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31話

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「メイがひと月だけ恋人にならないかと言い出したんだ」

「えっ?」
カイルは驚いて俺の顔を見た。

「ヘェ?とうとうアランが恋人持ちになるのか」
横で同僚がにやにやしている。

「違う、マーク・ブリス避けのため。そして俺がメイの近くにいて守ろうとすれば、周りの女がうるさいから付き合ってしまえば黙るだろうって。
マーク・ブリスがメイに付き纏うのをやめて諦めたら別れる……って言うか、俺に振られたことにすればメイに女達が嫌がらせなく元に戻るらしい」

「受けたの?」
カイルが少し顔が怒っていた。

「いや、もちろん断った、馬鹿馬鹿しい話だしね」

「俺は賛成だな」
同僚が変なことを言い出した。

「はあ?メイにとって醜聞にしかならない、俺は嫌だね」

「アランってメイ嬢には普通に話すし笑ってるよね?食堂でも、メイ嬢の口に食べさせてあげていただろう?」

「……………うん?ああ、メイが俺の美味しそうだから食べたいと言ったから面倒で口に突っ込んだんだ」

「アラン、それってアラン的には面倒で食べさせた感じだけど、周りからしたらラブラブであーんして食べさせたように見えると思うよ」

「はあ?あれが?」

「うわっ、モテる男の無意識の行動ってこわ!」

「うーんまぁ、マーク・ブリス避けにはその行動ある意味牽制になっていいかも」

「アランが敵では勝てないもんな」

「俺はとりあえずメイが婚約解消して傷ついているのに、傷つけた本人がまたメイに絡んできて傷つけるのを阻止できればいいんだ」

「ねえ?メイ嬢とアランってどんな関係なの?」

「……カイルの嫁のエイミーの義妹。エイミーが大好きすぎるメイは、俺を見ると絡んで来て、エイミーに意地悪するなとか言ってくるんでいつも適当にあしらってた関係かな」

クスクス笑い出したカイルが説明を付け足した。

「エイミーがアランといつも成績を競い合ってたんだ、と言っても一方的にエイミーがライバル心燃やしていただけだと思うけどね、それでエイミーが悔しがる姿を見てメイはアランが悪いと思ってアランに食ってかかってたんだ」

「うわ!それって……アラン可哀想」

「うん、でもアランの態度も小馬鹿にしていたから仕方ないよね?楽しんでいたもんね」

「まあ、二人をあしらうのは苦ではなかったしね」

「だからアランがメイ嬢とは自然なんだ」

「そうか、自然に見えるんだ……」
俺は今まで気にもしなかった。

「無自覚なイケメン怖いね」
同僚の言っている意味が分からず、無視する。

「俺は偽装でメイと付き合うつもりはない。何かあればもちろん守ってあげるつもりだ」

「マーク・ブリスは女癖があまり良くないよね、メイは顔だけに惹かれて婚約したのかな?」

「女癖が悪いってことはそれだけ女にモテるって事だろう?やっぱりマメで優しいんじゃないですか?」

同僚が俺を見て言った。

「俺は優しくもマメでもないからな!」

「知ってる!お前こそもう少し女性に優しくすればもっとモテるのに!」

「そんなの面倒だからいいよ、俺は好きな人一人いればいいんだ」


「そろそろ話はやめて行こうか?」

今日は王立図書館に行き、カイル様の研究に必要な本を探すことになっている。

彼は国の農業発展のためにその土地土地に合う作物を見つけ出し、品種改良をしている。

そのため外国の作物などの情報も必要なので時間がある時は時折図書館へ通われている。

そして図書館につき、カイル様と本を探していると

「やめてください」
と、奥から聞いたことがある声が聞こえてきた。

仕方なく覗くとやはりジンジャー嬢が18歳くらいの若者に絡まれていた。

この若者は、怖いもの知らずだなと思わずにいられなかった。

まさか近衛騎士団長の娘で侯爵家の御令嬢でもあるジンジャー嬢に声を掛けて、何か少しでもすれば即刻この王都から追い出されるだろう。

もう二度とこの土地に足を踏み入れることは出来ないだろう。
気の毒に……

それに俺はこの子に関わらないと決めていた。

同僚を呼んで、俺の代わりに助けてもらおうと思ったら、ジンジャー嬢の体に抱きつき無理矢理キスを迫り始めた。

ほんとこのくらいの年頃の男子ってやりたい盛りなんだと呆れながら、仕方なく
「おい、この図書館の中で何しているんだ!」

「はあ?たかが騎士風情で僕に失礼なことを言ってるんだ!
僕は伯爵令息なんだ!」

「そうですか、わたしは近衛騎士第3部隊副隊長アランと申します」

「げっ!」
俺は今こそ平民だけど結構貴族の中では名が通っている。

「やめていただけますか?」

「ぼ、僕は何もしていない!この子が僕に迫ってきたんだ!」

「そうは見えませんでしたが?」

「平民の騎士が僕に逆らうのか?お父様に言ってお前なんか首にしてやる!」

「ほお、君はどこの伯爵の息子なんだい?」
後ろから楽しそうな声が聞こえた。







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