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乗り越えよう③
次の日。
私と父でギルドに向かう。本日はラーヴさんとマアデン君だ。ビアンカとルージュもしっかり付いてきてくれる。
リティアさんが応接室に案内してくれる。場所、覚えているんだけどなあ。何度も来たし。それでも案内してくれる。ありがたい。
空調の効いた応接室には、すでにセザール様とダワーさん。
「すみません、遅くなりました」
慌てる私と父。ビアンカとルージュは気にせず、定位置に寝転ぶ。
「いいえ、早く来すぎただけですから」
セザール様は私と父に着席を促してくれる。
ソファーに座る私と父。さっとリティアさんがお茶を出してくれる。
「まず、治験の件ですが、来月頭から正式に稼働することになりました。初めはマーファのみで、治験を行います。ある程度の結果を得られれば、国家事業として申請をしていきます」
国家事業とな、やっぱり大事になった。任せて正解だ。
ダワーさんが続ける。
「冒険者ギルドにも、必要な薬草採取を常時依頼として出しましたし、これの作成には新人達を当たらせます。新人の薬剤師達も張り切っておりますからね。もちろん儂が監督します」
「はい、お願いします」
良かった、なんとかなった。
「あのこちら資金です」
私がアイテムボックスから袋を出す。大金貨がびっしり詰まっている袋。白金貨は孤児院の建物関係で全部出してしまったので、大金貨200枚。
「あの、ミズサワさん。こんなに?」
ダワーさんが困惑している。
「はい、大丈夫です」
すると、袋を見たセザール様が、少し疑問を浮かべながら聞いてくる。
「失礼ですが、孤児院の件といい、どうしてここまでしていただけるのですか? これだけの資産があれば、優雅に暮らせますよね?」
「ああ、それですか」
いつか、誰かに聞かれるかな、と思っていた。
「お金に関しては私達実感湧かないんです。自分で汗水流したお金じゃないですしね。すべてビアンカとルージュのおかげですから。ビアンカやルージュや子供達に必要なお金は確保しないといけませんが、それでも有り余ります。私達はそれが怖いんです。人間が変わりそうで。それにビアンカとルージュを引き合わせてくれたのは、神様のおかげだと思っています。だから、この世界を大切に思っている神様にご恩返しをするのに、多少お金を還元しなくてはいけないって、思っています。それで子供達が助かって、誰かが幸せなら、私達は十分なんです」
私の答えに、セザール様とダワーさんは黙って聞いてくれた。働いてからのお金じゃないから、実感が湧かない。逆に怖い時がある。実感の湧かないお金が、大量に入ってくる。重みを感じない。薬草を摘んで提出した時は、あんなに銅貨が重かったのに。私がやってるのは、ドロップ品を拾い、数えてギルドに渡すくらいだ。労働としての対価はかなり少ないと思う。どちらかと言うと、母が一番働いているかも。せっせとビアンカとルージュの為、孤児院の子供達の為に、料理しているし。
私はこのまま、ドロップ品回収係でいいのだろうか?
「そうですか。野暮なことをお聞きしました」
セザール様が微笑む。イケメンの微笑み、まぶしい。
悩みが浄化される。三十路女の悩みが、浄化される。
うん、明日、悩もう。
「ミズサワさん、それと個人的にですが、先日素晴らしい生地を譲っていただきありがとうございます。これで彼女に相応しい花嫁衣装を準備してあげられます」
例のフェリアレーナ様ね。セザール様、すごくうれしそうだから、良かった良かった。
「いいえ、この治験をお願いしますし、子供達をみてくれるなら、これくらいしないと」
「本当にありがとうございます」
深く感謝された。
それからセザール様とダワーさんが、退席する。代わりにリティアさんが来て、大工工房代表をつれてきた。いかにも一張羅を着ました感の現場主任みたいな日焼けした男性は、寝転ぶビアンカとルージュにびくり。
「大工工房を代表して来ました、ファベルです。今回はこれだけの大仕事を任せて頂きありがとうございます」
緊張しながらファベルさんが挨拶。
私と父も挨拶する。
「では、まず、図面の確認を」
ファベルさんがテーブルに図面を広げる。
「これは今の孤児院をベースにしたものです。予算内での案ですね。全体的に拡張しています」
ふむふむ。そうなのか。
「全く今と同じサイズの部屋はどれですか?」
父が質問。
「この院長室ですね」
「これがトイレですか?」
「はい」
「これが風呂で、これが台所?」
「そうです」
「建坪率はどうなってます? 日差しはどんな感じですかね?」
わからんっ。
『ユイ、眠いのです』
『時間かかる?』
ビアンカとルージュも私と同じ顔だ。
『あまり遅いと、お乳の時間がずれるのです』
『そうね』
「ん? そうやな、ちょっと時間かかりそうやね」
父が答えてる。なら、職人ギルドの応接室で話しましょうということになり、父だけ向かう。帰りは職人ギルドの人が送ってくれると。
私は蜂蜜や糸の買い取りしてもらったから、お金を受け取って帰るだけ。
お茶を頂きながらタージェルさんを待つ。
「お待たせしました」
ニコニコとしたタージェルさんがやって来る。
「買い取り価格でございます」
蜂蜜 日本産 100ml 21本 9000
200ml 10本 18000
カナダ産 100ml 19本 11000
200ml 11本 22000
メキシコ産 100ml 22本 7000
200ml 9本 14000
中国産 100ml 30本 6000
200ml 14本 12000
メープルシロップ 100ml 45本 15000
砂糖 10キロ 400000 6個
麻 無地 16種 10m 25000 100枚
13種 30m 75000 58枚
ストライプ 11種 10m 47000 60枚
8種 30m 141000 35枚
ギンガムチェック 8種 10m 60000 34枚
6種 30m 180000 16枚
綿 無地 25種 10m 52000 96枚
19種 30m 156000 58枚
ストライプ 13種 10m 90000 59枚
10種 30m 270000 26枚
ギンガムチェック 10種 10m 110000 50枚
7種 30m 330000 20枚
タータンチェック 12種 10m 150000 49枚
9種 30m 450000 18枚
綿麻(柄物) 52種 10m 110000 160枚
40種 30m 330000 89枚
レース糸 単色 10色 1100 1060個
グラデーション 7色 2500 800個
毛糸 単色 25色 750 1350個
グラデーション 10色 2500 680個
刺繍糸 90色 800 980本
「合計1億3377万8500になります」
通って良かった異世界への扉。
だけどアルブレンと額が違う。まあ、地域によって買い取り価格変わるか。マーファを北上した所に、国営農場があり、麻の生産が盛んで養蜂もしているそうだ。
「素晴らしい品々ですな。これだけの高品質な蜂蜜、メープルシロップ、瓶、砂糖、中々お目にかかることはありません。そしてこの麻の布にしても素晴らしいですな」
どこで、とは聞いてくれないからありがたい。
白金貨、大金貨、金貨、銀貨、銅貨、数大丈夫。書類大丈夫。サインをして魔力を流す。
「ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ。ミズサワ様には言葉にならないほどの感謝です。ダンジョンといい、ドラゴンといい。本当に感謝です」
後日知ったのだけど、タージェルさんの息子さんは警備の方で、もしドラゴンが襲って来たら、真っ先に対応する部署にいるそうだ。ドラゴンに襲われたら、まず、助からないと。
知らないうちに助けられたのなら、それで、よか。
「今回の孤児院建設で、来年度の税もかなり免除されますよ」
?
「ぜ、税?」
「? そうですよ」
? ? ?
「ミズサワ様、これだけ短期間でこれだけの額ですよ。半分近く差し引かれますが、孤児院の建設がありますからね、かなり免除されますよ」
忘れてたーッ。税金、いや、人頭税ッ。前年度の収入で引かれるやつだッ。
ヤバい、この数ヶ月で10億行ってるはず。なんせドラゴンがね。ドラゴンがねえ。
『ユイ、どうしたのです?』
『焦ってるわよ』
ビアンカとルージュが顔を上げて心配してくれる。
「ちょ、ちょっと待ってね。あの、まさか、晃太、弟もですか?」
「いえ。ミズサワ様だけですよ。ミズサワ様の収入は従魔によるものですからね。主人のミズサワ様の収入です。弟さんは失礼な言葉で申し訳ないですが、ほぼ、無収入です。サイン類は、すべてユイ・ミズサワ様ですからね。弟さんは共同で提出していますが、サインは一つもありませんから、書類上収入ゼロです」
あ、そうだ、ダンジョンとかのドロップ品の買い取り書類のサイン、全部私だ。
「あの、参考までに、これからもし収入がないとしたら、来年度の人頭税ってお幾らになります?」
嫌な予感するけど、聞いておかない訳にはいかない。言葉が、自分の言葉がおかしい。
「そうですなあ」
タージェルさんが、頭の中で計算してくれる。
「少なくとも2億、いや越しますな」
あ、ヤバい。
今日だけで、8億近く出てった。孤児院の建て替えだって、あの父の様子から追加がでるはず、スイッチ入ってたし。いや、多少はいいけど、必要なお金だけど。
これは、家族会議? いや、単純に考えたら、あれだ。
冷蔵庫ダンジョンだよねえ。
ちゅどん、どかんだ。
うん、ちゅどん、どかんだ。
頑張ろう、ドロップ品回収係。うん、頑張らんといかん。悩んでいる暇なか。
私と父でギルドに向かう。本日はラーヴさんとマアデン君だ。ビアンカとルージュもしっかり付いてきてくれる。
リティアさんが応接室に案内してくれる。場所、覚えているんだけどなあ。何度も来たし。それでも案内してくれる。ありがたい。
空調の効いた応接室には、すでにセザール様とダワーさん。
「すみません、遅くなりました」
慌てる私と父。ビアンカとルージュは気にせず、定位置に寝転ぶ。
「いいえ、早く来すぎただけですから」
セザール様は私と父に着席を促してくれる。
ソファーに座る私と父。さっとリティアさんがお茶を出してくれる。
「まず、治験の件ですが、来月頭から正式に稼働することになりました。初めはマーファのみで、治験を行います。ある程度の結果を得られれば、国家事業として申請をしていきます」
国家事業とな、やっぱり大事になった。任せて正解だ。
ダワーさんが続ける。
「冒険者ギルドにも、必要な薬草採取を常時依頼として出しましたし、これの作成には新人達を当たらせます。新人の薬剤師達も張り切っておりますからね。もちろん儂が監督します」
「はい、お願いします」
良かった、なんとかなった。
「あのこちら資金です」
私がアイテムボックスから袋を出す。大金貨がびっしり詰まっている袋。白金貨は孤児院の建物関係で全部出してしまったので、大金貨200枚。
「あの、ミズサワさん。こんなに?」
ダワーさんが困惑している。
「はい、大丈夫です」
すると、袋を見たセザール様が、少し疑問を浮かべながら聞いてくる。
「失礼ですが、孤児院の件といい、どうしてここまでしていただけるのですか? これだけの資産があれば、優雅に暮らせますよね?」
「ああ、それですか」
いつか、誰かに聞かれるかな、と思っていた。
「お金に関しては私達実感湧かないんです。自分で汗水流したお金じゃないですしね。すべてビアンカとルージュのおかげですから。ビアンカやルージュや子供達に必要なお金は確保しないといけませんが、それでも有り余ります。私達はそれが怖いんです。人間が変わりそうで。それにビアンカとルージュを引き合わせてくれたのは、神様のおかげだと思っています。だから、この世界を大切に思っている神様にご恩返しをするのに、多少お金を還元しなくてはいけないって、思っています。それで子供達が助かって、誰かが幸せなら、私達は十分なんです」
私の答えに、セザール様とダワーさんは黙って聞いてくれた。働いてからのお金じゃないから、実感が湧かない。逆に怖い時がある。実感の湧かないお金が、大量に入ってくる。重みを感じない。薬草を摘んで提出した時は、あんなに銅貨が重かったのに。私がやってるのは、ドロップ品を拾い、数えてギルドに渡すくらいだ。労働としての対価はかなり少ないと思う。どちらかと言うと、母が一番働いているかも。せっせとビアンカとルージュの為、孤児院の子供達の為に、料理しているし。
私はこのまま、ドロップ品回収係でいいのだろうか?
「そうですか。野暮なことをお聞きしました」
セザール様が微笑む。イケメンの微笑み、まぶしい。
悩みが浄化される。三十路女の悩みが、浄化される。
うん、明日、悩もう。
「ミズサワさん、それと個人的にですが、先日素晴らしい生地を譲っていただきありがとうございます。これで彼女に相応しい花嫁衣装を準備してあげられます」
例のフェリアレーナ様ね。セザール様、すごくうれしそうだから、良かった良かった。
「いいえ、この治験をお願いしますし、子供達をみてくれるなら、これくらいしないと」
「本当にありがとうございます」
深く感謝された。
それからセザール様とダワーさんが、退席する。代わりにリティアさんが来て、大工工房代表をつれてきた。いかにも一張羅を着ました感の現場主任みたいな日焼けした男性は、寝転ぶビアンカとルージュにびくり。
「大工工房を代表して来ました、ファベルです。今回はこれだけの大仕事を任せて頂きありがとうございます」
緊張しながらファベルさんが挨拶。
私と父も挨拶する。
「では、まず、図面の確認を」
ファベルさんがテーブルに図面を広げる。
「これは今の孤児院をベースにしたものです。予算内での案ですね。全体的に拡張しています」
ふむふむ。そうなのか。
「全く今と同じサイズの部屋はどれですか?」
父が質問。
「この院長室ですね」
「これがトイレですか?」
「はい」
「これが風呂で、これが台所?」
「そうです」
「建坪率はどうなってます? 日差しはどんな感じですかね?」
わからんっ。
『ユイ、眠いのです』
『時間かかる?』
ビアンカとルージュも私と同じ顔だ。
『あまり遅いと、お乳の時間がずれるのです』
『そうね』
「ん? そうやな、ちょっと時間かかりそうやね」
父が答えてる。なら、職人ギルドの応接室で話しましょうということになり、父だけ向かう。帰りは職人ギルドの人が送ってくれると。
私は蜂蜜や糸の買い取りしてもらったから、お金を受け取って帰るだけ。
お茶を頂きながらタージェルさんを待つ。
「お待たせしました」
ニコニコとしたタージェルさんがやって来る。
「買い取り価格でございます」
蜂蜜 日本産 100ml 21本 9000
200ml 10本 18000
カナダ産 100ml 19本 11000
200ml 11本 22000
メキシコ産 100ml 22本 7000
200ml 9本 14000
中国産 100ml 30本 6000
200ml 14本 12000
メープルシロップ 100ml 45本 15000
砂糖 10キロ 400000 6個
麻 無地 16種 10m 25000 100枚
13種 30m 75000 58枚
ストライプ 11種 10m 47000 60枚
8種 30m 141000 35枚
ギンガムチェック 8種 10m 60000 34枚
6種 30m 180000 16枚
綿 無地 25種 10m 52000 96枚
19種 30m 156000 58枚
ストライプ 13種 10m 90000 59枚
10種 30m 270000 26枚
ギンガムチェック 10種 10m 110000 50枚
7種 30m 330000 20枚
タータンチェック 12種 10m 150000 49枚
9種 30m 450000 18枚
綿麻(柄物) 52種 10m 110000 160枚
40種 30m 330000 89枚
レース糸 単色 10色 1100 1060個
グラデーション 7色 2500 800個
毛糸 単色 25色 750 1350個
グラデーション 10色 2500 680個
刺繍糸 90色 800 980本
「合計1億3377万8500になります」
通って良かった異世界への扉。
だけどアルブレンと額が違う。まあ、地域によって買い取り価格変わるか。マーファを北上した所に、国営農場があり、麻の生産が盛んで養蜂もしているそうだ。
「素晴らしい品々ですな。これだけの高品質な蜂蜜、メープルシロップ、瓶、砂糖、中々お目にかかることはありません。そしてこの麻の布にしても素晴らしいですな」
どこで、とは聞いてくれないからありがたい。
白金貨、大金貨、金貨、銀貨、銅貨、数大丈夫。書類大丈夫。サインをして魔力を流す。
「ありがとうございます」
「いいえ、こちらこそ。ミズサワ様には言葉にならないほどの感謝です。ダンジョンといい、ドラゴンといい。本当に感謝です」
後日知ったのだけど、タージェルさんの息子さんは警備の方で、もしドラゴンが襲って来たら、真っ先に対応する部署にいるそうだ。ドラゴンに襲われたら、まず、助からないと。
知らないうちに助けられたのなら、それで、よか。
「今回の孤児院建設で、来年度の税もかなり免除されますよ」
?
「ぜ、税?」
「? そうですよ」
? ? ?
「ミズサワ様、これだけ短期間でこれだけの額ですよ。半分近く差し引かれますが、孤児院の建設がありますからね、かなり免除されますよ」
忘れてたーッ。税金、いや、人頭税ッ。前年度の収入で引かれるやつだッ。
ヤバい、この数ヶ月で10億行ってるはず。なんせドラゴンがね。ドラゴンがねえ。
『ユイ、どうしたのです?』
『焦ってるわよ』
ビアンカとルージュが顔を上げて心配してくれる。
「ちょ、ちょっと待ってね。あの、まさか、晃太、弟もですか?」
「いえ。ミズサワ様だけですよ。ミズサワ様の収入は従魔によるものですからね。主人のミズサワ様の収入です。弟さんは失礼な言葉で申し訳ないですが、ほぼ、無収入です。サイン類は、すべてユイ・ミズサワ様ですからね。弟さんは共同で提出していますが、サインは一つもありませんから、書類上収入ゼロです」
あ、そうだ、ダンジョンとかのドロップ品の買い取り書類のサイン、全部私だ。
「あの、参考までに、これからもし収入がないとしたら、来年度の人頭税ってお幾らになります?」
嫌な予感するけど、聞いておかない訳にはいかない。言葉が、自分の言葉がおかしい。
「そうですなあ」
タージェルさんが、頭の中で計算してくれる。
「少なくとも2億、いや越しますな」
あ、ヤバい。
今日だけで、8億近く出てった。孤児院の建て替えだって、あの父の様子から追加がでるはず、スイッチ入ってたし。いや、多少はいいけど、必要なお金だけど。
これは、家族会議? いや、単純に考えたら、あれだ。
冷蔵庫ダンジョンだよねえ。
ちゅどん、どかんだ。
うん、ちゅどん、どかんだ。
頑張ろう、ドロップ品回収係。うん、頑張らんといかん。悩んでいる暇なか。
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