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キース
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「ダイアナが消えた?」
実家から慌ててやってきた執事からの報告に驚いて思わず大きな声が出てしまった。
「どう言うことだ?」
「実は、ダイアナ様が目覚められてしばらくしてからご実家の侍女長がお荷物を届けに来られました。その後侍女長が帰られて奥様がお医者様にダイアナ様のことを伝えに行っている間にダイアナ様の姿が消えていたのです」
「荷物は?失くなったものはないのか?」
「鞄はそのまま置かれておりました。部屋も荒らされた様子はなかったです」
「ダイアナに見張りは?」
「いえ、屋敷の中なので見張りはついておりませんでした。侍女達がこまめに顔を出してはいましたが……誰に聞いてもダイアナ様の姿を見ていないのです、まるで神隠しにあったように突然姿を消されました」
「突然姿を消すわけがないだろう?何かないのか?」
「……わかりません、あ……窓が開いていました。この時期に窓を開けることはないのに……でもキース様もご存知だと思いますがダイアナ様がおられた客室は3階ですので窓からの出入りはできないと思います」
「影」はダイアナにはついていない。前公爵のことは報告が入っていた。今朝方、孫の二人を無理やり連れ帰り地下に閉じ込めたと。
そして公爵が前公爵のところへ話をしに行ったことまでは確認が取れている。
その時の報告にはダイアナについてのことは何も言っていなかった。公爵にダイアナを連れてこいと命令していただけだった。
「母上は何か言ってなかったのか?」
「奥様がダイアナ様が目覚めたと聞いて顔を出しに行ったら、ダイアナ様の顔色が悪くご実家の侍女長に対して早く部屋を出て行って欲しそうに見えたので診察をすると言って追い出したらしいのですがしつこく屋敷に居座ろうとしていたらしいです」
「居座ろうとした?」
「はい、診察するなら結果を聞いてから帰りたいと言っていたらしいです。公爵も心配しているだろうからと」
「あの公爵が心配していると?」
あの人は使用人の前でもダイアナに冷たい態度をとっていた。心配すると誰も思っていないはず。
「屋敷に一旦戻る」
俺は馬を走らせて屋敷に帰った。
ダイアナのいた客室へ行くと、微かな匂いを感じた。
「この匂いは?」
「何か匂いますか?」
部屋に一緒に入った使用人が何か匂うのだろうかと鼻をクンクンさせて嗅いでいた。
たぶんこの匂いを知っている俺だから微かに残る匂いがわかったのだろう。
「荷物はこれか?誰か開けたりした者はいるのか?」
「いえ、ダイアナ様の許可も得ず勝手に開けたりはしておりません」
俺は確認してからハンカチで口を押さえながら鞄を開けた。
やはりこの鞄から薬品の匂いがした。
揮発性の睡眠薬であろう中身が入っていた瓶の蓋が開いていた。
「お前達は外に出ていろ」
もうほとんど中身が入ってはいなかったが瓶の口を布で何重にも塞いだ。窓が開いていたのはこの睡眠薬を消すためだったのだろう。
ただたくさんの使用人がいる中でダイアナが消えるわけがない。ダイアナを欲しているのは前公爵。
ーー考えろ!俺は何を見落としているんだ。
ダイアナが突然消えるわけがない。
隠したのはだれだ?どうやって連れ去る?
ーーまさかうちの屋敷の者達?
「うちの使用人全てを一箇所に集めてくれ。全員だ、もし少しでも怪しい動きをしたり逃げ出そうとした者は捕まえろ!」
俺は母上のところへ行った。
「母上、すみませんダイアナのことでご心配かけました」
「ダイアナは見つかる?どうしてこんなことになったのかしら?」
いつも飄々として掴みどころのない母上だが、流石にダイアナが居なくなって慌てているようだ。
「ダイアナは連れ戻します。今使用人全てを集めています。ですから母上のそばに誰も居なくなります。なので一緒に来てください。母上を人質に取られては俺も自由に動けませんので俺の横にいてください」
「わ、わかったわ。使用人の誰かが悪いことをしたの?」
「わかりませんが突然消えることはあり得ません。なのでそう思わせることができるのは使用人しかいないと思ったのです」
母上を連れて使用人が集まっている部屋に向かった。
その頃には騎士団の騎士達が数十人俺の屋敷に来てくれていた。
「母上の護衛を頼む」
信頼をおける二人の騎士に母上を託した。
俺は一人一人の目を見た。
大体は何事かと言う顔をしていた。
ダイアナが居なくなったことは知っているので、何か知らないかと聞かれるのだろうと思っているのか青い顔をしたり動揺している者は殆どいなかった。
だが俺と目が合うとふと視線を逸らす者が数人いた。怪しそうな者だけを残してあとは仕事に戻ってもらった。
今まで騎士をしてきた勘のようなもの。
怪しいと思った使用人達にもう一度一人一人じっと黙って見ていった。
やはりドギマギして見える、
「ダイアナの行方を知っている者はいるのか?今なら重い罪は与えない、しかし黙っていてあとで全てわかったら死刑も覚悟しておいて欲しい。貴族のしかも公爵令嬢を攫ったんだ。さらに雇われている侯爵家を裏切り犯罪を犯したんだ、酌量の余地は殆どない。今だけだ」
実家から慌ててやってきた執事からの報告に驚いて思わず大きな声が出てしまった。
「どう言うことだ?」
「実は、ダイアナ様が目覚められてしばらくしてからご実家の侍女長がお荷物を届けに来られました。その後侍女長が帰られて奥様がお医者様にダイアナ様のことを伝えに行っている間にダイアナ様の姿が消えていたのです」
「荷物は?失くなったものはないのか?」
「鞄はそのまま置かれておりました。部屋も荒らされた様子はなかったです」
「ダイアナに見張りは?」
「いえ、屋敷の中なので見張りはついておりませんでした。侍女達がこまめに顔を出してはいましたが……誰に聞いてもダイアナ様の姿を見ていないのです、まるで神隠しにあったように突然姿を消されました」
「突然姿を消すわけがないだろう?何かないのか?」
「……わかりません、あ……窓が開いていました。この時期に窓を開けることはないのに……でもキース様もご存知だと思いますがダイアナ様がおられた客室は3階ですので窓からの出入りはできないと思います」
「影」はダイアナにはついていない。前公爵のことは報告が入っていた。今朝方、孫の二人を無理やり連れ帰り地下に閉じ込めたと。
そして公爵が前公爵のところへ話をしに行ったことまでは確認が取れている。
その時の報告にはダイアナについてのことは何も言っていなかった。公爵にダイアナを連れてこいと命令していただけだった。
「母上は何か言ってなかったのか?」
「奥様がダイアナ様が目覚めたと聞いて顔を出しに行ったら、ダイアナ様の顔色が悪くご実家の侍女長に対して早く部屋を出て行って欲しそうに見えたので診察をすると言って追い出したらしいのですがしつこく屋敷に居座ろうとしていたらしいです」
「居座ろうとした?」
「はい、診察するなら結果を聞いてから帰りたいと言っていたらしいです。公爵も心配しているだろうからと」
「あの公爵が心配していると?」
あの人は使用人の前でもダイアナに冷たい態度をとっていた。心配すると誰も思っていないはず。
「屋敷に一旦戻る」
俺は馬を走らせて屋敷に帰った。
ダイアナのいた客室へ行くと、微かな匂いを感じた。
「この匂いは?」
「何か匂いますか?」
部屋に一緒に入った使用人が何か匂うのだろうかと鼻をクンクンさせて嗅いでいた。
たぶんこの匂いを知っている俺だから微かに残る匂いがわかったのだろう。
「荷物はこれか?誰か開けたりした者はいるのか?」
「いえ、ダイアナ様の許可も得ず勝手に開けたりはしておりません」
俺は確認してからハンカチで口を押さえながら鞄を開けた。
やはりこの鞄から薬品の匂いがした。
揮発性の睡眠薬であろう中身が入っていた瓶の蓋が開いていた。
「お前達は外に出ていろ」
もうほとんど中身が入ってはいなかったが瓶の口を布で何重にも塞いだ。窓が開いていたのはこの睡眠薬を消すためだったのだろう。
ただたくさんの使用人がいる中でダイアナが消えるわけがない。ダイアナを欲しているのは前公爵。
ーー考えろ!俺は何を見落としているんだ。
ダイアナが突然消えるわけがない。
隠したのはだれだ?どうやって連れ去る?
ーーまさかうちの屋敷の者達?
「うちの使用人全てを一箇所に集めてくれ。全員だ、もし少しでも怪しい動きをしたり逃げ出そうとした者は捕まえろ!」
俺は母上のところへ行った。
「母上、すみませんダイアナのことでご心配かけました」
「ダイアナは見つかる?どうしてこんなことになったのかしら?」
いつも飄々として掴みどころのない母上だが、流石にダイアナが居なくなって慌てているようだ。
「ダイアナは連れ戻します。今使用人全てを集めています。ですから母上のそばに誰も居なくなります。なので一緒に来てください。母上を人質に取られては俺も自由に動けませんので俺の横にいてください」
「わ、わかったわ。使用人の誰かが悪いことをしたの?」
「わかりませんが突然消えることはあり得ません。なのでそう思わせることができるのは使用人しかいないと思ったのです」
母上を連れて使用人が集まっている部屋に向かった。
その頃には騎士団の騎士達が数十人俺の屋敷に来てくれていた。
「母上の護衛を頼む」
信頼をおける二人の騎士に母上を託した。
俺は一人一人の目を見た。
大体は何事かと言う顔をしていた。
ダイアナが居なくなったことは知っているので、何か知らないかと聞かれるのだろうと思っているのか青い顔をしたり動揺している者は殆どいなかった。
だが俺と目が合うとふと視線を逸らす者が数人いた。怪しそうな者だけを残してあとは仕事に戻ってもらった。
今まで騎士をしてきた勘のようなもの。
怪しいと思った使用人達にもう一度一人一人じっと黙って見ていった。
やはりドギマギして見える、
「ダイアナの行方を知っている者はいるのか?今なら重い罪は与えない、しかし黙っていてあとで全てわかったら死刑も覚悟しておいて欲しい。貴族のしかも公爵令嬢を攫ったんだ。さらに雇われている侯爵家を裏切り犯罪を犯したんだ、酌量の余地は殆どない。今だけだ」
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