完結済み『愛されぬお飾りの聖女ですが、どうやら私、捨てられた方が幸せになれるみたいです』

干し芋さん

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第四話:噂と違う旦那様

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目が覚めると、そこは天蓋付きの、信じられないほど豪華なベッドの上だった。
身体には、肌触りの良いシルクの寝間着。
凍えていたはずの身体は、芯からぽかぽかと温かい。

(……夢?)

状況が理解できず、混乱していると、ガチャリと扉が開いた。

「お目覚めですか、奥様」

入ってきたのは、初老の、品の良い侍女だった。
奥様……? 私のこと?

「ご気分は? 旦那様が、腕利きの侍医を呼んでくださいました」
「旦那様……アレクシス公爵が?」

“氷血公爵”が、私のために?
にわかには信じられなかった。

侍女はにこやかに微笑む。

「もちろんです。さあ、お食事の準備ができております。旦那様がお待ちですよ」

案内された食堂は、目が眩むほどに広かった。
長いテーブルの上には、湯気の立つ料理がずらりと並んでいる。

スープ、焼きたてのパン、肉厚のステーキに、彩り豊かな温野菜……。
伯爵家では、いつも残り物か、硬いパン一切れだったのに。

ごくり、と喉が鳴る。

「……座れ」

上座に座っていたアレクシス公爵が、無愛想に顎で向かいの席を示した。
ビクビクしながら席に着くと、目の前に熱々のスープが置かれる。

いい匂い……。
お腹が、くぅ、と情けない音を立てた。
恥ずかしさで顔を上げられないでいると、公爵のため息が聞こえる。

「……無理にとは言わん。だが、一口でも口にしろ。お前は痩せすぎだ」

その声は、相変わらず冷たい。
でも、どこか……私の身体を気遣うような響きがあった。

恐る恐る、スプーンを手に取り、スープを一口。

「……!」

美味しい……。
温かくて、優しい味が、空っぽの胃にじんわりと染み渡っていく。
涙が、ぽろり、と一粒、お皿に落ちた。

「な、なぜ泣く」

ぎょっとしたように、アレク-シス公爵が身を乗り出す。

「いえ、あの、美味しくて……こんなに温かいものを食べたのは、久しぶりで……」

しどろもどろに答えると、公爵は気まずそうに顔を背けた。
そして、小さな声で、ぽつりと呟く。

「……そうか。なら、好きなだけ食え」

その横顔が、少しだけ、赤らんでいるように見えたのは、きっと気のせいだろう。

冷酷非情。
女遊びが激しい。
誰も愛さない。

噂と、違う。
私の旦那様は、少し不器用で、ぶっきらぼうで、そして……。
ほんの少しだけ、優しい人、なのかもしれない。
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