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第1章 月森ヶ丘自由学園
スミマセン!室長、フォローできません!
しおりを挟む「…そこは、普通二人の身を按じるところだと思いますが」
「無駄ネ。銀髪君。ボスは冷酷非道人間ネ!慈愛・慈悲を持つ心なんて、持ち合わせてないヨ」
皮肉を込めて言うシフォンに応えたのは岬ではなく、岬をフォローするように言う崙、だが、その崙から放たれる言葉は岬をフォローというよりも、寧ろ…
「…崙、貴方‥‥僕をけなしてるんですか…?」
ニコリともせず、無表情で崙を見据える岬。
「酷いネ。私はボスをフォローしただけヨ」
「……」
場にそぐわぬニコニコ顔の崙に岬は些か眉を寄せるも、無言で再び歩きだす。そこは薄暗く幅狭く長い道、岬達はひたすらその道を歩いていく‥
歩くごとに、変わる風景。周りはいつしか、古びた鉄格子で囲まれた牢屋に変わっていく
…が、
先頭を歩いていた岬は何を思ってか、ふと足を止め、前を見据えると、少し離れた先にある一室の牢屋にだけ、明かりがついている。岬は口元に人差し指を立てて、喋るな!と目で伝えると耳を澄ます
そして聞こえた複数の男の息遣いに、捜していた人物の声を聞くなり確信した。
───… 間違いない。
岬はさらに話の内容を聞こうと気配を殺し、足を忍ばせると、聞こえた内容に思わず顔を強張らせる。
その内容とは‥
「ねぇねぇ、おじさん達さぁ、俺のこと知らないの?俺さぁ、これでも一応有名人なんだけど…」
という青年らしき声と
「は!?有名? 笑わせんな!おめぇは確かに美形だけどよぉ、その変人なところが玉に傷だな」
ガハハッと豪快に笑う男達に岬は頭が痛くなった‥。
「………」
岬が聞き耳を立てている間も会話は続く。
「あれぇ‥? 俺、これでも王子なんだけど…ホントに知らないの?」
がっかりしたように落胆の声を漏らす青年に岬は段々と眉間に皺を寄せていく
「王子~?あぁ確かに、おめぇは王子並に美形だけどよぉ?お前が王子?アヒャヒャ!!笑える冗談だ」
自分を王子だと名乗る青年をまったく相手にしない見張りの男に拗ねた声。
「むぅっ…おじさん達、信じてないでしょ?ホントに本当なんだって!」
やたらと、ムキになる青年に見張りの男は適当にあしらう
「へぇへぇ…おめぇさんが王子様だってわかってますよ?んで、そういうお前は何処の国の王子様なんだい?」
男は青年の言葉を戯れ事と思い、適当に乗る‥
「俺さぁ、これでも一応英国の王子なんだよね!あ、俺の名前ね、アシス・キストラーっていうの。よろし『オイ、貴様なに、自分の価値を暴露している!? 貴様、自分の今の、この状況を理解して言っているのか!!!』
バシッと青年の頭を引っ叩く岬は、苛立ちを抑えられないのか、舌打ちすると、さらにもう一発殴る。
明らかな八つ当たりだった‥。
「な!?…し、侵入者!?」
見張りの男らが岬に襲い掛かろうとしたが、逆に岬が全て返り討ちにする。
「ぅぐっ…」
床に崩れる男らに、憐れみの視線を向けるシフォンと、相変わらず愉しそうにニコニコ顔の崙、
「痛いよ~。っていうか、君…だれ??」
いきなり、頭を叩いてきた岬の顔をマジマジと見て首を傾げる金髪に碧の瞳の青年、
「…だから、馬鹿は嫌いなんです」
些か眉を吊り上げる岬の顔は不機嫌超MAXだ。金髪の青年はその声を聞くなり、ハッ!とする。
「その、人を小馬鹿に見下すような顔にその毒舌っぷり、もしかして……クリフェイド!?」
青年は岬の顔をマジマジと見つめた。
(………この人、室長をそんな風に見てたんですね)
シフォンは、青年の岬に対する判別がそれなんだと理解すると、何故か悲しくなる‥。自分の上司がそう認識されるのは、やはり部下としては……と思うのが普通だが、青年の言っていることがまた正論なため、シフォンはフォローが出来なかった。
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