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わたしの生まれた国は他国に比べるととても小さな国。
自然が豊かで国民は笑顔が絶えなかった。わたしの大好きな国。
ただ、他国と違い珍しい黒髪の人が多い。
外国では黒髪を嫌いい受け入れてもらえないことが多い。
お父様に15歳の時、留学をしたいとお願いをしたら
「留学は認めない。行けばエレファが傷つくだけだ」
「黒髪は忌み嫌われるからですか?」
「……そうだ、まだまだ偏見の目で見るものは多い。それにブラン王国には昔魔法があった、その力を恐れているんだろう」
「そんな力はもうほとんど残っていないのに」
「確かにそうだ、だが王族にはまだ力を使える者がいる。そうだろう?エレファ」
「……わたしは自分の為に使おうとは思っておりません」
「わかっている、だが、もし悪用されれば?お前だってもしもの時に身を守る為に使ってしまうかもしれない。そうなれば噂ではなく現実になり脅威になってブラン王国が危険に晒されるかもしれない」
「そんな大袈裟だわ」
わたしはそんな馬鹿げたことはないと一笑した。
それからはしばらくお父様と喧嘩になった。
「行きたい」「駄目だ」お互い譲らず最後にお母様が間に入ってくれて、わたしの意思を尊重してくれた。
わたしが向かった国は、ジズリーヌ国。
隣国とは言え船に乗って一週間程かかる我が国からすると大国だ。
学院に留学することになりお母様の友人の侯爵家を頼った。わたしと同じ歳の女の子がいるらしい。
ドキドキしながら挨拶をするとそこにいた女の子は美少女でとても可愛らしい笑顔で「わたしの名前はリヴェール・ベルナンテ、貴女と同じ15歳よ。よろしくね」と挨拶をしてきた。
「こちらこそよろしくお願いいたします。エレファ・ブランと申します。2年間お世話になります」
「ねぇ、よかったらわたしの部屋に来ない?お話ししましょうよ」
人見知りのない性格ですぐにわたしを受け入れてくれてリヴェールとはすぐに仲良くなった。
学院はどんなところか説明してくれた。
「先生でね、カツラの先生がいるんだけどとっても性格が悪いの。だからエレファは気をつけてね。その髪の色で嫌なこと言われるかもしれないから」
「あと、生徒会に入っているダニエルはツンと澄ましているからあまり関わらない方がいいと思うわ。逆にデヴィッドは人懐っこいの。けれどすぐ話しかけてくるから相手にしないで」
「わたしの親友のアシュアとデヴィッドは婚約しているのだけど、わたしは反対なの。デヴィッドにアシュアは勿体無いわ。そうそう今度会わせてあげるわね、たぶん気が合うと思うの」
いろんな話をたくさんしてくれた。
「リヴェールのおかげで楽しく学院に通えそうだわ」
そして、わたしはリヴェールとアシュアのおかげで黒髪で虐められたり嫌なことを言われることなく過ごすことができた。
もちろん王女であることから、ジズリーヌ国の陛下も心を砕いてくださり安心して通うことができた。
◇ ◇ ◇
学院にも慣れてきた頃事件は起きた。
リヴェールもアシュアも先生に呼ばれて職員室へと行ってしまった。わたしは一人でのんびり机で本を読んでいた。
「あら?一人で寂しそうね?」
クラスメイトの女子が数人机の周りにやってきた。
「ええ、二人とも用事があって……何かご用ですか?」
何か言いたいのだとわかっていて気づかないフリをして笑顔で答えた。
「その黒い髪は本物なのかと思って」
一人の女子生徒が言うと周りの女子生徒達がクスクスと笑い出した。
ーーああ、これがお父様が心配していたやつね。
「ええ、触ってみてはどうかしら?」
わたしは長い黒髪を解き、彼女たちに微笑み返した。
「え?いやよ、呪われそうだわ」
「黒髪は不吉だと言われているもの」
「この国に黒髪はほとんどいないのに。どうしてここにいるのかしら?」
少しずつ女子生徒たちの声が大きくなってきた。
嘲るのを楽しんでいるのか、少しテンションが上がってきているのがわかった。
ーーこのままだとしばらくはターゲットにされ続けるわね。
でもあまり強く言い返せばさらに強気で返されそうだし、面倒なので適当に流すことにした。
「わたしは留学生です。この国ではそう思われているのかもしれませんが、我が国で黒髪は普通のことです」
「まあ、呪われた国なのね」
みんな遠巻きに見ていても助けようとする人はいない。それどころかわたしが言われているのを見てニヤニヤ笑う生徒も出てきた。
ーーはあ、どこの国も同じよね、人が虐められているのを見て喜ぶんだもの。
仕方なく黙って言われるがままでいることにした。
昼休みが終わるのも後18分ほど。
もう少し我慢すればいいのだもの。
「ほんとリヴェール様もアシュア様もお友達はお選びになった方がいいと思うわ。ブラン王国のどこぞの貴族か知らないけど侯爵家のお二人がお付き合いするような人には見えませんもの」
「ほんと黒髪なんかと付き合ったら品格まで疑われるわ」
「へぇ?君たちエレファ様はリヴェール達が付き合うには不十分なんだと思っているんだ?」
「あ、あ、ダニエル様?」
冷たい声色で女子生徒に話しかけてきたのはダニエル・バーランド、公爵家の嫡男で生徒会長をしている優秀だと言われている人だった。
話したこともなかったので思わずまた黙ったままでいたら、
「エレファ様は下の名前を隠しているけど、ブラン王国の王女だよ?君たちこそ不敬で捕まるかもしれないよ?」
ーーどうしてわたしの身分をバラすの?わたしは目を見開きダニエル様を見た。
「この国は縦社会がしっかりしていてとても厳しいんだ。君もきちんと周りに身分を伝えないと周りに侮られる。それを良しと思っているのは君の勝手だけど、こうやって君に怖いもの知らずで言ってくる子たちは、後々自分の父親やその地位にまで影響するんだ。
自分が我慢をすればいいと思っていてもそれがこの子達の将来や家族にまで影響することも考えないといけないと思うよ」
「……ごめんなさい、そこまで考えていなかったわ。確かにわたしはブラン王国の王女のエレファ・ブランです。きちんと名を名乗らずに過ごしてしまい申し訳ありませんでした。これでリヴェールやアシュアと仲良くしてもいいかしら?」
「申し訳ありませんでした」真っ青な顔をして震える女子生徒達。たぶん伯爵位や子爵位の娘たちなのだと思う。
慌てて謝ると去って行った。辺りを見回すと視線を逸らしやはりみんなどこかへ行ってしまった。
気がつけばダニエル様と二人っきり。
「ダニエル様、嫌なお役目をさせてしまって申し訳ありませんでした。わたしは確かに自分のことを言いたくがない為に甘んじていろいろ言われることを受け入れるつもりでした。それが相手の子達にとって不利益になるかなんて考えもせず、将来を潰さなくて良かったと思います」
「くくくっ、大袈裟だね。君のことを責めたくらいでお家取り潰しにまではならないよ。ちょっと脅かしただけさ。あの子達、自分より下だと思うと誰にでもあんな態度を取るんだ。ちょっと懲らしめたくてね」
「あら?そうだったの?」
わたしはさっきまで冷たく突き放す物言いをしていたダニエル様が笑っている姿を見て、目が離せなくなってしまった。
ーーなんてギャップが凄いのかしら。クールな時もかっこいいけど笑っている顔はとても可愛く感じるわ。
そしてそのことがをきっかけでダニエル様と話す機会が増えていった。
自然が豊かで国民は笑顔が絶えなかった。わたしの大好きな国。
ただ、他国と違い珍しい黒髪の人が多い。
外国では黒髪を嫌いい受け入れてもらえないことが多い。
お父様に15歳の時、留学をしたいとお願いをしたら
「留学は認めない。行けばエレファが傷つくだけだ」
「黒髪は忌み嫌われるからですか?」
「……そうだ、まだまだ偏見の目で見るものは多い。それにブラン王国には昔魔法があった、その力を恐れているんだろう」
「そんな力はもうほとんど残っていないのに」
「確かにそうだ、だが王族にはまだ力を使える者がいる。そうだろう?エレファ」
「……わたしは自分の為に使おうとは思っておりません」
「わかっている、だが、もし悪用されれば?お前だってもしもの時に身を守る為に使ってしまうかもしれない。そうなれば噂ではなく現実になり脅威になってブラン王国が危険に晒されるかもしれない」
「そんな大袈裟だわ」
わたしはそんな馬鹿げたことはないと一笑した。
それからはしばらくお父様と喧嘩になった。
「行きたい」「駄目だ」お互い譲らず最後にお母様が間に入ってくれて、わたしの意思を尊重してくれた。
わたしが向かった国は、ジズリーヌ国。
隣国とは言え船に乗って一週間程かかる我が国からすると大国だ。
学院に留学することになりお母様の友人の侯爵家を頼った。わたしと同じ歳の女の子がいるらしい。
ドキドキしながら挨拶をするとそこにいた女の子は美少女でとても可愛らしい笑顔で「わたしの名前はリヴェール・ベルナンテ、貴女と同じ15歳よ。よろしくね」と挨拶をしてきた。
「こちらこそよろしくお願いいたします。エレファ・ブランと申します。2年間お世話になります」
「ねぇ、よかったらわたしの部屋に来ない?お話ししましょうよ」
人見知りのない性格ですぐにわたしを受け入れてくれてリヴェールとはすぐに仲良くなった。
学院はどんなところか説明してくれた。
「先生でね、カツラの先生がいるんだけどとっても性格が悪いの。だからエレファは気をつけてね。その髪の色で嫌なこと言われるかもしれないから」
「あと、生徒会に入っているダニエルはツンと澄ましているからあまり関わらない方がいいと思うわ。逆にデヴィッドは人懐っこいの。けれどすぐ話しかけてくるから相手にしないで」
「わたしの親友のアシュアとデヴィッドは婚約しているのだけど、わたしは反対なの。デヴィッドにアシュアは勿体無いわ。そうそう今度会わせてあげるわね、たぶん気が合うと思うの」
いろんな話をたくさんしてくれた。
「リヴェールのおかげで楽しく学院に通えそうだわ」
そして、わたしはリヴェールとアシュアのおかげで黒髪で虐められたり嫌なことを言われることなく過ごすことができた。
もちろん王女であることから、ジズリーヌ国の陛下も心を砕いてくださり安心して通うことができた。
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学院にも慣れてきた頃事件は起きた。
リヴェールもアシュアも先生に呼ばれて職員室へと行ってしまった。わたしは一人でのんびり机で本を読んでいた。
「あら?一人で寂しそうね?」
クラスメイトの女子が数人机の周りにやってきた。
「ええ、二人とも用事があって……何かご用ですか?」
何か言いたいのだとわかっていて気づかないフリをして笑顔で答えた。
「その黒い髪は本物なのかと思って」
一人の女子生徒が言うと周りの女子生徒達がクスクスと笑い出した。
ーーああ、これがお父様が心配していたやつね。
「ええ、触ってみてはどうかしら?」
わたしは長い黒髪を解き、彼女たちに微笑み返した。
「え?いやよ、呪われそうだわ」
「黒髪は不吉だと言われているもの」
「この国に黒髪はほとんどいないのに。どうしてここにいるのかしら?」
少しずつ女子生徒たちの声が大きくなってきた。
嘲るのを楽しんでいるのか、少しテンションが上がってきているのがわかった。
ーーこのままだとしばらくはターゲットにされ続けるわね。
でもあまり強く言い返せばさらに強気で返されそうだし、面倒なので適当に流すことにした。
「わたしは留学生です。この国ではそう思われているのかもしれませんが、我が国で黒髪は普通のことです」
「まあ、呪われた国なのね」
みんな遠巻きに見ていても助けようとする人はいない。それどころかわたしが言われているのを見てニヤニヤ笑う生徒も出てきた。
ーーはあ、どこの国も同じよね、人が虐められているのを見て喜ぶんだもの。
仕方なく黙って言われるがままでいることにした。
昼休みが終わるのも後18分ほど。
もう少し我慢すればいいのだもの。
「ほんとリヴェール様もアシュア様もお友達はお選びになった方がいいと思うわ。ブラン王国のどこぞの貴族か知らないけど侯爵家のお二人がお付き合いするような人には見えませんもの」
「ほんと黒髪なんかと付き合ったら品格まで疑われるわ」
「へぇ?君たちエレファ様はリヴェール達が付き合うには不十分なんだと思っているんだ?」
「あ、あ、ダニエル様?」
冷たい声色で女子生徒に話しかけてきたのはダニエル・バーランド、公爵家の嫡男で生徒会長をしている優秀だと言われている人だった。
話したこともなかったので思わずまた黙ったままでいたら、
「エレファ様は下の名前を隠しているけど、ブラン王国の王女だよ?君たちこそ不敬で捕まるかもしれないよ?」
ーーどうしてわたしの身分をバラすの?わたしは目を見開きダニエル様を見た。
「この国は縦社会がしっかりしていてとても厳しいんだ。君もきちんと周りに身分を伝えないと周りに侮られる。それを良しと思っているのは君の勝手だけど、こうやって君に怖いもの知らずで言ってくる子たちは、後々自分の父親やその地位にまで影響するんだ。
自分が我慢をすればいいと思っていてもそれがこの子達の将来や家族にまで影響することも考えないといけないと思うよ」
「……ごめんなさい、そこまで考えていなかったわ。確かにわたしはブラン王国の王女のエレファ・ブランです。きちんと名を名乗らずに過ごしてしまい申し訳ありませんでした。これでリヴェールやアシュアと仲良くしてもいいかしら?」
「申し訳ありませんでした」真っ青な顔をして震える女子生徒達。たぶん伯爵位や子爵位の娘たちなのだと思う。
慌てて謝ると去って行った。辺りを見回すと視線を逸らしやはりみんなどこかへ行ってしまった。
気がつけばダニエル様と二人っきり。
「ダニエル様、嫌なお役目をさせてしまって申し訳ありませんでした。わたしは確かに自分のことを言いたくがない為に甘んじていろいろ言われることを受け入れるつもりでした。それが相手の子達にとって不利益になるかなんて考えもせず、将来を潰さなくて良かったと思います」
「くくくっ、大袈裟だね。君のことを責めたくらいでお家取り潰しにまではならないよ。ちょっと脅かしただけさ。あの子達、自分より下だと思うと誰にでもあんな態度を取るんだ。ちょっと懲らしめたくてね」
「あら?そうだったの?」
わたしはさっきまで冷たく突き放す物言いをしていたダニエル様が笑っている姿を見て、目が離せなくなってしまった。
ーーなんてギャップが凄いのかしら。クールな時もかっこいいけど笑っている顔はとても可愛く感じるわ。
そしてそのことがをきっかけでダニエル様と話す機会が増えていった。
応援ありがとうございます!
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