完結済み『愛されぬお飾りの聖女ですが、どうやら私、捨てられた方が幸せになれるみたいです』

干し芋さん

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第五話:俺だけの花嫁

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食事の後、私は侍女長に案内され、新しい部屋へと向かった。
扉を開けた瞬間、私は息を呑んだ。

陽当たりの良い、広々とした部屋。
豪華な調度品に、ふかふかの絨毯。

そして、部屋の奥には、見たこともないほどの数のドレスがずらりと並べられていた。

「こ、これは……?」

「旦那様が、奥様のためにとご用意されたものです」
「全て、私のために……?」

信じられない。
私が今まで持っていたのは、お下がりの地味なドレスが数着だけ。
自分のためだけに、こんな……。

「さあ、奥様。お着替えをいたしましょう。旦那様が、奥様の新しいお姿を、心待ちにしておいでです」

侍女たちの手で、私はされるがままに着替えをさせられる。
選ばれたのは、空の色を映したような、美しい青のドレス。
繊細なレースと、きらきら光る宝石が散りばめられている。

鏡に映った自分の姿が、まるで別人のようだった。

「……綺麗……」

ぽつりと呟くと、侍女長が満足げに微笑んだ。
「奥様は、本当にお美しい方です。旦那様が夢中になられるのも、よく分かります」

え……?
夢中……?

そんなはずがない。これは政略結婚。
私は、ただの生贄のはず……。

混乱しているうちに、アレクシ-ス公爵の執務室へと案内された。
扉の前で、心臓が大きく跳ねる。

コンコン、と侍女が扉を叩く。

「入れ」

中から、不機嫌そうな声。
私はおずおずと、部屋に足を踏み入れた。

ペンを走らせていたアレクシス公爵が、顔を上げる。
そして、私の姿を認めた瞬間――その銀色の瞳が、カッと見開かれた。

ペンが、カラン、と床に落ちる。

彼は、椅子から立ち上がると、一直線に私の元へ歩み寄ってきた。
そして、私の腕を掴むと、ぐい、と力強く引き寄せる。

「……ああ、やはりだ」

吐息がかかるほど近くで、彼が恍惚とした声で囁く。

「その青は、お前の瞳の色によく似合う。だが……」

彼の指が、私の頬をそっと撫でる。

「これでは足りん」
「え?」
「こんな美しいお前を、他の男の目に触れさせるなど、我慢ならん」

彼の銀色の瞳が、熱を帯びて、ぎらぎらと輝いている。
それは、獲物を前にした、飢えた獣の瞳。

「アリア」
「は、はい……」
「お前は、俺だけの花嫁だ。誰にも渡さん」

――俺だけの。

その言葉が、雷のように私の心を貫いた。
今まで誰にも必要とされなかった私が。
誰かの、特別な存在に……?

彼の独占欲に満ちた瞳に見つめられ、私の頬が、カッと熱くなるのを感じた。
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