煉獄の歌 

文月 沙織

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 パシン、と瀬津を真似て、敬の尻を打ってやる。打たれた敬以上の衝撃が田中の全身をつらぬく。
 つい先日までは、自分のことを虫けらでも見るような目で見ていた高貴な〝姫君〟を、意のままにできるすさまじい快楽と興奮。
 図に乗った田中は、敬に四つんばいの姿勢を強いた。
「うう……」
 敬はさすがに悔しげに形の良い眉を寄せる。
 それを見て、さらに田中の胸内で火がぜる。
 貯めこんでいたむくわれぬ恋情は、いつしか田中のなかであまりにもり、濁り、異様なかたちに凝結していた。全身を駆けめぐる熱の正体は、激しい加虐の欲望だった。
 このとき、すでに敬の襦袢は完全に脱げていたが、さらに図に乗ってしまった田中は、襦袢と同色の緋色の帯紐で、犬にでもするようにして敬の細い首をくくり、その紐先を手にし、引っぱる。
「こ、殺せよ!」
 与えられたあまりの屈辱に、かえって意識を保ちなおした敬だが、それはかえって田中の嗜虐しぎゃくを煽ることになった。
「馬鹿、殺すわけないだろう。こんなすごい身体と顔を失くせるか」
 ぐい、ぐい、と犬の首輪よろしく紐先を引っぱる。
 あまりの恥辱に敬の顔が真っ赤になったのも田中をさらに煽る。そして、あらためて息を飲んだ。
 白い、全裸に、首だけを覆う緋の布。壮絶に淫らで、浅ましく、美しい。
「ううううう……!」
「ほら、言え!」
 パシン!
 敬が屈辱にあえぐ。
 だが、身体はこれ以上ないほど燃えているようで、その熱気が田中をも焦がす。
「すげぇ。こんなに感じて。……おまえに憧れている女どもに、この格好、見せてやりたいぜ。四つん這いになって、首輪つけられて。ひひひひひ。ほら!」
「ああ!」
 パシン、と肉を打つ音が敬と田中の耳に甘く響く。
 もはや限界だったのだろう。これ以上の我慢は、十九の肉体の持ち主には無理だったのだ。
 敬は悔しさに啜り泣きながら、とうとう薄い形の良い唇から屈服の言葉をはなち、田中を喜ばせた。
「そうだ。素直で可愛いぜ、敬。いい子だ。ほら、充分感じろよ」
 田中は腕をまわすと、指に力を込めた。
「あっ、あああああ!」
 敬は、沸騰するまで沸かされた蜜をほとぼしらせ、田中を満足させた。
「はぁ……あっ……ああ……ああ!」
 ぷつり、と糸が切れたように、その後敬は褥の上につっぷした。

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