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偽善者③
パーティーハウスに戻り、両親に事情説明。
母は詐欺ではないかと疑い、父も待ったをかけた。
「まともな借金やなかろう? こっちの担保事情は知らんけど、正式な契約内容か調べんと。必要なら、ハルスフォン様に頼らんといかんよ」
「どうやって正式かどうか調べるん?」
「おそらく書面があるはずや、それが正式なものか調べんと」
「なら………明日、お父さん、一緒に来てくれる?」
「明日は無理や。ファベルさんの工房に、鍛冶師ギルドの人と会議や」
父は最近知識を買われ、日本でいう電化製品の再現を試みている。スライサーはすでに出来ているし、次は小型のミシン、足踏みミシンを挑戦している。これは母のリクエストだ。今、母は燃えている。春にマーファ中央で大がかりなお祭りがあり、なんと出店が決まった。やはり、セーラー服の型紙を作った事。定期的に色々作っては、パーカーさんのお店に置かせてもらっている。なかなか好評で、並べたら即完売している事があり、パーカーさんからどうですか、と話があり試しに1日することに。母の作るのは、もちろん子供服だけではない、男性用のシャツや女性用ブラウス等々、リボンを飾ったヘアゴム等の小物も人気だ。ミシンの縫い目に着目したフィナさんが、母にコツを聞いてきた。母は言葉を濁した、電気でミシンで、びゃーっと縫いました、何て言えず。咄嗟に若い頃使っていた足踏みミシンの事を説明。フィナさん、パーカーさんが食いついてきたので、父に再現できないか挑戦している。昔、私の祖母、つまり父の母の足踏みミシンを、ばらした事がある父にしかできないことだ。
当時、相当祖母に絞られたそうだけどね。
現在、再現の為に、鑑定SSSを使って試行錯誤している。万能、超万能。
で、お祭りだ。
母は自作の服を出品することになった。そのお祭りには飲食の露店も出るが、こういった服装品が大半だ。工房や販売店を持てない人達が折半して出店したり、勤めに出れない針子さんが、コツコツ作った服を売ったりするし、わざわざ別の街から行商の方も来る、とても賑やかな祭りだ。そして、このお祭りの最大の魅力は、身分関係なく入れることだ。もちろんスリとかひったくり防止に、警備は万全を期している。今は日帰りでダンジョンに行っているし、冒険者の皆さんがいるため、ダンジョン内でルームを開けない。なので毎朝、パーティーハウスの奥の寝室で、ルームを開けっ放しにして出掛けている、そのドアが空いている時間、母が使用している。電気ミシンは、コンセントのあるルームの中でしか使えないからだ。開けっ放し時間は6時間。長期にダンジョンに潜ると、サブ・ドアも使えないし、すごく不便だと母は愚痴っている。なので、いつでも使える足踏みミシンの出来上がりを楽しみにしている。
現在、話を聞き付けた鍛冶師ギルド、職人ギルドで制作をしていて、父はその主要メンバーだ。
「そうね、無理ね」
父の鑑定SSSなら、書面みたら、一発で違法かどうかわかるのに。
「とにかく安易に払わない事。書面を見せられてもお父さんが確認するまでなんもせんとよ?」
「分かった」
父にしっかり釘を刺された。
次の日。
ジョアンさんとアリソンさんに、スラム街に行くことを告げると反対された。
「ミズサワさん、スラム街は危険です。貴女のような人がいったら、格好の餌食ですよ」
ジョアンさんが首を横に振る。
「あの、ビアンカとルージュがいますから、大丈夫かと…………」
「逆に目立ちます、どんな難癖つけてくるか。ありもしない怪我をでっち上げて、金を要求したり、スラム街を歩き回ったと悪評のように流すと、脅してきます」
「そ、それは困りましたね」
どうしよう、でも、あの子達に約束したし。
しかし、そんなところに孤児院あるの?
「じゃあ、ビアンカとルージュはお留守番?」
困る、とても困る。
「姉ちゃん、わいはそれには反対」
晃太と同意見だ。
「よね」
『どうしたのです?』
『ユイだけ行かせないわよ?』
「あのね………」
私が説明すると、ルージュが事も無げに言う。
『なら、私が姿を消して付いていくわ、それで良いでしょう?』
「姿を消す? どうやって?」
『簡単よ』
そう言ってルージュが、集中を始める。
すると、ルージュの白い体が消える。え?
『光の魔法で誤魔化しているだけよ。気配や足音まで消せないし、動けば微妙に分かるの。でも、これなら付いていけるでしょう?』
「凄かね、あのジョアンさん。これならどうですか?」
姿を消したルージュに驚いていたが、結局了承してくれた。そしてジョアンさんが同行してくれると。ビアンカはお留守番だ、何かあれば直ぐに駆けつけてくれると。
確かに誤魔化しているだけなのか、時折、空間が歪んでルージュのシルエットが出たりしている。
待ち合わせ場所には、昨日の男の子が1人で待っていた。私に話しかけてきた子だ。
「本当に来てくれた」
「約束したやろ?」
男の子はコルソン君。半年前に成人して、手っ取り早く稼ごうと冒険者になった。昨日話していた女の子を性奴隷にって話だけど、コルソン君の妹が対象になっていて、なんとかしたかったそうだ。いいお兄ちゃんや。
同行したジョアンさんに驚いていたが、ルージュが魔法を解除して、姿を出したのにさらに驚いていた。
コルソン君に案内されて、スラム街に向かう。
「ミズサワさん、スラム街に入るならフードを被ってください。念のためです」
「あ、はい」
ここは従おう。晃太もジョアンさんもフードを被る。
「ルージュ、おる?」
『いるわよ』
うん、安心。
しばらく歩いて、多分スラム街に入る。明確な境界線は分からないが、建物や道、何より漂う空気がなんだか鬱蒼としてきた。そして、臭いだ。何か腐ったような臭いが漂って来た。
『臭いわ』
「我慢して」
少し構えていたら、誰かが争う声が。
見えてしまった、誰かが地面に転がされて、複数人に足蹴にされている。
思わず声が、悲鳴が出そうになるが、ジョアンさんが腕をつかんで止めてきた。首を横に振るジョアンさん。
余計なトラブルに首を突っ込むな、だろうけど、このままにしてはおけんけど。
「あ、ルージュ、唸って」
『唸るだけでいいの? 魔法ぶちこむわよ?』
「唸るだけでお願いします」
私達は物陰に隠れて、ルージュに託す。
グルルルルルルゥ
グルルルルルルゥ
グルルルルルルゥ
足蹴にしていた複数人、人相悪そうな男達は、ピタリと止まり、辺りを見渡す。その顔には不安と戸惑い。
グルルルルルルゥ
グルルルルルルゥ
ルージュの唸り声は止まない。
見えないから、余計に怖い。私がされたら一目散に逃げるわな。
グルルルルルルゥ
グルルルルルルゥ
姿のない低音の猛獣の唸り声、とうとう男達は逃げ出した。
私が倒れた人、男性だ、駆け寄る。わあ、顔が腫れてる。
治療の為にポーションを出そうとしたら、ジョアンさんが止めた。
「ここは善意を踏みにじる場所ですよ」
「そ、そうかもしれませんが………」
ちらりと男性を見る、まだ若い男性は、なんとか起き上がろうともがいている。手も傷だらけだ。
ほおっておけんけど。
私は目深にフードを被り顔を更に隠し、アイテムボックスから、中級ポーションを出して、男性に押し付ける。
「飲むなり、捨てるなり、好きにしい。自己責任やからね」
それだけ言って、私達はその場を後にした。
ジョアンさんはあんまりいい顔しなかったけどね。仕方ないって顔でそれ以上は言わなかった。
それから更にスラム街を進む。
「ねえ、コラソン君、いつもあんな事あるの?」
「たまにあるよ。変な縄張り争いしてて、関係ない人が通りかかっただけで、お金要求したり、暴力振るったりしてる」
こわかあ。
「縄張りって、ここ誰の土地なん?」
「知らない。勝手に自分の縄張りって言ってるだけだよ」
「始末がわるかな」
晃太も愚痴る。
自分の所有している土地ならいざ知らず、知らない人の土地で縄張り争いってなんやねん。
話していると、孤児院に到着。
「え? これ?」
「うん」
それは、廃屋のような建物だった。
母は詐欺ではないかと疑い、父も待ったをかけた。
「まともな借金やなかろう? こっちの担保事情は知らんけど、正式な契約内容か調べんと。必要なら、ハルスフォン様に頼らんといかんよ」
「どうやって正式かどうか調べるん?」
「おそらく書面があるはずや、それが正式なものか調べんと」
「なら………明日、お父さん、一緒に来てくれる?」
「明日は無理や。ファベルさんの工房に、鍛冶師ギルドの人と会議や」
父は最近知識を買われ、日本でいう電化製品の再現を試みている。スライサーはすでに出来ているし、次は小型のミシン、足踏みミシンを挑戦している。これは母のリクエストだ。今、母は燃えている。春にマーファ中央で大がかりなお祭りがあり、なんと出店が決まった。やはり、セーラー服の型紙を作った事。定期的に色々作っては、パーカーさんのお店に置かせてもらっている。なかなか好評で、並べたら即完売している事があり、パーカーさんからどうですか、と話があり試しに1日することに。母の作るのは、もちろん子供服だけではない、男性用のシャツや女性用ブラウス等々、リボンを飾ったヘアゴム等の小物も人気だ。ミシンの縫い目に着目したフィナさんが、母にコツを聞いてきた。母は言葉を濁した、電気でミシンで、びゃーっと縫いました、何て言えず。咄嗟に若い頃使っていた足踏みミシンの事を説明。フィナさん、パーカーさんが食いついてきたので、父に再現できないか挑戦している。昔、私の祖母、つまり父の母の足踏みミシンを、ばらした事がある父にしかできないことだ。
当時、相当祖母に絞られたそうだけどね。
現在、再現の為に、鑑定SSSを使って試行錯誤している。万能、超万能。
で、お祭りだ。
母は自作の服を出品することになった。そのお祭りには飲食の露店も出るが、こういった服装品が大半だ。工房や販売店を持てない人達が折半して出店したり、勤めに出れない針子さんが、コツコツ作った服を売ったりするし、わざわざ別の街から行商の方も来る、とても賑やかな祭りだ。そして、このお祭りの最大の魅力は、身分関係なく入れることだ。もちろんスリとかひったくり防止に、警備は万全を期している。今は日帰りでダンジョンに行っているし、冒険者の皆さんがいるため、ダンジョン内でルームを開けない。なので毎朝、パーティーハウスの奥の寝室で、ルームを開けっ放しにして出掛けている、そのドアが空いている時間、母が使用している。電気ミシンは、コンセントのあるルームの中でしか使えないからだ。開けっ放し時間は6時間。長期にダンジョンに潜ると、サブ・ドアも使えないし、すごく不便だと母は愚痴っている。なので、いつでも使える足踏みミシンの出来上がりを楽しみにしている。
現在、話を聞き付けた鍛冶師ギルド、職人ギルドで制作をしていて、父はその主要メンバーだ。
「そうね、無理ね」
父の鑑定SSSなら、書面みたら、一発で違法かどうかわかるのに。
「とにかく安易に払わない事。書面を見せられてもお父さんが確認するまでなんもせんとよ?」
「分かった」
父にしっかり釘を刺された。
次の日。
ジョアンさんとアリソンさんに、スラム街に行くことを告げると反対された。
「ミズサワさん、スラム街は危険です。貴女のような人がいったら、格好の餌食ですよ」
ジョアンさんが首を横に振る。
「あの、ビアンカとルージュがいますから、大丈夫かと…………」
「逆に目立ちます、どんな難癖つけてくるか。ありもしない怪我をでっち上げて、金を要求したり、スラム街を歩き回ったと悪評のように流すと、脅してきます」
「そ、それは困りましたね」
どうしよう、でも、あの子達に約束したし。
しかし、そんなところに孤児院あるの?
「じゃあ、ビアンカとルージュはお留守番?」
困る、とても困る。
「姉ちゃん、わいはそれには反対」
晃太と同意見だ。
「よね」
『どうしたのです?』
『ユイだけ行かせないわよ?』
「あのね………」
私が説明すると、ルージュが事も無げに言う。
『なら、私が姿を消して付いていくわ、それで良いでしょう?』
「姿を消す? どうやって?」
『簡単よ』
そう言ってルージュが、集中を始める。
すると、ルージュの白い体が消える。え?
『光の魔法で誤魔化しているだけよ。気配や足音まで消せないし、動けば微妙に分かるの。でも、これなら付いていけるでしょう?』
「凄かね、あのジョアンさん。これならどうですか?」
姿を消したルージュに驚いていたが、結局了承してくれた。そしてジョアンさんが同行してくれると。ビアンカはお留守番だ、何かあれば直ぐに駆けつけてくれると。
確かに誤魔化しているだけなのか、時折、空間が歪んでルージュのシルエットが出たりしている。
待ち合わせ場所には、昨日の男の子が1人で待っていた。私に話しかけてきた子だ。
「本当に来てくれた」
「約束したやろ?」
男の子はコルソン君。半年前に成人して、手っ取り早く稼ごうと冒険者になった。昨日話していた女の子を性奴隷にって話だけど、コルソン君の妹が対象になっていて、なんとかしたかったそうだ。いいお兄ちゃんや。
同行したジョアンさんに驚いていたが、ルージュが魔法を解除して、姿を出したのにさらに驚いていた。
コルソン君に案内されて、スラム街に向かう。
「ミズサワさん、スラム街に入るならフードを被ってください。念のためです」
「あ、はい」
ここは従おう。晃太もジョアンさんもフードを被る。
「ルージュ、おる?」
『いるわよ』
うん、安心。
しばらく歩いて、多分スラム街に入る。明確な境界線は分からないが、建物や道、何より漂う空気がなんだか鬱蒼としてきた。そして、臭いだ。何か腐ったような臭いが漂って来た。
『臭いわ』
「我慢して」
少し構えていたら、誰かが争う声が。
見えてしまった、誰かが地面に転がされて、複数人に足蹴にされている。
思わず声が、悲鳴が出そうになるが、ジョアンさんが腕をつかんで止めてきた。首を横に振るジョアンさん。
余計なトラブルに首を突っ込むな、だろうけど、このままにしてはおけんけど。
「あ、ルージュ、唸って」
『唸るだけでいいの? 魔法ぶちこむわよ?』
「唸るだけでお願いします」
私達は物陰に隠れて、ルージュに託す。
グルルルルルルゥ
グルルルルルルゥ
グルルルルルルゥ
足蹴にしていた複数人、人相悪そうな男達は、ピタリと止まり、辺りを見渡す。その顔には不安と戸惑い。
グルルルルルルゥ
グルルルルルルゥ
ルージュの唸り声は止まない。
見えないから、余計に怖い。私がされたら一目散に逃げるわな。
グルルルルルルゥ
グルルルルルルゥ
姿のない低音の猛獣の唸り声、とうとう男達は逃げ出した。
私が倒れた人、男性だ、駆け寄る。わあ、顔が腫れてる。
治療の為にポーションを出そうとしたら、ジョアンさんが止めた。
「ここは善意を踏みにじる場所ですよ」
「そ、そうかもしれませんが………」
ちらりと男性を見る、まだ若い男性は、なんとか起き上がろうともがいている。手も傷だらけだ。
ほおっておけんけど。
私は目深にフードを被り顔を更に隠し、アイテムボックスから、中級ポーションを出して、男性に押し付ける。
「飲むなり、捨てるなり、好きにしい。自己責任やからね」
それだけ言って、私達はその場を後にした。
ジョアンさんはあんまりいい顔しなかったけどね。仕方ないって顔でそれ以上は言わなかった。
それから更にスラム街を進む。
「ねえ、コラソン君、いつもあんな事あるの?」
「たまにあるよ。変な縄張り争いしてて、関係ない人が通りかかっただけで、お金要求したり、暴力振るったりしてる」
こわかあ。
「縄張りって、ここ誰の土地なん?」
「知らない。勝手に自分の縄張りって言ってるだけだよ」
「始末がわるかな」
晃太も愚痴る。
自分の所有している土地ならいざ知らず、知らない人の土地で縄張り争いってなんやねん。
話していると、孤児院に到着。
「え? これ?」
「うん」
それは、廃屋のような建物だった。
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