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祭り⑤
ロッシュさんの案内で、私は父とルージュでシュタインさんが、担ぎ込まれた治療院へ。
すでに周りは暗く、ルージュに光のリンゴを出して貰う。
「ごめんねルージュ。時間かかると思うけどよか?」
『いいわよ』
さすがに中まで付いてこれない為、ルージュは外で待機する。遅い時間だけど、ロッシュさんが取り次いでくれた。身分証の提示は必要だったけど。
シュタインさんは奥の個室だった。
部屋の入り口で膝を抱えて座り込むマアデン君とハジェル君。
「マアデン、ハジェル」
そっと声をかけるロッシュさん。疲れた顔を上げる。
「お前らは帰れ、俺とラーヴが付く」
「でも、リーダー…………」
「シュタインさんが、あ、ユイさん」
ハジェル君が私に気が付く。
私は2人の前に膝を突く。
「今はリーダーさんの言うことば聞きい。ひどい顔や、さあ、帰って休み。明日、リーダーさん達と交代よ」
「でも、でも…………」
「シュタインさん、目、覚まさないっす…………」
そう言うと、2人の目からぼろぼろと涙が浮かび、零れる。
やはり、冒険者とはいえ未成年、シュタインさんの容態が受け入れられず、ショックなんだろう。まあ、あの状態や、誰だってショックや。しかもシュタインさんは、マアデン君とハジェル君にとっては仲間やからね。
「それはな、シュタインさんの体が回復に付いていかんけん、今は休息しているだけや」
父は穏やかに説明する。
顔を見合わせるマアデン君とハジェル君。
「とにかくお前らは帰れ、明日の朝に来い。いいな?」
いつもの強面に静かに優しい表情を浮かべながら、静かにロッシュさんが言う。2人はやっと立ち上がる。
「俺達帰ります」
「明日来ます」
マアデン君とハジェル君は荷物を抱える。
見送ると、ハジェル君が私を振り返る。
「ユイさんが、デニスみたいに、助けてくれるんすか?」
やっぱり、何か察知していたんだろう、ハジェル君が聞いてきた。
「私やないよ」
ハジェル君の顔がくしゃりと歪む。
「シュタインさんはね、神様が、助けてくれるんよ」
私の答えに、ハジェル君が戸惑うが、ぐい、と目元を拭う。
ハジェル君は直角になるまで頭を下げる、マアデン君もだ。
「気をつけて帰るんよ」
「「はい」」
荷物を抱えた2人を見送る。さあ、これからや。
部屋の中には、ラーヴさんが椅子に腰かけて、シュタインさんの側にいた。
「ラーヴ」
「あ、リーダー。あ、ユイさんにリュウタさん、なんで?」
「いいから、ちょっと」
ロッシュさんがラーヴさんを呼び、小声で指示を出す。
「誰も部屋に入れるな。いいな? 後で説明する。シュタインの為だ」
「…………分かった」
ラーヴさんはそんな説明でも指示に従い、部屋のドアの向こうに。
「ユイさん、お願いします」
「はい」
私はシュタインさんが横たわるベッドの側に。ラーヴさんが座っていた椅子に腰かけ、父ももう一つの椅子に腰かける。
私はパーティーハウスでロッシュさんに説明した。
父には高い鑑定スキルがあり、シュタインさんの状態を把握できること。そして私にはその父の鑑定を頼りに傷を治し、血液再生できる能力があることを。『神への祈り』と言う言葉は臥せたけどね。
「ただ、まだ私がこの力をまともに使いこなせないんです。なので父の鑑定を併用しながら行います。エリクサーが残っていたら、一番ですが、もうありません。このまま黙って見ているだけか、僅かな希望ですが、私達に任せて頂くかです。そして、この力に付いては、ロッシュさんの胸に一生しまってください」
ロッシュさんはすぐに頷いた。
私はシュタインさんの顔を見る。顔面蒼白で、呼吸も浅い。そっと冷たい手を取り、脈を確認。弱い
かなり微弱だ。左腕は布で固定されていてみれない。
「優衣。体内血液量76% 内臓損傷は腹部に集中しとる。左の腎臓がほぼ機能しとらん。左腕の接合は75%」
「ショック状態やん」
とにかく、血液再生と臓器再生、それから左腕の筋肉や骨の再生や。
「優衣、ゆっくりな、ゆっくり魔力を流すんよ。弱く全身に行き渡るようにな」
「分かった」
父のアドバイスに従い、私は両手でシュタインさんの手を握る。
「神様、シュタインさんの血液再生、臓器再生、血管再生、筋組織再生、骨再生をしてください。私の意識が持つ限り」
すう、と魔力が抜かれる。
「優衣っ、強すぎや、もっと少しずつ、少しずつっ」
父がいきなりダメ出し。私は慌てて流れ出る魔力を絞る。魔力を流す訓練しといて良かった。ビアンカの言うように、そっと、息を吐き出すように、魔力を流す。
「そう。それくらいや」
少しずつ魔力を流す。
流しながら、徐々にシュタインさんの中に流れる私の魔力が、ぼんやりと頭の中で見えてきた。やはり、魔力は腹部中心に流れている。そして左腕付近の流れが悪い。
「優衣、焦ったらいかん。魔力がスムーズに流れれば、大丈夫な証や。あ、力まんよ」
父が絶え間無くアドバイスをくれる。
予想以上に魔力を操るって難しい上に神経を使う。父のアドバイスが無ければ、集中力が持たなければ、調整も出来ない。
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり。
魔力調整、魔力調整、魔力調整。
適宜父がアドバイス。
私はひたすら魔力調整。おそらく魔力回復SSSがなければあっという間に枯渇していたのだろうけど。レベルも上げてて良かった。保有魔力がヒスイ達を助けた時に比べて格段に多い。
私はひたすら魔力調整を続ける。
大丈夫、きっと大丈夫。
きっと神様が助けてくれる。
神様から頂いた『神への祈り』が、シュタインさんを救ってくれる。
きっと、大丈夫。
きっと、大丈夫。
きっと、大丈夫。
す、と流れが悪かった左腕に魔力が少しずつ流れ始める。
全身に何か障害物があり流れにくかったのに、徐々に隅々まで行き渡る。
「優衣、もう、これくらいにしよう」
どれくらいしたか、父が私の肩をそっと叩く。
私は我に返り、息を吐き出す。
手はびっしょりと汗が。いや、手だけではない、全身汗だくだ。
ぐらり。
一瞬、頭が、まるで脳が揺さぶられる感覚が。
「優衣、大丈夫ね?」
「だ、大丈夫、大丈夫や」
そうは言ったが、全身が重い、とんでもなく気だるい。いかん、気を抜いたら、寝そうや。
「お父さん、シュタインさんは?」
「ああ、体内血液量88% 内臓損傷軽微、血管はすべて再生、腎臓も正常に動いとる。左腕も結合92% 後は中級ポーションで回復可能レベルや」
「そうね」
聞きながら、脱した、と思う。
小さなランプの下、シュタインさんの顔色と脈を確認。先ほどに比べてずいぶんいい。呼吸もしっかりしている。
これで、よか。
うっすら、シュタインさんが目を開ける。ぼんやりと私を見ている。
「もう、大丈夫ですよ」
そう言うと、シュタインさんは再び眠りに就いた。
「ユイさん」
「ロッシュさん、とりあえずは危機は脱したと思います」
「あ、ありがとうございます」
「いいえ、後はしっかり療養して…………」
言いながら椅子から何とか立ち上がると、私は膝から崩れ落ちる。
あ、意識が一瞬飛んだ。
あ、目が回る。世界が回る。目を開けていられない。
「優衣っ」
「ユイさんっ」
目が回る、世界が回る。
頭が、腕が、体が重い。ダメや、起き上がれん。
両膝を付いて、そのまま床に踞る。
ダメや、意識がもたん。
「お父さん………」
「何ね?」
「ごめん、おぶって…………」
帰らないと、母が心配する、コハクやヒスイがおるけん、ルージュも帰らんといかん。
私は父にお願いして、そのまま床に倒れこんだ。
すでに周りは暗く、ルージュに光のリンゴを出して貰う。
「ごめんねルージュ。時間かかると思うけどよか?」
『いいわよ』
さすがに中まで付いてこれない為、ルージュは外で待機する。遅い時間だけど、ロッシュさんが取り次いでくれた。身分証の提示は必要だったけど。
シュタインさんは奥の個室だった。
部屋の入り口で膝を抱えて座り込むマアデン君とハジェル君。
「マアデン、ハジェル」
そっと声をかけるロッシュさん。疲れた顔を上げる。
「お前らは帰れ、俺とラーヴが付く」
「でも、リーダー…………」
「シュタインさんが、あ、ユイさん」
ハジェル君が私に気が付く。
私は2人の前に膝を突く。
「今はリーダーさんの言うことば聞きい。ひどい顔や、さあ、帰って休み。明日、リーダーさん達と交代よ」
「でも、でも…………」
「シュタインさん、目、覚まさないっす…………」
そう言うと、2人の目からぼろぼろと涙が浮かび、零れる。
やはり、冒険者とはいえ未成年、シュタインさんの容態が受け入れられず、ショックなんだろう。まあ、あの状態や、誰だってショックや。しかもシュタインさんは、マアデン君とハジェル君にとっては仲間やからね。
「それはな、シュタインさんの体が回復に付いていかんけん、今は休息しているだけや」
父は穏やかに説明する。
顔を見合わせるマアデン君とハジェル君。
「とにかくお前らは帰れ、明日の朝に来い。いいな?」
いつもの強面に静かに優しい表情を浮かべながら、静かにロッシュさんが言う。2人はやっと立ち上がる。
「俺達帰ります」
「明日来ます」
マアデン君とハジェル君は荷物を抱える。
見送ると、ハジェル君が私を振り返る。
「ユイさんが、デニスみたいに、助けてくれるんすか?」
やっぱり、何か察知していたんだろう、ハジェル君が聞いてきた。
「私やないよ」
ハジェル君の顔がくしゃりと歪む。
「シュタインさんはね、神様が、助けてくれるんよ」
私の答えに、ハジェル君が戸惑うが、ぐい、と目元を拭う。
ハジェル君は直角になるまで頭を下げる、マアデン君もだ。
「気をつけて帰るんよ」
「「はい」」
荷物を抱えた2人を見送る。さあ、これからや。
部屋の中には、ラーヴさんが椅子に腰かけて、シュタインさんの側にいた。
「ラーヴ」
「あ、リーダー。あ、ユイさんにリュウタさん、なんで?」
「いいから、ちょっと」
ロッシュさんがラーヴさんを呼び、小声で指示を出す。
「誰も部屋に入れるな。いいな? 後で説明する。シュタインの為だ」
「…………分かった」
ラーヴさんはそんな説明でも指示に従い、部屋のドアの向こうに。
「ユイさん、お願いします」
「はい」
私はシュタインさんが横たわるベッドの側に。ラーヴさんが座っていた椅子に腰かけ、父ももう一つの椅子に腰かける。
私はパーティーハウスでロッシュさんに説明した。
父には高い鑑定スキルがあり、シュタインさんの状態を把握できること。そして私にはその父の鑑定を頼りに傷を治し、血液再生できる能力があることを。『神への祈り』と言う言葉は臥せたけどね。
「ただ、まだ私がこの力をまともに使いこなせないんです。なので父の鑑定を併用しながら行います。エリクサーが残っていたら、一番ですが、もうありません。このまま黙って見ているだけか、僅かな希望ですが、私達に任せて頂くかです。そして、この力に付いては、ロッシュさんの胸に一生しまってください」
ロッシュさんはすぐに頷いた。
私はシュタインさんの顔を見る。顔面蒼白で、呼吸も浅い。そっと冷たい手を取り、脈を確認。弱い
かなり微弱だ。左腕は布で固定されていてみれない。
「優衣。体内血液量76% 内臓損傷は腹部に集中しとる。左の腎臓がほぼ機能しとらん。左腕の接合は75%」
「ショック状態やん」
とにかく、血液再生と臓器再生、それから左腕の筋肉や骨の再生や。
「優衣、ゆっくりな、ゆっくり魔力を流すんよ。弱く全身に行き渡るようにな」
「分かった」
父のアドバイスに従い、私は両手でシュタインさんの手を握る。
「神様、シュタインさんの血液再生、臓器再生、血管再生、筋組織再生、骨再生をしてください。私の意識が持つ限り」
すう、と魔力が抜かれる。
「優衣っ、強すぎや、もっと少しずつ、少しずつっ」
父がいきなりダメ出し。私は慌てて流れ出る魔力を絞る。魔力を流す訓練しといて良かった。ビアンカの言うように、そっと、息を吐き出すように、魔力を流す。
「そう。それくらいや」
少しずつ魔力を流す。
流しながら、徐々にシュタインさんの中に流れる私の魔力が、ぼんやりと頭の中で見えてきた。やはり、魔力は腹部中心に流れている。そして左腕付近の流れが悪い。
「優衣、焦ったらいかん。魔力がスムーズに流れれば、大丈夫な証や。あ、力まんよ」
父が絶え間無くアドバイスをくれる。
予想以上に魔力を操るって難しい上に神経を使う。父のアドバイスが無ければ、集中力が持たなければ、調整も出来ない。
ゆっくり、ゆっくり、ゆっくり。
魔力調整、魔力調整、魔力調整。
適宜父がアドバイス。
私はひたすら魔力調整。おそらく魔力回復SSSがなければあっという間に枯渇していたのだろうけど。レベルも上げてて良かった。保有魔力がヒスイ達を助けた時に比べて格段に多い。
私はひたすら魔力調整を続ける。
大丈夫、きっと大丈夫。
きっと神様が助けてくれる。
神様から頂いた『神への祈り』が、シュタインさんを救ってくれる。
きっと、大丈夫。
きっと、大丈夫。
きっと、大丈夫。
す、と流れが悪かった左腕に魔力が少しずつ流れ始める。
全身に何か障害物があり流れにくかったのに、徐々に隅々まで行き渡る。
「優衣、もう、これくらいにしよう」
どれくらいしたか、父が私の肩をそっと叩く。
私は我に返り、息を吐き出す。
手はびっしょりと汗が。いや、手だけではない、全身汗だくだ。
ぐらり。
一瞬、頭が、まるで脳が揺さぶられる感覚が。
「優衣、大丈夫ね?」
「だ、大丈夫、大丈夫や」
そうは言ったが、全身が重い、とんでもなく気だるい。いかん、気を抜いたら、寝そうや。
「お父さん、シュタインさんは?」
「ああ、体内血液量88% 内臓損傷軽微、血管はすべて再生、腎臓も正常に動いとる。左腕も結合92% 後は中級ポーションで回復可能レベルや」
「そうね」
聞きながら、脱した、と思う。
小さなランプの下、シュタインさんの顔色と脈を確認。先ほどに比べてずいぶんいい。呼吸もしっかりしている。
これで、よか。
うっすら、シュタインさんが目を開ける。ぼんやりと私を見ている。
「もう、大丈夫ですよ」
そう言うと、シュタインさんは再び眠りに就いた。
「ユイさん」
「ロッシュさん、とりあえずは危機は脱したと思います」
「あ、ありがとうございます」
「いいえ、後はしっかり療養して…………」
言いながら椅子から何とか立ち上がると、私は膝から崩れ落ちる。
あ、意識が一瞬飛んだ。
あ、目が回る。世界が回る。目を開けていられない。
「優衣っ」
「ユイさんっ」
目が回る、世界が回る。
頭が、腕が、体が重い。ダメや、起き上がれん。
両膝を付いて、そのまま床に踞る。
ダメや、意識がもたん。
「お父さん………」
「何ね?」
「ごめん、おぶって…………」
帰らないと、母が心配する、コハクやヒスイがおるけん、ルージュも帰らんといかん。
私は父にお願いして、そのまま床に倒れこんだ。
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