謝罪をして、送らせてほしいと頼むと、
「あ、ありがとうございます。お母様達とはぐれてしまって、どうしようかと思っていたら先程の方達に絡まれてしまいました」
「うーん、とりあえずこの街を守る騎士達の詰所に行こう。もしかしたら探してくれているかも知れないからね」
「は、はい」
それから街の人に聞いて詰所へ行くと、やはりジンジャー嬢を探しているとのことだった。
「じゃあ、ジンジャー嬢ここに居れば誰か迎えに来てくれるから、俺は行くね」
「え?」
ジンジャー嬢が不安そうに俺を見た。
「汽車の時間が間に合わなくなるんだ。今からベルアート領へ行くつもりだから」
「今からですか?」
「俺、一応謹慎処分中で王都には居られなくてね。あと数日、ベルアート領へ行くつもりなんだ」
「あ……すみません。わたしの父が謹慎処分を出した所為で」
「君が謝ることではないよ。それに団長のおかけでゆっくり出来ているんだ。感謝しているよ」
俺はジンジャー嬢を騎士達に頼んだ。
彼女は俺のことを気にかけてくれていたようだった。
『誰かの『アラン』ではなく、唯一自身の『アラン』なのです。周りのしがらみに潰されることなく前を向いて欲しいと思っています』
俺自身を見てくれる人………
エイミー以外にいるのか……
みんな色眼鏡で俺を見る。
それに慣れてしまって感覚が麻痺していた学生時代。
いくら女の子達が周りで騒いでいてもどうでも良かった。
適当に笑顔で対応していれば楽だし、俺自身も寂しくなくてすむ。
なのにエイミーはそんな適当でいい加減な俺を許してくれなかった。
いつも俺をライバルだと思い、目の敵にして俺に勝つのを素直に喜ぶ変わった奴だった。
侯爵の息子とか関係なかった。
まさか父上の本当の娘とは思わなかったが、彼女と居るとホッとして何故か落ち着いた。
どんなに皮肉を言ってもムキになって言い返して来ても、それが楽しかった。
カイル様とエイミーが引っ付いた時もショックだったけど、幸せになって欲しいと心から願うことが出来た。
俺は店を出て、適当に宿を探した。
こんな時に限って、空室がない。
汽車にもう少し乗れば父上(ラウル)の領地へ行ける。
仕方がないので、もう一度駅へ行き、ベルアート領へ戻ることにした。
あと数日は王都へ帰れない。
一応謹慎処分だから。
こんな時行きたい場所なんてあまりない。
考えてみたら趣味もないし、博打にも女にも興味がない。
唯一楽しいのは剣の鍛錬の時間くらいだ。
父上のところへ行って、稽古でもつけてもらおう。
そう考えて駅へ向かうと、
「やめてください!」
何人かの男達に絡まれて、必死で抵抗しているジンジャー嬢に出会ってしまった。
(この子ってなんでだろう、運の悪い子だよな)
俺はこの子を見てそう思った。
この運の悪さが親に対しても出てしまったのだろう。
良いところがあるのに偶々悪い所しか見てもらえなくて怒られて、落ち込んで辛い思いをしていた。あんな優しい両親に恵まれているのに、と思ってしまった。
周りを見渡したが、ジンジャー嬢の母親も付き人もいない。
これはこの子が迷子になったのだろう。
仕方がないので、ジンジャー嬢の前に立って、
「この子に何をしているんだ!」
俺が睨みあげると
「何ってこの子がぶつかって来たんだ。怪我したんだから治療費を払ってもらうのは当たり前だろう?」
ニヤニヤしながら俺を見て言った。
「どこを怪我したんだ?見せてみろ!今から診療所へ連れていく」
俺はその男の腕を掴んで引っ張って連れて行こうとした。
「いてて、怪我したところ抑えたから骨が折れたかもしれない」
「大変だな、どこだ?折れているところは?」
俺は折れたと言っている箇所を見せてもらった。
「ふうん、折れてなさそうだな。本当に折れているか診てやるよ」
そう言って折れたと言っている腕を捻り上げた。
「うわぁ!い、痛い!!やめろ!!」
周りにいた別の男が慌てて俺を止めようとした。
「何してるんだ、やめてやってくれ!」
「何って折れてるって言ってるんだ。診療所へ行く時に折れていないとおかしいだろ?だから折ってやろうと思ったんだ。俺の優しさだ」
俺がにっこり微笑むと、
「ば、馬鹿か?お前!たかが女の子にぶつかったくらいで折れるわけないだろう!」
「帰るぞ」
男達は慌てて帰って行った。
「ねえ、君。なんでこんなところに一人でいるんだい?わたしに絡んで下さいとお願いしているのと一緒だよ。お嬢様?」
俺の冷たい言葉に、ジンジャー嬢は凄く傷ついた顔をしていたが、気づかないフリをした。
「送っていくよ、どこに行けばいい?」
「……け、結構です……」
下を向いて涙を堪えているのがわかる。
ちょっと意地悪をし過ぎたかなと思い
「危ないからね、また何かあってもいけない。送っていくよ」
「……一人で帰れます」
「帰れないから絡まれていたんでしょう?素直に送って下さいと言えないの?」
俺の言葉にとうとう泣き出した。
「わ、わたし……どうせ……意地っ張り…で、す、素直……になれ…ません……」
「はぁー、泣かないで。ごめんね、俺も君と同じ意地っ張りで素直じゃないんだ。危ないから送らせて欲しい。君を放って行くなんて出来ない」
素直に謝罪をして、送らせてほしいと頼むと、
「あ、ありがとうございます。お母様達とはぐれてしまって、どうしようかと思っていたら先程の方達に絡まれてしまいました」
「うーん、とりあえずこの街を守る騎士達の詰所に行こう。もしかしたら探してくれているかも知れないからね」
「は、はい」
それから街の人に聞いて詰所へ行くと、やはりジンジャー嬢を探しているとのことだった。
「じゃあ、ジンジャー嬢ここに居れば誰か迎えに来てくれるから、俺は行くね」
「え?」
ジンジャー嬢が不安そうに俺を見た。
「汽車の時間が間に合わなくなるんだ。今からベルアート領へ行くつもりだから」
「今からですか?」
「俺、一応謹慎処分中で王都には居られなくてね。あと数日、ベルアート領へ行くつもりなんだ」
「あ……すみません。わたしの父が謹慎処分を出した所為で」
「君が謝ることではないよ。それに団長のおかけでゆっくり出来ているんだ。感謝しているよ」
俺はジンジャー嬢を騎士達に頼んだ。
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