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第六十三章 時のつながり
時の遡上再現
しおりを挟む『廃墟の教会』、エラムの神聖教の聖地の一つ。
ここはエラムに転移するための、もってこいの座標点、地磁気が異常で、惑星エラムの標識のような場所なのだそうです。
とくに祭壇の場所が異常で、その異常をナノマシンが維持しているそうです。
古代のレムリアの名残だそうですが、そんなものではないはずです、多分。
私はデーヴァとの死闘の結果、いまや時を扱えます。
エラムでは最古の人工物と思えるのが、この祭壇です。
ナノマシンは、ある程度のその場所の出来事を記憶しています。
どうやら二百年ぐらいは、映像として見えるのです。
ただし誰彼とはいかないようで、魔力が第三序列以上の者しか見えません。
いわゆる並の監視端末、移動端末クラスではできません。
エールさんや薫さんクラスしか扱えませんが、ヴィーナスネットワークの司法制度では、必須となっています。
これを使用すれば一目瞭然、この世界に誤審はありません。
いざとなれば、その時の当人の記憶、思考までも再現できるわけです。
『時の遡上再現』と呼ばれ、直轄惑星に一つ専用装置が置かれ、裁判長の申請で使用されます。
被告も申請できますが、嘘が判明した場合、重罪に問われます。
ネットワークでは、誣告は極刑なのです。
私はエラムに転移した時点を、見てみたいのです。
ヴィーナスネットワーク設立の原点、エラム転移は造化三神の仕業と、今では理解しています。
そしてその目的でもある『時』は、いま正しく回り始めた。
『時』の正常化を望まれた『天之御中主(あめのみなかぬし)神』、そしてそのためのラグナロク戦争だったとすれば、『神のさらなる神、大神』の目的は何なのか……造化三神とは?
……我は汝、汝は我、つまりは我は大自在天女、ならば我は大自在天、それなのに神がかり……
わからないことばかり……
まぁいいわ、世界は滅亡の未来から逃れたのだから、結果は上々、それでいいわ。
とにかく原点をみて、それから考えればいい、もっと根源的な事が見えてくるでしょう。
「お嬢様、峠ですよ」
考え事をしながら歩いていると、サリーさんが声をかけてきた。
「懐かしい峠ですね……ピエールさんに、おぶってもらって超えましたね、あの時は風花が舞っていました」
……そう、あの時私は感動した。
自然の壮大さの前には、世界を渡ってきた私でも、一個のひ弱い人間と痛感させられた……
そしていままた私は感動している。
三千世界を渡り歩き、多くの驚異的な風景を眺めてきたが、それでも美しいものは美しいと感じる。
巡り巡って再びこの地に立っても、感動は色あせない……
やはり歩いてきたという疲労感と、たどり着いた達成感が、この光景に感動を与えるのでしようね。
峠はかなり雪が積もっていましたが、神官見習い服の防寒装備はなかなかのもので、フェルトのインナー、ブーツの下にフェルトの靴下、大事なところの防寒は、『ちょうちんブルマー』の形状ですね。
この下着、蒸れるらしくて、エラムの女性には評判が悪いのです。
皆さん、寒さに強いですからね。
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