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24話
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俺はジンジャー嬢を騎士達に頼んだ。
そしてジンジャー嬢に
「君は素直でいい子だ。でもね、少しだけ要領が悪い。だからせっかくの君のいい所が隠れてしまって、誤解されるんだと思う。そんな時は素直に言葉にしろ。みんなわかってくれるからね」
俺は彼女の頭をクシャクシャっとして、「じゃあな」と言って別れた。
女性騎士に、ジンジャー嬢が不安がるからそばに居てあげて欲しいと頼み、詰所を後にした。
急げば汽車の時間に間に合う。
駅に着き切符を買い、なんとか汽車に乗れた。
あと1分遅ければ今日の俺は野宿だったか、宿をずっと探し回るしかなかった。
夜、駅に着くと、乗合所で馬車を見つけ、ベルアート公爵邸までお願いした。
平民の服装の俺に、御者は怪訝な顔をした。連れて行って俺が問題でも起こせば自分も罪に問われかねない。
仕方なく、俺は首に下げている「公爵家の家紋入りのペンダント」を御者に見せた。
御者は驚いて、「すみません、疑ってしまいました」とぺこぺこ頭を下げてきた。
「こんな格好なので、まさか公爵家の者とは思えませんよね。疑うことは大切な事です。自分達の身を守ることになりますから」
俺がそう言うとホッとして馬車を出してくれた。
屋敷の前に着くと代金とお礼を言って降りた。
俺の顔を見た門の守衛は、
「アラン様!お久しぶりです」
と言いながら駆けつけてくれた。
御者はそれを見て安心して帰って行った。
「数日こちらで厄介になりたいんだ。父上は居るかな?」
「はい、先程帰ってこられました、すぐにご案内致します」
「ありがとう」
騎士になってからは、初めてのベルアート領の屋敷だったが、俺の顔を覚えてくれていた。
一応はペンダントをポケットに入れていつでも確認してもらうつもりだったが、必要なかったみたいだ。
「父上、数日お世話になります」
父上の執務室へ行くと、屋敷に戻ってすぐに仕事を始めていた父上に挨拶をした。
「アラン、久しぶりだな。いきなり訪ねてきた理由を教えてくれ」
父上は嬉しそうにニコニコして聞いてきた。
俺はこのひと月あった出来事を話した。
父上(レオナルド)からの見合いの話にキレた事は省いたが。
「そうか、わかった。お腹が空いただろう?
一緒に食事をしよう。そのあと久しぶりに鍛錬場へ行くか?」
父上のこの嬉しそうな顔を見て、断ることなんて出来るわけがない。
俺は疲れ切った体で、夜遅くまで父上との鍛錬、いや特訓という名の扱きに付き合うことになった。
そして数日間はあっという間に過ぎた。
父上とは、夜、一緒に話をして剣を交えた。
昼間は公爵家の護衛騎士達と共に訓練をした。
数日過ごして、明後日からは出勤になるので、父上の屋敷を後にすることにした。
「アラン様、またぜひこちらに来てください」
護衛騎士隊の隊長が、別れ際に挨拶に来てくれた。
「ありがとうございます。また伺わせていただきます」
「当主のあんな楽しそうな顔を久しぶりに見ました。アラン様のおかげです、ありがとうございました」
俺はその言葉に、少し照れたが
ジンジャー嬢に言った言葉を思い出して、素直に
「俺も父上に会えて楽しかったです。まあ、しっかり鍛えられてヘトヘトですけどね」
「アラン様に教えることなどもうありませんね。あとは剣とどう向き合って行くかです。貴方なら王宮騎士団でもっと上を目指せると思います。ぜひその姿を楽しみにさせて貰います」
「そんなこと言って貰えると、嬉しいよ。ありがとうございます」
そうしてベルアート領を出て、駅へ向かった。
帰りは父上が馬車を出してくれたので平民の服でも大丈夫だった。
俺も平民として3年近く過ごしてきたので、この服装が当たり前になっていたが、貴族の家を出入りする姿としては見窄らしいことに気がついた。
ルーベン様は何も仰られなかったが、俺の服装では失礼だったと今更ながらに後悔してしまった。
汽車の中で、このひと月の過ごした出来事を思い出し充実した生活をしながらも、久しぶりの王都にやはりホッとした。
生まれ育った王都はやはり俺の居場所なんだと改めて思った。
そしてジンジャー嬢に
「君は素直でいい子だ。でもね、少しだけ要領が悪い。だからせっかくの君のいい所が隠れてしまって、誤解されるんだと思う。そんな時は素直に言葉にしろ。みんなわかってくれるからね」
俺は彼女の頭をクシャクシャっとして、「じゃあな」と言って別れた。
女性騎士に、ジンジャー嬢が不安がるからそばに居てあげて欲しいと頼み、詰所を後にした。
急げば汽車の時間に間に合う。
駅に着き切符を買い、なんとか汽車に乗れた。
あと1分遅ければ今日の俺は野宿だったか、宿をずっと探し回るしかなかった。
夜、駅に着くと、乗合所で馬車を見つけ、ベルアート公爵邸までお願いした。
平民の服装の俺に、御者は怪訝な顔をした。連れて行って俺が問題でも起こせば自分も罪に問われかねない。
仕方なく、俺は首に下げている「公爵家の家紋入りのペンダント」を御者に見せた。
御者は驚いて、「すみません、疑ってしまいました」とぺこぺこ頭を下げてきた。
「こんな格好なので、まさか公爵家の者とは思えませんよね。疑うことは大切な事です。自分達の身を守ることになりますから」
俺がそう言うとホッとして馬車を出してくれた。
屋敷の前に着くと代金とお礼を言って降りた。
俺の顔を見た門の守衛は、
「アラン様!お久しぶりです」
と言いながら駆けつけてくれた。
御者はそれを見て安心して帰って行った。
「数日こちらで厄介になりたいんだ。父上は居るかな?」
「はい、先程帰ってこられました、すぐにご案内致します」
「ありがとう」
騎士になってからは、初めてのベルアート領の屋敷だったが、俺の顔を覚えてくれていた。
一応はペンダントをポケットに入れていつでも確認してもらうつもりだったが、必要なかったみたいだ。
「父上、数日お世話になります」
父上の執務室へ行くと、屋敷に戻ってすぐに仕事を始めていた父上に挨拶をした。
「アラン、久しぶりだな。いきなり訪ねてきた理由を教えてくれ」
父上は嬉しそうにニコニコして聞いてきた。
俺はこのひと月あった出来事を話した。
父上(レオナルド)からの見合いの話にキレた事は省いたが。
「そうか、わかった。お腹が空いただろう?
一緒に食事をしよう。そのあと久しぶりに鍛錬場へ行くか?」
父上のこの嬉しそうな顔を見て、断ることなんて出来るわけがない。
俺は疲れ切った体で、夜遅くまで父上との鍛錬、いや特訓という名の扱きに付き合うことになった。
そして数日間はあっという間に過ぎた。
父上とは、夜、一緒に話をして剣を交えた。
昼間は公爵家の護衛騎士達と共に訓練をした。
数日過ごして、明後日からは出勤になるので、父上の屋敷を後にすることにした。
「アラン様、またぜひこちらに来てください」
護衛騎士隊の隊長が、別れ際に挨拶に来てくれた。
「ありがとうございます。また伺わせていただきます」
「当主のあんな楽しそうな顔を久しぶりに見ました。アラン様のおかげです、ありがとうございました」
俺はその言葉に、少し照れたが
ジンジャー嬢に言った言葉を思い出して、素直に
「俺も父上に会えて楽しかったです。まあ、しっかり鍛えられてヘトヘトですけどね」
「アラン様に教えることなどもうありませんね。あとは剣とどう向き合って行くかです。貴方なら王宮騎士団でもっと上を目指せると思います。ぜひその姿を楽しみにさせて貰います」
「そんなこと言って貰えると、嬉しいよ。ありがとうございます」
そうしてベルアート領を出て、駅へ向かった。
帰りは父上が馬車を出してくれたので平民の服でも大丈夫だった。
俺も平民として3年近く過ごしてきたので、この服装が当たり前になっていたが、貴族の家を出入りする姿としては見窄らしいことに気がついた。
ルーベン様は何も仰られなかったが、俺の服装では失礼だったと今更ながらに後悔してしまった。
汽車の中で、このひと月の過ごした出来事を思い出し充実した生活をしながらも、久しぶりの王都にやはりホッとした。
生まれ育った王都はやはり俺の居場所なんだと改めて思った。
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