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58話
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「気にはならなかったんだ……」
俺は思わずポロッと言葉に出た。
「え?」
イーゼ嬢がキョトンとしていたので、俺は思わず「やばい」と思い、反対を向くと、そこにはニヤッと笑う侯爵の顔があった。
俺はそのまま一瞬固まったが、更に侯爵から目を逸らすことも出来ずに気不味い顔をするしかなかった。
侯爵は、俺の顔を見て
ポンっと、肩を叩いて出て行った。
「ではアラン、俺はもう時間がないのでこれで失礼するよ」
その後イーゼ嬢は、
「リベルは今時間はありますか?この前出した宿題を少し見たいのですが、会いに行ってもよろしいですか?」
「あー……よろしく、頼む。いつもありがとう」
俺は頭をボリボリ掻きながら、イーゼ嬢にお礼を言って部屋から送り出した。
「…………クッ……ブッハァ」
俺の横に座っていたガゼルが吹き出して、笑い出した。
「アラン様、無自覚過ぎ」
「何がだ!」
俺はイラッとしてガゼルを睨んだ。
「アラン様がいくら睨んでも怖くはありませんよ、貴方は私にとって弟のようなものですからね」
ガゼルとはずっと子どもの時から一緒だった。
俺が母上と二人っきりの屋敷で過ごすのに寂しいだろうと執事のロイがガゼルを屋敷に連れて来てくれた。
ガゼルは俺より5歳年上で俺も兄のように慕った。
優しくもあり厳しい人だ。
俺が侯爵の息子だからと言って甘やかさず、駄目なことは駄目だと教えてくれた。
これは我儘で我慢も必要だとか、使用人だからと言ってどんな酷いことを言ってもいいわけではない、使用人も人なんだから感情もあるし悲しくなったり笑ったりもする。
そんな当たり前のことすら母上は教えてくれなかった。
いや、自ら使用人を人として扱っていなかった。
そんな母上を見て育った俺は最初は本当に酷い我儘な糞ガキだったと思う。
それを変えて行ってくれたのが、ガゼルだ。
俺の良き兄貴でもあり、父上より怖い父上みたいな人だった。
だから、大人になった今でもガゼルには頭が上がらない。
「アラン様は、最近ご自分の気持ちに少しはお気付きでしょう?」
「おまえ、何が言いたいんだ?」
「ハァー、無自覚ってほんと、面倒ですね」
そう言うと俺を見て気の毒そうな顔をして
「わたしは先ほどの話し合いの案件を書類にまとめますのでこれで失礼します。アラン様も山のようにある書類にさっさと目を通してください」
と言って出て行った。
言い捨てられて俺は、ガゼルの答えの意味が分からずしばらく考えていたが、面倒なので執務室に戻り仕事をすることにした。
廊下を歩いていると庭が見えた。
庭にあるテーブルにリベルとイーゼ嬢が座り勉強をしている姿が窓から見えた。
二人が楽しく話している姿は微笑ましく、思わず見つめてしまった。
(俺は最近、イーゼ嬢とゆっくり話すこともなかった)
ふと立ち止まっていたことに気がついて我に帰ると、俺は執務室に慌てて向かった。
最近の俺はなんだかパッとしない。
執務室に戻り、手始めに手紙の束の中身を取り出して読んでいると、そこにはメイからの招待状が入っていた。
婚約パーティーの招待状だった。
メイより3歳年上の伯爵家のトールだった。
俺の2歳年上で親しくはないが面識はある。
元婚約者のマーク・ブリスとは違い、真面目で大人しい性格の人だ。
メイがハキハキしているのでトールなら性格的に合っていると思う。
俺は参加で返事を出すことにした。
俺は思わずポロッと言葉に出た。
「え?」
イーゼ嬢がキョトンとしていたので、俺は思わず「やばい」と思い、反対を向くと、そこにはニヤッと笑う侯爵の顔があった。
俺はそのまま一瞬固まったが、更に侯爵から目を逸らすことも出来ずに気不味い顔をするしかなかった。
侯爵は、俺の顔を見て
ポンっと、肩を叩いて出て行った。
「ではアラン、俺はもう時間がないのでこれで失礼するよ」
その後イーゼ嬢は、
「リベルは今時間はありますか?この前出した宿題を少し見たいのですが、会いに行ってもよろしいですか?」
「あー……よろしく、頼む。いつもありがとう」
俺は頭をボリボリ掻きながら、イーゼ嬢にお礼を言って部屋から送り出した。
「…………クッ……ブッハァ」
俺の横に座っていたガゼルが吹き出して、笑い出した。
「アラン様、無自覚過ぎ」
「何がだ!」
俺はイラッとしてガゼルを睨んだ。
「アラン様がいくら睨んでも怖くはありませんよ、貴方は私にとって弟のようなものですからね」
ガゼルとはずっと子どもの時から一緒だった。
俺が母上と二人っきりの屋敷で過ごすのに寂しいだろうと執事のロイがガゼルを屋敷に連れて来てくれた。
ガゼルは俺より5歳年上で俺も兄のように慕った。
優しくもあり厳しい人だ。
俺が侯爵の息子だからと言って甘やかさず、駄目なことは駄目だと教えてくれた。
これは我儘で我慢も必要だとか、使用人だからと言ってどんな酷いことを言ってもいいわけではない、使用人も人なんだから感情もあるし悲しくなったり笑ったりもする。
そんな当たり前のことすら母上は教えてくれなかった。
いや、自ら使用人を人として扱っていなかった。
そんな母上を見て育った俺は最初は本当に酷い我儘な糞ガキだったと思う。
それを変えて行ってくれたのが、ガゼルだ。
俺の良き兄貴でもあり、父上より怖い父上みたいな人だった。
だから、大人になった今でもガゼルには頭が上がらない。
「アラン様は、最近ご自分の気持ちに少しはお気付きでしょう?」
「おまえ、何が言いたいんだ?」
「ハァー、無自覚ってほんと、面倒ですね」
そう言うと俺を見て気の毒そうな顔をして
「わたしは先ほどの話し合いの案件を書類にまとめますのでこれで失礼します。アラン様も山のようにある書類にさっさと目を通してください」
と言って出て行った。
言い捨てられて俺は、ガゼルの答えの意味が分からずしばらく考えていたが、面倒なので執務室に戻り仕事をすることにした。
廊下を歩いていると庭が見えた。
庭にあるテーブルにリベルとイーゼ嬢が座り勉強をしている姿が窓から見えた。
二人が楽しく話している姿は微笑ましく、思わず見つめてしまった。
(俺は最近、イーゼ嬢とゆっくり話すこともなかった)
ふと立ち止まっていたことに気がついて我に帰ると、俺は執務室に慌てて向かった。
最近の俺はなんだかパッとしない。
執務室に戻り、手始めに手紙の束の中身を取り出して読んでいると、そこにはメイからの招待状が入っていた。
婚約パーティーの招待状だった。
メイより3歳年上の伯爵家のトールだった。
俺の2歳年上で親しくはないが面識はある。
元婚約者のマーク・ブリスとは違い、真面目で大人しい性格の人だ。
メイがハキハキしているのでトールなら性格的に合っていると思う。
俺は参加で返事を出すことにした。
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