文字の大きさ
大
中
小
47 / 878
連載
冷蔵庫ダンジョン⑤
19階のボス部屋を抜けて階段を上がったのは夕方。
20階も草原フィールドだけど、岩がゴロゴロしている。わあ、嫌な予感。
「ルージュ、まさか、やけど」
『蛇が多いわよ』
やっぱりッ。
「直ぐに抜けよう」
「そうやな、姉ちゃん」
蛇嫌いの結束は固い。
「ボス部屋遠い?」
『いいえ、真っ直ぐいけば、すぐだけど』
転がる岩。これを避けて移動。うわあ、隙間から出てきそう。
『急げば、そうね、ユイの足で一時間ね』
「そうね」
晃太と家族会議。
「ボス部屋、絶対あれよね」
「やろうな、正直あんまり入れたくないんよ」
「ごめんね、私のアイテムボックス小さいけん。でも、脱出用の魔法陣20階よね。明日朝イチに行って、直ぐに脱出する?」
『『ぶーぶー』』
どんだけ戦いたいんね。
「なら、一旦、19階に戻って、明日20階にもう一度行こう。これでよか? 明日の昼過ぎには、脱出に向けて移動よ。絶対だからね」
『分かったのです』
『いいわ』
「なら、決まり。戻ろう」
私達は階段を下り、19階のボス部屋を抜ける。
18階の上級者向けになってから、冒険者の方を見かけなくなった。まあ、50匹オーバーのボス部屋には、挑むには相応の人数や武器やレベルが必要だよね。うちには反則的に強いのがいるからね。
『ユイ、ユイ、お腹が空いたのです』
『お肉、焼いて』
おねだりするように、すり寄って来るビアンカとルージュ。もう、かわいかねえ。あの派手な爆発音が綺麗に脳内から消えてなくなる。
ルームを開けて、従魔の足拭きをタップ。
駆けよって来る元気達、お目当てはお乳だ。
今日はボス部屋が復活するまでの時間で、夕御飯の準備は済ませてある。ブラッシングも適宜してある。
「晃太、出してん」
「ん」
晃太がダイニングキッチンのテーブルに、焼いたサーロインと、炊きたてのご飯が出てくる。
ビアンカとルージュのお皿にご飯、そうだ、今日は二重にしよう。数枚のサーロインを乗せ、ステーキソース、ご飯、サーロイン、ステーキソース。
超大盛ステーキどんぶり完成。
よし、振り返るとそわそわお座りしているビアンカとルージュ。今日は元気とコハクがぶら下ってる。誤って食べたら大変なので、ゼリーで誘導。直ぐに付いてきた。私が皆に分け隔てなくあげている間に、晃太に運んでもらう。ゼリーはチューブタイプなんだけど、減るのが早い。花の時は結構もったけど、1日1本ペースだ。でも、良か。
必死にゼリーを持つ私にすり寄って来る、かわいか仔達。パワー半端ないけどね。ふふふ、もふもふ。
「はいはい、皆にあげるけんね、あいたあッ」
元気が1つに纏めた私の髪に食らいつく。大型の柴サイズの元気のパワーは一番だ。私は後ろにひっくり返される。
「ちょ、待っ、げふうッ」
なんか分からないけど、顔面を残りの仔達が踏み越えて行く。結構痛いのよ、これ。
何とか起き上がる、あ、チューブからゼリー飛び出している。全部。
ビアンカとルージュの夕御飯後に、私達も夕御飯。私はジョイップのハンバーグとジャーマンポテト、晃太はチキンステーキとエビフライを選ぶ。
後は元気達を遊ばせて終了、とはならなかった。
『食後の運動なのです』
『行くわよ』
「ちょっと、勘弁してよ」
ビアンカとルージュのおねだりビームが飛び出して、私達を直撃。
はい、陥落します。
結局、ビアンカとルージュがそれぞれ一回ずつ、ボス部屋に突入。
「姉ちゃん、姉ちゃん」
「なんね?」
「ドロップ品、絶対なんか言われるばい」
「そうね、諦めりい」
私は悟りの様な顔。
「因みに魔石、いくつね?」
「ジャスト500、大きいの52や」
絶対なんか言われそう。
『ユイ、ユイ、動いたら小腹が空いたわ』
『私も空いたわ』
「そうね」
すりすりされて、反則的なキラキラお目めと、久しぶりのエアーお手、エアーおかわりに、ダメな主人代表の私は、液晶画面をタップ。
ジョイップのミックスグリルをご飯付きで、それぞれ3人前。ペロッと、2人のお腹に収まった。
その間、晃太はアイテムボックスの中身を書き出していたが、その日に終わらず、私達は疲れて休んだ。
『ユイ、ユイ、朝なのです』
『起きて、ユイ、朝御飯』
「あああぁぁぁぁぁ…………」
ビアンカとルージュの冷たい鼻面を押し当てられて、私は覚醒。
「朝ね、ああ、ちょっとねむかなあ………」
くねくねしながら起き上がる。晃太は小さく鼾かいて寝てる。
後で起こそう。
まず、従魔の部屋の清掃。
それから洗顔を済ませる。
晃太、まだ、寝てる。
まあ、昨日遅くまでリスト作っていたからね。
朝御飯、どうしよう? 昨日は晃太と手分けして作っていたから。
うーん、よし、ジョイップのモーニングにしよっ。
その前に榊の水をかえてと、神様もモーニングいかがです? なんちゃって。
いいぞー。
神託来た。
いいのかな、異世界のメニューだけど。
大丈夫だぞー。
………………………
私は液晶画面をタップ。
えーっと、時空神様は結構食べたから、ボリュームモーニングでいいかな。始祖神様と雨の女神様はトーストモーニングにして、小さい神様達にはお子様モーニングだ。いつもならドリンクバー付きだが、そううまくいかない。タンブラーにミックスジュースと牛乳を入れて並べる。
「神様、今日もお見守りください」
お祈り。
目を開けると、皿だけしか残ってない。
「よし、私達も朝御飯や。ビアンカ、ルージュ、晃太起こして」
『分かったのです』
『任せて』
ベロベロベロベロ。
晃太が悲鳴の様な声を上げて、やっと起きた。
ダンジョン最終日。
『戦闘モード 風乙女(シルフィリア)』
ビアンカが突っ込んでいく。
ドカカカカカカカカンッ
ドカーンッ
ドカーンッ
爆音を聞きながら、晃太がリストをせっせと作成。
もう、慣れた。
『終わったのです』
ビアンカがとことこ出てくる。
「晃太、行くばい」
「ん」
ボス部屋に転がるドロップ品を拾い集める。
休憩、ボス部屋、復活。
ルージュが火炎姫(フレアジャンヌ)で飛び込み、はい、終了。
お昼ご飯を食べて、20階へ。
早歩きでボス部屋へ。
途中で蛇が来たが、ビアンカとルージュの敵ではない。
晃太が渋い顔で、アイテムボックスに入れる。
「ここで最後よ、いいね? 最後やけんね」
『『ぶーぶー』』
「なら、帰ってからの焼き肉なしよ。おにぎりだけやけんね」
『仕方ないのです』
『我慢するわ』
本当に現金。
話し合いの結果、ビアンカが行くことに。
扉の真正面にお座りするビアンカ。
『私は誇り高き守護者、フォレスト『ガーディアン』ウルフ』
ん? なんか、いつものビアンカの周りの空気が違うような。
『ユイ、少し離れて、耳を塞いだ方がいいわ、かなりの音がするから』
ルージュが注意してくる。え、音?
『あれはビアンカの戦闘モードの中でも、最強なのよ』
「え、やばくない?」
元気達はルームの中でお昼寝しているから、大丈夫だけど。
「姉ちゃん、わいらも、ルームに入ろうや」
「そやなあ、ルージュよか? なんか、怖かけん」
『いいわ、私はここにいるから大丈夫よ。闇魔法である程度遮断出来るから』
「なら、うちらにも、かけてくれる?」
『いいわよ』
ルージュが私達に魔法をかける。凄い、耳に膜が張った感じ。晃太の声も聞こえないことはないけど、かなり小さい。
『雷雲よ妾の声に応えよ、ここに忠誠を誓え』
え、今、妾っての言わなかった? 小さいけど、妾って聞こえたけど。口調も命令口調だよ。今まで語りかけるようだったのに。
『妾の前に、膝を突かぬものに、降り注ぎて頭(こうべ)を垂れさせよ。愚か者どもに空を仰がせるな』
なんか、物騒ッ。しかも、バチバチ言ってる。ビアンカの足が、黄金に輝き、白い毛並みに浮かび上がるのは、あれだ、雷のマークだ。
晃太が私の腕を引くので、慌ててルームに入る。
『戦闘モード 雷女帝(エル・カテリーナ)』
20階も草原フィールドだけど、岩がゴロゴロしている。わあ、嫌な予感。
「ルージュ、まさか、やけど」
『蛇が多いわよ』
やっぱりッ。
「直ぐに抜けよう」
「そうやな、姉ちゃん」
蛇嫌いの結束は固い。
「ボス部屋遠い?」
『いいえ、真っ直ぐいけば、すぐだけど』
転がる岩。これを避けて移動。うわあ、隙間から出てきそう。
『急げば、そうね、ユイの足で一時間ね』
「そうね」
晃太と家族会議。
「ボス部屋、絶対あれよね」
「やろうな、正直あんまり入れたくないんよ」
「ごめんね、私のアイテムボックス小さいけん。でも、脱出用の魔法陣20階よね。明日朝イチに行って、直ぐに脱出する?」
『『ぶーぶー』』
どんだけ戦いたいんね。
「なら、一旦、19階に戻って、明日20階にもう一度行こう。これでよか? 明日の昼過ぎには、脱出に向けて移動よ。絶対だからね」
『分かったのです』
『いいわ』
「なら、決まり。戻ろう」
私達は階段を下り、19階のボス部屋を抜ける。
18階の上級者向けになってから、冒険者の方を見かけなくなった。まあ、50匹オーバーのボス部屋には、挑むには相応の人数や武器やレベルが必要だよね。うちには反則的に強いのがいるからね。
『ユイ、ユイ、お腹が空いたのです』
『お肉、焼いて』
おねだりするように、すり寄って来るビアンカとルージュ。もう、かわいかねえ。あの派手な爆発音が綺麗に脳内から消えてなくなる。
ルームを開けて、従魔の足拭きをタップ。
駆けよって来る元気達、お目当てはお乳だ。
今日はボス部屋が復活するまでの時間で、夕御飯の準備は済ませてある。ブラッシングも適宜してある。
「晃太、出してん」
「ん」
晃太がダイニングキッチンのテーブルに、焼いたサーロインと、炊きたてのご飯が出てくる。
ビアンカとルージュのお皿にご飯、そうだ、今日は二重にしよう。数枚のサーロインを乗せ、ステーキソース、ご飯、サーロイン、ステーキソース。
超大盛ステーキどんぶり完成。
よし、振り返るとそわそわお座りしているビアンカとルージュ。今日は元気とコハクがぶら下ってる。誤って食べたら大変なので、ゼリーで誘導。直ぐに付いてきた。私が皆に分け隔てなくあげている間に、晃太に運んでもらう。ゼリーはチューブタイプなんだけど、減るのが早い。花の時は結構もったけど、1日1本ペースだ。でも、良か。
必死にゼリーを持つ私にすり寄って来る、かわいか仔達。パワー半端ないけどね。ふふふ、もふもふ。
「はいはい、皆にあげるけんね、あいたあッ」
元気が1つに纏めた私の髪に食らいつく。大型の柴サイズの元気のパワーは一番だ。私は後ろにひっくり返される。
「ちょ、待っ、げふうッ」
なんか分からないけど、顔面を残りの仔達が踏み越えて行く。結構痛いのよ、これ。
何とか起き上がる、あ、チューブからゼリー飛び出している。全部。
ビアンカとルージュの夕御飯後に、私達も夕御飯。私はジョイップのハンバーグとジャーマンポテト、晃太はチキンステーキとエビフライを選ぶ。
後は元気達を遊ばせて終了、とはならなかった。
『食後の運動なのです』
『行くわよ』
「ちょっと、勘弁してよ」
ビアンカとルージュのおねだりビームが飛び出して、私達を直撃。
はい、陥落します。
結局、ビアンカとルージュがそれぞれ一回ずつ、ボス部屋に突入。
「姉ちゃん、姉ちゃん」
「なんね?」
「ドロップ品、絶対なんか言われるばい」
「そうね、諦めりい」
私は悟りの様な顔。
「因みに魔石、いくつね?」
「ジャスト500、大きいの52や」
絶対なんか言われそう。
『ユイ、ユイ、動いたら小腹が空いたわ』
『私も空いたわ』
「そうね」
すりすりされて、反則的なキラキラお目めと、久しぶりのエアーお手、エアーおかわりに、ダメな主人代表の私は、液晶画面をタップ。
ジョイップのミックスグリルをご飯付きで、それぞれ3人前。ペロッと、2人のお腹に収まった。
その間、晃太はアイテムボックスの中身を書き出していたが、その日に終わらず、私達は疲れて休んだ。
『ユイ、ユイ、朝なのです』
『起きて、ユイ、朝御飯』
「あああぁぁぁぁぁ…………」
ビアンカとルージュの冷たい鼻面を押し当てられて、私は覚醒。
「朝ね、ああ、ちょっとねむかなあ………」
くねくねしながら起き上がる。晃太は小さく鼾かいて寝てる。
後で起こそう。
まず、従魔の部屋の清掃。
それから洗顔を済ませる。
晃太、まだ、寝てる。
まあ、昨日遅くまでリスト作っていたからね。
朝御飯、どうしよう? 昨日は晃太と手分けして作っていたから。
うーん、よし、ジョイップのモーニングにしよっ。
その前に榊の水をかえてと、神様もモーニングいかがです? なんちゃって。
いいぞー。
神託来た。
いいのかな、異世界のメニューだけど。
大丈夫だぞー。
………………………
私は液晶画面をタップ。
えーっと、時空神様は結構食べたから、ボリュームモーニングでいいかな。始祖神様と雨の女神様はトーストモーニングにして、小さい神様達にはお子様モーニングだ。いつもならドリンクバー付きだが、そううまくいかない。タンブラーにミックスジュースと牛乳を入れて並べる。
「神様、今日もお見守りください」
お祈り。
目を開けると、皿だけしか残ってない。
「よし、私達も朝御飯や。ビアンカ、ルージュ、晃太起こして」
『分かったのです』
『任せて』
ベロベロベロベロ。
晃太が悲鳴の様な声を上げて、やっと起きた。
ダンジョン最終日。
『戦闘モード 風乙女(シルフィリア)』
ビアンカが突っ込んでいく。
ドカカカカカカカカンッ
ドカーンッ
ドカーンッ
爆音を聞きながら、晃太がリストをせっせと作成。
もう、慣れた。
『終わったのです』
ビアンカがとことこ出てくる。
「晃太、行くばい」
「ん」
ボス部屋に転がるドロップ品を拾い集める。
休憩、ボス部屋、復活。
ルージュが火炎姫(フレアジャンヌ)で飛び込み、はい、終了。
お昼ご飯を食べて、20階へ。
早歩きでボス部屋へ。
途中で蛇が来たが、ビアンカとルージュの敵ではない。
晃太が渋い顔で、アイテムボックスに入れる。
「ここで最後よ、いいね? 最後やけんね」
『『ぶーぶー』』
「なら、帰ってからの焼き肉なしよ。おにぎりだけやけんね」
『仕方ないのです』
『我慢するわ』
本当に現金。
話し合いの結果、ビアンカが行くことに。
扉の真正面にお座りするビアンカ。
『私は誇り高き守護者、フォレスト『ガーディアン』ウルフ』
ん? なんか、いつものビアンカの周りの空気が違うような。
『ユイ、少し離れて、耳を塞いだ方がいいわ、かなりの音がするから』
ルージュが注意してくる。え、音?
『あれはビアンカの戦闘モードの中でも、最強なのよ』
「え、やばくない?」
元気達はルームの中でお昼寝しているから、大丈夫だけど。
「姉ちゃん、わいらも、ルームに入ろうや」
「そやなあ、ルージュよか? なんか、怖かけん」
『いいわ、私はここにいるから大丈夫よ。闇魔法である程度遮断出来るから』
「なら、うちらにも、かけてくれる?」
『いいわよ』
ルージュが私達に魔法をかける。凄い、耳に膜が張った感じ。晃太の声も聞こえないことはないけど、かなり小さい。
『雷雲よ妾の声に応えよ、ここに忠誠を誓え』
え、今、妾っての言わなかった? 小さいけど、妾って聞こえたけど。口調も命令口調だよ。今まで語りかけるようだったのに。
『妾の前に、膝を突かぬものに、降り注ぎて頭(こうべ)を垂れさせよ。愚か者どもに空を仰がせるな』
なんか、物騒ッ。しかも、バチバチ言ってる。ビアンカの足が、黄金に輝き、白い毛並みに浮かび上がるのは、あれだ、雷のマークだ。
晃太が私の腕を引くので、慌ててルームに入る。
『戦闘モード 雷女帝(エル・カテリーナ)』
感想 867
あなたにおすすめの小説
「今日限りで君を解雇する」――20年仕えた地味なメイドですが、料理も手紙も暗殺者対策も私がやっていました
「エナメル。今日限りで君を解雇する」
20年仕えた屋敷をクビになった、地味なエルフのメイド・エナメル。
だが、晩餐会の料理も、侯爵への手紙も、調度品の手配も、屋敷を狙う暗殺者の処理も――すべて彼女が陰で支えていたものだった。
エナメルが去ったあと、屋敷は少しずつ綻び始める。
一方の本人は、そんなことも知らず。
「さて。次はどこで雇っていただきましょう」
地味で目立たないベテランメイド・エナメルの、新しい奉公先探しが始まる。
※本作は『メイドのエナメルは今日も静かにお仕えします』シリーズの第1作です。本作単体でもお楽しみいただけます。
異世界転移した僕と彼のスキルは「貯金箱」と「犬」だったので即追放。でもこれが意外と強かった
高校の英語の授業中、勇者召喚で僕たちクラスメイト7名は異世界にやって来た。
目的は魔王討伐では無くて、高難易度ダンジョンの封印?!
でも僕ユイトのスキルは「貯金箱」、エイジは「犬」。
役立たず認定で、二人とも城を追放されてしまった。
のんびり暮らそうとしたけどそうもいかなくなって。
僕たちは奇妙なスキルを駆使して異世界で生き延びる。
緩~いファンタージ物語です。のんびりと書いていきます。
本文はなるべく簡潔に、サクサク進むようにしています。
暇つぶしに読んでいただいて、楽しんでくださると嬉しいです。
なろう様にも投稿。
捨てられた幼女ですが、公爵家に拾われたら家族みんなの愛が重すぎました
幼い頃に母親に捨てられ、孤児院で暮らしていた少女リリア。
「役に立たなければ、また捨てられる」
そう思い、いつも“いい子”でいようとしていた彼女は、ある日、公爵家の馬車を助けたことをきっかけに屋敷へ招かれる。
そこで待っていたのは、娘に甘すぎる公爵夫妻に、妹を構いたがるレオン、そしてリリアを甘やかしたい使用人たち。
戸惑いながらも、少しずつ公爵家に居場所を見つけていくリリア。やがて夫妻から「私たちの娘になってほしい」と告げられて――。
これは、捨てられないために“いい子”でいようとしていた少女が、重すぎるほどの愛情に包まれ、本当の家族を見つけていく物語。
初夜のあとに愛する人がいると言われたので祝福で身体の時間を一日戻しました
夫婦となって初めて迎えた夜、セレンティアは夫リオールから「俺には、愛する人がいる」と告げられる。
彼が初夜を済ませた理由は、三年後に白い結婚として婚姻無効を申し立てられないようにするためだった。
けれどリオールは知らなかった。セレンティアの祝福《一日回帰》が、自分自身の身体にも使えることを。
セレンティアは自分の身体の時間を一日前へ戻し、三年間、侯爵家の妻として務めを果たすことを決める。
夫に愛されるためではない。三年後、白い結婚としてこの家を出ていくために。
番の証が出ないと捨てられたので、神様に確かめてもらいます
「番の証が出ぬからだ」
和平のために獣人国へ嫁いで四年。獣王ガイウス様との儀式は三度、三度とも証は出ませんでした。「人間の娘では神は認めぬ」——そう言われて、離宮へ。
雨漏りの下で眠り、井戸をさらい、畑を耕して。泣かなかったのは強いからではありません。獣人には、匂いでわかってしまうから。
嫁ぐ前に三年かけて読み込んだ婚姻法典。その第四章に、こうありました。
『既に誓いを結びたる者が、重ねて他者と誓いを立てんとする時、神は後の誓いを認めず』
——証が出なかったのは、わたしが人間だからではない。
長老会に申し立てたのは、解釈の確認だけ。わたしは悪くない、とは一言も書きませんでした。
遡誓の儀で神殿に浮かんだのは、六年前の秋の「成立」と、わたしの三度の「不成立(重複)」でした。
飛べないと捨てられたので、竜ごと出て行きます
「お前は竜に乗れもしない、ただの妻だろう」
竜騎士団長の夫はそう言って、飛べる従騎士の娘を選びましたわ。
ええ、わたくしは飛べません。十二年、地上におりました。
夜明け前に三十一頭の寝息を数え、歯を磨き、爪の砂を取り、冬に毛布を掛け、契約を編んで。——この国でただひとりの「調律者」として。
竜は、人を乗せない生き物ですのよ。竜自身が「乗せてもいい」と決めない限り。そして竜が誰の言葉で頷いてきたか、あの方は十二年、一度もお考えにならなかった。
離縁されて、わたくしは竜舎を出ました。
三日後から、竜は一頭も飛ばなくなりましたの。
怒っているのではありませんのよ。竜は報復をしませんもの。ただ——寂しいのです。
そして来月は、三年に一度の、契約更新日ですわ。
土下座する王妃の座などいらないので、冒険者に転職します。
「私が愛しているのはエルナ。君だけだ」
エルナは自分の夫でありハーメルン王国の国王であるカメルを愛していた。
彼がどれほど自分より隣国の聖女を優先しようとも。
結婚して二年が経っても初夜を迎えたことがなかろうとも。
しかし。
「エルナ。君に失望した。聖女を陥れていじめるとはな。罪を認め、ひざまずいて謝罪するように」
一年に一度の建国記念宴会であり結婚記念日に、カメルはすべての貴族や外国の使節団が見ている前で、エルナに身に覚えのない罪を認めろと断罪した。
愛が壊れるのは一瞬。
だからこそ、エルナはその場でひざまずいた。頭を地面にこすりつけて謝罪した。
「聖女を陰謀にかけた大罪人エルナは、この時間をもって王妃の座から退き、平民となりますことをお許しください。聖女様とどうかお幸せに」
*ゆるい設定です。不快に思われる方はブラウザバックをお願いします。
婚約破棄を受け入れた瞬間、王太子殿下が青ざめました
王都でもっとも華やかな春の夜会。その中央で、王太子エドワードは冷ややかな目を婚約者へ向けていた。
「リリアーナ・フォン・アルベルト公爵令嬢。君との婚約を、ここで破棄する」
会場が一瞬で静まり返る。
リリアーナは淡い金髪を揺らし、静かに王太子を見つめ返した。
「理由を、お聞きしてもよろしいでしょうか」
「理由など明白だ。君は嫉妬深く、心が狭い。それに比べ、私は真実の愛を見つけた」
そう言ってエドワードが隣へ引き寄せたのは、男爵令嬢のセシリアだった。