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十
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途端に、男はまたふざけた口調で、小型マイクを口に近づける。
「さぁ、元気になった敬ちゃんの可愛い身体を皆さんに見てもらいましょう」
(え?)
後ろ向きにされていたのが唯一の救いだったが、酷くも男たちは敬の身体を客席に向かって押す。
「い、いやだ」
敬は必死に目を閉じた。
目を焼くほどに強烈な照明が敬の身体をあますところなく照らす。
無数の光の針に全身を突かれた衝撃に、敬は限界を超えた羞恥を感じて気を失いかけた。
「おお、なんて綺麗な身体でしょうね。これは芸術品です。皆様、拍手!」
失笑と、まばらな拍手が室内に響く。
だが、まばらだった拍手は、光のなかで苦しげに敬が首をのけぞらせた瞬間、高まった。
お義理やおざなりなものでなく、客たちは一瞬、琥珀色の照明のもと、黄金色に五体を染めあげられて喘ぐ美少年の姿に感激したのだ。
十九歳。少年から、まさに大人の男に変成しようという青春の盛りの肉体は、文字通り光りかがやいて見えた。ほどよく鍛えてある身体はしなやかで、男たちに抑えられてもがく姿は痛ましく、屈辱と羞恥に頬を赤く染め、いや、いや、と首を振る様子は、加虐に燃える男たちにとっては絶品だった。
何より男たちを喜ばせたのは、敬のまだ幼さを残した男の象徴が示すように、捕らわれの美少年に被虐の素質があることだ。
苦しげな表情と相反して、悦虐に反応する身体は、今宵の客たちとって壮絶なまでに魅力的だった。
「幾らで売ってくれるんだ?」
そんな誰かの呟きも聞こえてくる。
「残念ながら、敬ちゃんは今のところ非売品ですが、今宵は、皆様が心から満足できるよう、とっておきのショーをお見せします」
男は敬に顔をむけると、にっと笑ってみせた。悪魔の笑いである。
「さぁ、敬ちゃん、お客様にご挨拶にうかがいましょうか?」
いつの間にか、男の手には、ロープがあった。その先にあるのは……、敬は目を疑った。
黒革の首輪。
かっ、と身体が燃え、体内を血が逆流した気が敬はした。
憤怒に身体を小刻みにふるわせている敬を、さも小馬鹿にしたようにせせら笑い、男はまた、指揮するように手を振る。
「うわっ!」
二人の黒服が敬を低くおさえ込み、その場に四つん這いの姿勢を無理やり取らせようとする。敬は屈辱のあまり正気を失いそうになった。
こんな異常な、安っぽいポルノ小説か映画のようなことが我が身に起こるなど、いまだに信じられない。だが、これが現実であることを、尻を蹴られた痛みに思い知る。
「さぁ、元気になった敬ちゃんの可愛い身体を皆さんに見てもらいましょう」
(え?)
後ろ向きにされていたのが唯一の救いだったが、酷くも男たちは敬の身体を客席に向かって押す。
「い、いやだ」
敬は必死に目を閉じた。
目を焼くほどに強烈な照明が敬の身体をあますところなく照らす。
無数の光の針に全身を突かれた衝撃に、敬は限界を超えた羞恥を感じて気を失いかけた。
「おお、なんて綺麗な身体でしょうね。これは芸術品です。皆様、拍手!」
失笑と、まばらな拍手が室内に響く。
だが、まばらだった拍手は、光のなかで苦しげに敬が首をのけぞらせた瞬間、高まった。
お義理やおざなりなものでなく、客たちは一瞬、琥珀色の照明のもと、黄金色に五体を染めあげられて喘ぐ美少年の姿に感激したのだ。
十九歳。少年から、まさに大人の男に変成しようという青春の盛りの肉体は、文字通り光りかがやいて見えた。ほどよく鍛えてある身体はしなやかで、男たちに抑えられてもがく姿は痛ましく、屈辱と羞恥に頬を赤く染め、いや、いや、と首を振る様子は、加虐に燃える男たちにとっては絶品だった。
何より男たちを喜ばせたのは、敬のまだ幼さを残した男の象徴が示すように、捕らわれの美少年に被虐の素質があることだ。
苦しげな表情と相反して、悦虐に反応する身体は、今宵の客たちとって壮絶なまでに魅力的だった。
「幾らで売ってくれるんだ?」
そんな誰かの呟きも聞こえてくる。
「残念ながら、敬ちゃんは今のところ非売品ですが、今宵は、皆様が心から満足できるよう、とっておきのショーをお見せします」
男は敬に顔をむけると、にっと笑ってみせた。悪魔の笑いである。
「さぁ、敬ちゃん、お客様にご挨拶にうかがいましょうか?」
いつの間にか、男の手には、ロープがあった。その先にあるのは……、敬は目を疑った。
黒革の首輪。
かっ、と身体が燃え、体内を血が逆流した気が敬はした。
憤怒に身体を小刻みにふるわせている敬を、さも小馬鹿にしたようにせせら笑い、男はまた、指揮するように手を振る。
「うわっ!」
二人の黒服が敬を低くおさえ込み、その場に四つん這いの姿勢を無理やり取らせようとする。敬は屈辱のあまり正気を失いそうになった。
こんな異常な、安っぽいポルノ小説か映画のようなことが我が身に起こるなど、いまだに信じられない。だが、これが現実であることを、尻を蹴られた痛みに思い知る。
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