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第六十三章 時のつながり
神のさらなる神、大神
しおりを挟む私がこの臨時のグランドツァーに、エラムを選んだ理由は、白昼夢を見たからです。
テラ歴で六ヶ月前、私はシビル神殿の封印されていた大広間で、出雲大社本殿内にある御客座が、鮮やかな光に包まれたのが見えたのです。
『神のさらなる神、大神は御座(おわ)す』と確信したのです。
極(きわ)めて汚(きたなき)も滞無(たまりなけ)れば穢(きたなき)とはあらじ
内外(うちと)の玉垣清淨(たまがききよくきよし)と申(もう)す
どのような人生の汚れであっても、それ故のどのような心の穢れも、囚われることなく、出来る限りの事をしていれば『穢れ』にはならない。
そうしていれば、身も心も自ずと清浄を保てる。
川の流れのように流れ続ければ、汚れ穢れもない。
私にこの祝詞を唱えさせた、『神のさらなる神、大神』。
しかし数多くの試練を私に与え、三千世界をここまで引っ張らせたのは『造化三神』のお一人、天之御中主(あめのみなかぬし)神……
『天之御中主(あめのみなかぬし)神』、『高御産巣日(たかみむすび)』神、『神産巣日(かみむすび)』神、『造化三神』はどういう存在なのか……
私は神を疑っている。
テラの歴史の延長線上にエラムがあった。
そしてエラムの過去の歴史は、テラにつながっている。
エラム文字がアッカド語楔形文字にそっくり、その上、エラムの神聖教は、神聖ヤハウェ教と呼ばれていた。
なにか輪廻の様につながっている。
ただこのつながりは、メビウスの輪の様に表裏がつながっている。
この一見複雑に見える世界は、簡単に説明できる。
全ては同時に存在している、過去も未来も……
天之御中主(あめのみなかぬし)神様は、輪廻を離脱せよとのお考えと、私は拝察していた。
そして、『時』はいま正しく回り始めた。
生存競争は陰を潜め、活力も少し静かに、激烈な進化はなくなりましたが、のんびりとした世界がやってきています。
確かに望ましい世界でしょう。
だが誰が生存競争を仕込んだのか……輪廻を離脱するためか……
真実にたどり着いたと確信したとき、それは幻と知った。
幾度も幾度もそれは繰り返された……私は神を疑っている……
デーヴァは滅亡した、そしてアスラは解脱した。
二つの種族はとうにいなかった。
いないはずの二つの種族が戦ったのが、ラグナロク戦争の本質ではなかったか?
……我は汝、汝は我、つまりは汝は大自在天女、ならば我は大自在天、それなのに神がかり……
極(きわ)めて汚(きたなき)も滞無(たまりなけ)れば穢(きたなき)とはあらじ
内外(うちと)の玉垣清淨(たまがききよくきよし)と申(もう)す
この祝詞を唱えさせた、『神のさらなる神、大神』……私に対する啓示なら……
ラグナロク戦争を望んだのは、『神のさらなる神、大神』?ならば天之御中主(あめのみなかぬし)』神とは……
とにかく一度、原点を見つめなおしてみようと、ヴィーナスさんは思っているようです。
……あの時、私は午前11時25分の電車に乗ろうとして、ホームに突き落とされて死んだ。
6月1日と覚えている。
私がエラムにたどり着いた、あの廃墟の教会へ……時の変わり目に一人で……私は私に会えると確信している……
私の聖地巡礼を始めよう……
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