上 下
82 / 255

探りましょう!

しおりを挟む
「確か、この先の財務省に……。」

「彼ですよ、ヴァリフィア。」

「あの方ですか。殿下はこちらでお待ちを。王城の方が、禁書庫の場所を知らない訳がありませんから。」

「そうですね。お気を付けて。」

「はい。」


国王陛下が疑っている人物は5人いた。
その5人に対し、順に同じ事を繰り返していく予定だ。

私は一人で疑わしい人物に近付いて行く。
そして……


「突然申し訳ありません。少し道をお伺いしてもよろしいでしょうか…?」

「ん?構いませんよ。何処に行きたいのですか?」

「禁書庫に向かうつもりだったのですが、道に迷ってしまって。」

「禁書庫?!禁書庫ならここを曲がって階段を降りた地下にありますよ。
地下に降りたら、右に3回、左に2回曲がると着きます。ですが入れませんね。護衛の騎士の方々が守っていますから。」

「そうなのですね。」

「禁書庫とはまた……貴女は一体…?」

「私ですか?ただの令嬢です。」

「……??」


笑顔でそう言うと、彼は「はい?」とでも言わんばかりの顔をしていた。


「道案内、感謝致します。」

「え、ええ。では。」


彼はそのまま去っていった。
そして私はディルジアの所まで戻る。


「どうでしたか?」

「とても丁寧に教えて下さいましたよ。」

「そうですか。」

「時間がありません。残りの4人にも早く会いに行きましょう。」

「ええ。」


そして残りの4人にも禁書庫への道を尋ね、結果をディルジアへと伝える。
学園内に戻ってから、だが。


「ヴァリフィア、結果を聞きましょうか。」

「はい。5人の内、3人がスパイの可能性が高いでしょう。1、3、4人目の3名です。」

「答えられたのはその3人ですか……。分かりました、陛下にもお伝えしておきます。」

「確定ではないので、出来ればこの3名の詳細な情報をいただければ良いのですが……。」

「ええ。勿論、それも頼んでおきますよ。」

「感謝致します。」

(とても簡単に絞ることが出来たね。良かった、上手くいって。)


この作戦の意図はこうだ。

禁書庫の場所は、正確に知る者が限られていた。
地下にあるという事は有名だが、道が幾重にも別れており、辿りつけないようになっている。
しかし、特別な役職の者でもなくその場所を詳しく知っているという事は、あるはずだ。

少なくとも、この3名は同じような説明をした。
『右に3回、左に2回曲がる』
正確過ぎで恐ろしいほどだ。
国王陛下が認めた者にのみ知らされる禁書庫の場所を、悩む素振りもなく言った。


(王城の方に聞かれたら警戒するかもしれないけれど、普通の令嬢にしか見えない人に聞かれれば、疑いもせずに答えちゃうよね。
流れに任せるとはこういう事を言うのかな、なんて。)


それに、だ。
他国のスパイならば、禁書庫の場所がふせられている事を知らないのだろう。
誰に聞いても、
「禁書庫は地下にある」
と答えるので、知っているものと勘違いしていてもおかしくはない。


私は、とりあえず明日を待つ事にする。
直ぐにでも陛下が彼らの情報を教えて下さるだろう……。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

婚約破棄されましたが、幼馴染の彼は諦めませんでした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:1,968pt お気に入り:281

シンデレラは婚約破棄させられるそうです。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:804

誰からも愛される妹は、魅了魔法を撒き散らしていたようです

恋愛 / 完結 24h.ポイント:582pt お気に入り:128

最初に私を蔑ろにしたのは殿下の方でしょう?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:14,093pt お気に入り:1,962

1年後に離縁してほしいと言った旦那さまが離してくれません

恋愛 / 完結 24h.ポイント:3,219pt お気に入り:3,762

好きになって貰う努力、やめました。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,797pt お気に入り:2,187

悪女と呼ばれた死に戻り令嬢、二度目の人生は婚約破棄から始まる

恋愛 / 完結 24h.ポイント:2,422pt お気に入り:2,473

処理中です...