128 / 218
第2章
128.フリはいらなかった。
しおりを挟む
下手なふりとか出来そうにないとか思っていたけれど、案外できた。というか実際下手だった。
鍵盤の位置とかは前世と一緒で本当にまんまピアノだったから、弾くことは容易いだろうと思っていたのに、馬鹿みたいに小さい手、馬鹿みたいに短い指、馬鹿みたいに弱い指圧。手指のコントロール力もなく、こりゃ演技するまでもなく下手だわ…と、悲しくなったがまぁ当たり前である
まぁどれも鍛えれば何とかなるものだから大丈夫だけど、今、この引きたくてうずうずしている欲求を解消することが出来なくて酷くもどかしい。
「ユキにはこのピアノは大きかったな…」
「うぅ……ひきちゃいにょに……」
ガイさんにも指摘され、もはやしゅんとするしかない。
「あっ!!」
「?!」
「確かな…えーっと……ちょっと待ってろよ………」
ガイさんが何かを思い出したように立ち上がり、他にも楽器の置かれている場所の近くの扉を開け中へ消えていった。
「お!あった!!」
扉の向こう側からガイさんの嬉しそうな声が聞こえてきて、直ぐにその扉からひょこっと姿を見せた。その手にはなにやら箱が抱えられていた。
「にゃあに?しょれ」
「これな、ちょっと待ってろよ……ほら!これなら…ゲホゲホ……わるい、埃が…ケホ…」
「ッゲホゲホ……はっくちゅん!…くちゅん!…ケホ…くちゅん!……ズビ…」
「わ、悪いユキ…っ…!」
箱を開けると舞うたくさんの埃に噎せ、くしゃみが止まらなかった。そんな俺のくしゃみがどこか変だったのか、ガイさんがいつものように笑いをこらえて震えている。どこが変なのか分からない。あ゙ぁ゙~鼻がムズムズする……ズビ。
「そ、そうだユキこれ、これなら小さいから弾けそうだろ!」
「ッチ…ックチ…あ!…ズズ…ちっちゃいね!ックチュン……」
ガイさんが笑うので、くしゃみを我慢しながら箱の中身を覗けば、その中には木でできた特に着色のされていないミニサイズのピアノがあった。トイピアノだ。あの可愛らしい音を奏でるピアノ。懐かしいな。
「これで綺麗になったな…ユキ大丈夫か?」
俺が懐かしさに耽っているとガイさんはその間にクリーンの魔法で埃を綺麗にしてくれていた。
「っくちゅん……まらぐしゅぐしゅしゅりゅけりょ、ッシュン…らいろーぷ!ックチ…」
「今窓開けるから待ってろ」
「あい!ックシュン!」
止まらないくしゃみに慌てたガイさんが窓や扉を開け放ち換気をしてくれた。それでも俺のくしゃみはしばらく止まらなかった。
仕方が無いので、とりあえずこの部屋は使用人さんに掃除を任せて、俺たちはお昼を食べに行くことになった。そろそろお腹すいてきたしね。
鍵盤の位置とかは前世と一緒で本当にまんまピアノだったから、弾くことは容易いだろうと思っていたのに、馬鹿みたいに小さい手、馬鹿みたいに短い指、馬鹿みたいに弱い指圧。手指のコントロール力もなく、こりゃ演技するまでもなく下手だわ…と、悲しくなったがまぁ当たり前である
まぁどれも鍛えれば何とかなるものだから大丈夫だけど、今、この引きたくてうずうずしている欲求を解消することが出来なくて酷くもどかしい。
「ユキにはこのピアノは大きかったな…」
「うぅ……ひきちゃいにょに……」
ガイさんにも指摘され、もはやしゅんとするしかない。
「あっ!!」
「?!」
「確かな…えーっと……ちょっと待ってろよ………」
ガイさんが何かを思い出したように立ち上がり、他にも楽器の置かれている場所の近くの扉を開け中へ消えていった。
「お!あった!!」
扉の向こう側からガイさんの嬉しそうな声が聞こえてきて、直ぐにその扉からひょこっと姿を見せた。その手にはなにやら箱が抱えられていた。
「にゃあに?しょれ」
「これな、ちょっと待ってろよ……ほら!これなら…ゲホゲホ……わるい、埃が…ケホ…」
「ッゲホゲホ……はっくちゅん!…くちゅん!…ケホ…くちゅん!……ズビ…」
「わ、悪いユキ…っ…!」
箱を開けると舞うたくさんの埃に噎せ、くしゃみが止まらなかった。そんな俺のくしゃみがどこか変だったのか、ガイさんがいつものように笑いをこらえて震えている。どこが変なのか分からない。あ゙ぁ゙~鼻がムズムズする……ズビ。
「そ、そうだユキこれ、これなら小さいから弾けそうだろ!」
「ッチ…ックチ…あ!…ズズ…ちっちゃいね!ックチュン……」
ガイさんが笑うので、くしゃみを我慢しながら箱の中身を覗けば、その中には木でできた特に着色のされていないミニサイズのピアノがあった。トイピアノだ。あの可愛らしい音を奏でるピアノ。懐かしいな。
「これで綺麗になったな…ユキ大丈夫か?」
俺が懐かしさに耽っているとガイさんはその間にクリーンの魔法で埃を綺麗にしてくれていた。
「っくちゅん……まらぐしゅぐしゅしゅりゅけりょ、ッシュン…らいろーぷ!ックチ…」
「今窓開けるから待ってろ」
「あい!ックシュン!」
止まらないくしゃみに慌てたガイさんが窓や扉を開け放ち換気をしてくれた。それでも俺のくしゃみはしばらく止まらなかった。
仕方が無いので、とりあえずこの部屋は使用人さんに掃除を任せて、俺たちはお昼を食べに行くことになった。そろそろお腹すいてきたしね。
70
あなたにおすすめの小説
メインをはれない私は、普通に令嬢やってます
かぜかおる
ファンタジー
ヒロインが引き取られてきたことで、自分がラノベの悪役令嬢だったことに気が付いたシルヴェール
けど、メインをはれるだけの実力はないや・・・
だから、この世界での普通の令嬢になります!
↑本文と大分テンションの違う説明になってます・・・
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
モブっと異世界転生
月夜の庭
ファンタジー
会社の経理課に所属する地味系OL鳳来寺 桜姫(ほうらいじ さくらこ)は、ゲーム片手に宅飲みしながら、家猫のカメリア(黒猫)と戯れることが生き甲斐だった。
ところが台風の夜に強風に飛ばされたプレハブが窓に直撃してカメリアを庇いながら息を引き取った………筈だった。
目が覚めると小さな籠の中で、おそらく兄弟らしき子猫達と一緒に丸くなって寝ていました。
サクラと名付けられた私は、黒猫の獣人だと知って驚愕する。
死ぬ寸前に遊んでた乙女ゲームじゃね?!
しかもヒロイン(茶虎猫)の義理の妹…………ってモブかよ!
*誤字脱字は発見次第、修正しますので長い目でお願い致します。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
(完結)もふもふと幼女の異世界まったり旅
あかる
ファンタジー
死ぬ予定ではなかったのに、死神さんにうっかり魂を狩られてしまった!しかも証拠隠滅の為に捨てられて…捨てる神あれば拾う神あり?
異世界に飛ばされた魂を拾ってもらい、便利なスキルも貰えました!
完結しました。ところで、何位だったのでしょう?途中覗いた時は150~160位くらいでした。応援、ありがとうございました。そのうち新しい物も出す予定です。その時はよろしくお願いします。
転生したらちびっ子になって、空を落ちていた件 〜もふもふたちのお世話はお任せあれ。ついでに悪もやっつけます!〜
ありぽん
ファンタジー
神のミスで命を落とした高橋凛は、お詫びとして理想の世界へ転生することに。しかし気がつけば幼児の姿で、しかも空を落下中だった!?
バカ神、あいつまたミスったな!? そう思いながらも、凛はどうすることもできず、空を落ちていく。しかも更なるアクシデントが凛を襲い……。
が、そのアクシデントにより、優しい魔獣に助けられた凛は、少しの間彼の巣で、赤ちゃん魔獣や卵の世話を教わりながら過ごすことに。
やがてその魔獣を通じて侯爵家に迎え入れられると、前世での動物飼育の知識や新たに得た知識、そして凛だけが使える特別な力を活かして、魔獣たちの世話を始めるのだった。
しかし魔獣たちの世話をする中で、時には悪人や悪魔獣と対峙することもあったため、凛は、『魔獣たちは私が守る!!』と決意。入団はできないものの、仮のちびっ子見習い騎士としても頑張り始める。
これは、凛と魔獣たちが織りなす、ほんわかだけど時々ドタバタな、癒しとお世話の物語。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる