室長サマの憂鬱なる日常と怠惰な日々

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第1章 月森ヶ丘自由学園

愉しそうな崙と不安なシフォン


「さてと、話が随分ズレましたが… 崙、本題に入ります。」

すっかり、いつもの調子に戻った岬は眼鏡のブリッジを指先で軽く押し上げ、話しを切り出した。

「貴方、僕にこの間、裏切り者を始末させようとしましたよね? あれ以外にも裏切り者がいることをご存知なんでしょう?僕はその方達に用があるんで、案内を頼みたいのですが‥‥。貴方なら、知っているでしょう?彼らの潜伏先を」

「……あいやぁ!なにもかも、お見通しっていうことネ?さすが、ボス」

崙は円い黒のサングラスの奥から、獲物を見付けた野獣が如く目を細める--

「…ちょうどいいネ。私も用があるヨ。」

ニッコリ笑って崙は言った

「奴ら、中国の上海にいるネ。わざわざ足を運んでまで殺るなんて面倒くさいネ。だから、放ってたヨ。
でも、ボスが行くなら……(面白くなりそうネ)私、喜んで案内するヨ」

ニコニコ顔の崙に、その性格を知っている岬はひそかに眉を寄せる‥

(なにを企んでる?)

――が、岬は知らない。崙がまさに今の状況を愉しんでいることを…

そして、岬の隠された素性をさらに知ることができるチャンスだと、岬の行動を、これからの展開を… 心底愉しみにしている崙だった――‥。

「ちょっと待ってくださいよっ隊長、まさかっ本当にこの方に案内を頼むつもりですか!? 詐欺師ですよ!彼っ!!」

岬を引っ張り、シフォンは声を低くして言う

「…ハァ、お前の気持ちもわからなくはない。現に僕も、この男には頼りたくなかった。だが、何せ相手が相手なら人質も人質だ。…あの私利私欲の為なら手段を選ばない卑劣な男、スクワットに…

あの、厄介事に首を突っ込む馬鹿殿下‥アシス王子だぞ?

だが、スクワットは知らない=馬鹿がいつ殺されても闇取引にかけられてもおかしくない。そうなれば…日本と英国と中国に悪い影響が出ることは明らかだ。」


「や… やっぱりマコーネルさんにも連絡した方が!!」

「おい、馬鹿な考えはよせ。もしも、そんなことをすれば必然的に英国の王家の耳に入る。そしたら、中国で全面戦争だぞ? もしも、戦争までにはいかなくてもだな、カーティス・ディーンズが来ることは明らか。奴なら、仕える主の為なら、躊躇なく他の人間を切るんだぞ? …もしも、そんなことになってみろ!本当に手に負えなくなる…。」

そうシフォンに小声で話す岬の顔は真剣だ。

「それに… だな。もし、スクワットの奴に、あの馬鹿の価値に気付かれてみろ!英国の王家は奴の言いなり‥手駒にされるのがオチ。もしくは、それを商品のネタとして闇市で馬鹿を競売にかけられるのは目に見えている‥。
だから、知られる前に奴の手の内から馬鹿を取り返す。それしか方法はない」

今のところは、な…

岬は、崙を見つめ、シフォンをも見ると何故か溜息が出たのだった‥。

「ですが… 彼の素性がよくわからない以上、俺は賛成できませんよ? もしかしたら、彼もスクワットの手下かもしれないんですから」

コソコソと岬とシフォンは互いに小声で言葉を交わす

「あぁ、それなら心配しなくて大丈夫だ。関係があると言えば、崙の元部下とスクワットの関係くらいだ。崙は… 不本意だが僕の知り合いに違いはない。そこまでは危険な奴ではないから安心しろ。…たぶん」

その岬の言葉にシフォンは眉を寄せた。

「そこまで‥? たぶん…? ホントに大丈夫なんですか」

疑い深そうに崙を見るシフォン、その視線に気付いた崙はというと‥

これはまた愉しげにニコニコとシフォンを見る。

「…シフォン、頼むから崙に喧嘩だけは売るなよ? これ以上面倒なことは、ごめんだからな」

岬とシフォンが話しに一段落ついたところへ、タイミングを計ったかのように崙は声をかけた


「善は急げっていうネ。どうする?今からでも飛び立つネ??」

「…三日後。こちらも色々と準備がありますので… 此処を三日後に出発します。」


「い、委員長っ!!やけど、そないおったら… 学園長の追っ手に‥」

「それなら心配はないヨ。ここは私のテリトリー、ネ。そんな真似はできないヨ」


意味ありげに幸村に言う崙だが、幸村はどういう意味なのか理解できないのか首を捻る。

「彼の言うとおり、此処は崙のテリトリーですから、そのへんは大丈夫ですよ。…で、崙。勿論、宿は貸して頂けるんですよね?少なくとも、貴方の"元"とはいえ、部下が関わってるんですから‥。

それくらい構わないですよね?」


ーー崙は岬達に宿の一室を無償で貸すことになった。
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