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首都へ⑧
見慣れない天井が。あ、ゲストハウスの寝室だ。
「にゃあ~、にゃあ~」
ヒスイが私の寝かされていたベッドに上半身を乗せ、ペロペロ。う、ざらざらしてる。けど、かわいかあ。
「なんね。ヒスイちゃん、心配してくれとったんの」
もふもふ、もふもふん。
起き上がるが、全身に倦怠感がまとわりつく。
そう言えば、確か、最後に時空神様が抱っこしてくれたなあ。
………………………………………は、恥ずかしかぁッ
だけど、エマちゃんもリーダーさんも、両手があったし、自分で起き上がっていたし。
とにかく、自分の目で確かめたい。
私はパジャマに着替えていた。母がしてくれたんだろう。
立ち上がる、うわあ、ぐらつく、倦怠感もすごい、まるでインフルエンザの一番悪い時期みたいだ。だけど、歩けないことはない。慎重にドアまで歩いて開けると、近くにリーダーさんが立っていた。
「にゃあ~」
ヒスイが階段を駆け下りる。
「リーダーさん、寝てなくて大丈夫なんですか?」
「はい。なんの問題もありません、ユイ様」
「様、やめてくださいよ」
私が言うと、リーダーさんが苦笑い。
キズらしいキズがない。あの時のままだ、アルブレンで最後に見た時と同じ感じだ。彫りの深い顔立ちの、たくましい腕に、高い背丈。私の冒険者の初めのイメージの人だ。
「コウタ様が心配されていますよ」
「ああ、あれ? リーダーさん、ケガの具合は? 痛みはないんですか?」
胝のある大きな手を差し出されて反射的に乗せてしまうが、痛みがあるのでは、と引っ込める。
「問題ありません」
「本当に?」
私はあちこちチェック。たくましい腕や耳を、じーっと見ると、やはり途中でぐらぐらし始める。いかん、額を押さえて息を整える。
「ユイ様に安静が必要ですよ」
「様、やめてくださいよ。あ、エマちゃんも見ないと」
「エマも無事です。なんとお礼を言ったらいいか」
「いいんですよ。私の力じゃないし」
神への祈りのおかげだ、時空神様が特別に力を貸してくれただけだ。あ、今日のご挨拶しないと。
ぐらついたので、結局、リーダーさんの手を借りて階段を下りる。
『ユイ、ずいぶん魔力の流れがいいのです』
『そうね。あと一息って感じね』
「クゥンクゥンクゥーン」
ビアンカとルージュ、花が階段下で待っていた。
「ビアンカ、ルージュ、ありがとうね……………なんで花がおると?」
まあ、いいや。ぽちゃぽちゃボディのかわいかこと。
階段の先は居間に繋がり、晃太やエマちゃん達が揃っている。
「ユイさんッ」
チュアンさんが、様をつけろと注意している。
「エマちゃん、具合どう?」
見覚えのある服、あ、私のシャツとズボンだ。右手もきちんと動いているし、顔色もいいし。マデリーンさんも私の服。ミゲル君とテオ君は晃太のジャージだ。リーダーさんとチュアンさんは商会から着たまま。
駆け寄ってきたエマちゃんの顔に触る、キズなし。うん、良かった。
「痛いところなか?」
「うん」
「動きにくいとかなか?」
「うん………」
頷くエマちゃんの目に、涙が浮かぶ。
「手は、大丈夫な?」
「うん…………………」
「エマちゃん、よく、頑張ったね。えらかよ」
「うん………………………」
ぼろぼろと涙を溢すエマちゃんを、私はそっと抱き寄せる。
「うっ、うっ、ユイさぁん…………」
わなわな、わなわな、肩を震わすエマちゃん。
私は背中を優しくさする。
「ユイさぁん、うっ、うっ、痛かったぁ……………」
うん、きっと、その一言だけでは済まされない痛みがあったはず。
「うっ、うっ、こ、怖かったあ……………」
うん、きっと、私が思う以上の恐怖や不安があったはず。おそらく目は見えてなかったろうし、右手は失くなったし、何より顔のキズが酷かった。奴隷として、パーティーごと買われなければ、バラで売られる。そうなれば、皆離ればなれだ。毎日怖くて怖くて堪らなかったはず。
わなわな泣くエマちゃんを、私はそっと抱き締める。私の腕にすっぽり入る小さな体で、わなわな震えている。
「エマちゃん、ありがとうね、うちらが来るまで頑張ってくれて。もう、大丈夫やけんね、大丈夫やけんね」
「うっ、うっ、うわぁぁぁぁんッ、ユイさぁぁんッ」
とうとう声を上げて泣き出すエマちゃん。
リーダーさんが離そうとしたけど、私は手で制して、わんわん泣くエマちゃんを落ち着くまで抱き締めた。
エマちゃんが落ち着いて、居間のソファーに座る。皆さん遠慮したけど、座ってくださいと勧めて、やっと着席。ビアンカとルージュはゲストハウスの庭で遊ぶ仔達を見ている。
「晃太、お母さんは?」
花がソファーによじ登るため、引き上げながら聞く。花がいれば、つまり、母がいるのだが、見当たらない。
「おらんよ、実はな」
晃太の話だと、私が気絶したあと色々片付けて、両親と花はマーファにサブ・ドアを使って戻った。だけど、私が閉めなければドアは時間が来るまで開きっぱなしだ。で、花が母の目を盗んで時間ギリギリでルームに戻って来たため、花を溺愛している晃太が、花をルームに置き去りにできるわけなくこちらに連れてきたそうだ。
「ならまず花ばマーファに戻すかね。花ちゃん、お母さんのところにいこうね」
「ふんふんっ」
時間を見ると、11:26。ご飯時や。私はまったく食欲はない。と、言うか寝たい。が、花をこのままにしておけない。
「皆さん、今からルームを開けます。詳しい説明は後日で構いませんか?」
聞くと頷いてくれる。
よし。
「晃太、お昼まだやろ?」
「ん」
「ビアンカとルージュ呼んで、ルームでお昼にしよう」
「ん」
さて、と。
「ルーム」
いつものドアが現れる。
「さあ、どうぞ」
初めて目にしたエマちゃんとリーダーさんが驚いた顔をしている。
花は慣れたもので、ダイニングキッチンに走っていく。
「ユイさん、これ、何?」
「エマ、様をつけろ」
リーダーさんがピシャリと叱る。
「いいんですよ。リーダーさん、様、つけるのはやめてくださいよ。エマちゃん、これは私のスキルよ、内緒ね」
「うんッ」
全員でルームに入る。
ビアンカとルージュ、仔達を確認。私は一旦出て、ゲストハウスの厩舎で待つノワールの元に。
「ブルブルッ」
「ノワール、心配しとったん? ありがとうね。さ、ルームに入ろうかね」
「ブヒヒンッ」
再びルームを開け、ノワールを誘導する。
そして、サブ・ドアを開けて母を呼ぶ。
「優衣、大丈夫ね?」
「うん、だいぶいいよ」
「クゥーンクゥーンクゥーン」
花が母の足元でローリングする。
「花ちゃん、もう、心配しとったんよお」
母が花をでれれ、と抱き上げる。
「お父さんは?」
「ファベルさんの工房、足踏みミシンの試作品が出来るって」
「そうな」
いよいよやね。
私と母はダイニングキッチンに戻ると、晃太が以前使っていた足の低いテーブルを出している。そうや、鷹の目の皆さんのば、準備せんと。
「ちょっと、もへじ生活に行ってくる」
「あ、ダメばい姉ちゃん。時空神様が姉ちゃんは今、魔力回復ポーションの中毒状況やけん。明日までは魔力を流したり、消耗はさせたらいかんって」
「え? そうな?」
不便や。異世界への扉が使えない。鷹の目の皆さんの服や靴、生活用品揃えたかったなあ。
どうやら時空神様は、あの時、私が中毒死寸前だったのをギリギリまで中和してくれたそうだ。本当にありがたい、お礼しないと。
「明後日からも使ってもちょっとだけってさ。後は親父の鑑定しながら状況見ろって」
「そうなあ」
不便やあ。
「一応な、治療法は聞いたよ。朝晩にわいの光属性の支援と、チュアンさんの解毒魔力をかけたら、元に戻るのは早いはずやって。今日の朝の分はしとるけんね」
「そうね、ありがとう。チュアンさん、ありがとうございます」
「私は当然のことをしたまでですユイ様」
「様、やめてくださいよ、本当に。まあ、それはおいといて、お昼やね。私はいいけど……………」
まず、ビアンカとルージュにJOY-Pの日替りランチを5人前タップ。テーブルにいきなり食事が出て来て、鷹の目の皆さんが驚いている。本日のランチはハンバーグとコロッケだ。
「な、なんだ、食事がでてきた」
「どどどういう仕組みだ?」
「あ、きっとアイテムボックスに入っていたのね」
「なんだ、そっかそっか」
「ぐー」
「ぐー」
お腹の音はテオ君とエマちゃんだ。2人とも恥ずかしそうだ、かわいか。
「では、契約にありましたが、ビアンカとルージュのお世話です。この大きな皿に、移し替えてください」
私が驚いたままの皆さんに指示を出すと、すぐに動いてくれた。ビアンカとルージュの皿にてんこ盛りにランチが。リーダーさんとチュアンさんが運んでくれる。次に仔達のご飯とノワールのご飯を準備。落ち着いて、やっと神様にお供えだ。予め購入してあるもへじ生活の個包装のお菓子、多めに並べる。後は苺2パック、ブドウジュースとストレートティーを。
では。
私は神棚に向かって手を合わせる。晃太と母もだ。
「神様、昨日はありがとうございました」
と、言いそうになる。時空神様は、始祖神様に内緒だって言ってたから、あらためてお礼を言おう。
「今日もお見守りください」
お祈り。
目を開けると、きれいになくなっていた。
振り返ると、鷹の目の皆さんもお祈りしてくれていた。お菓子やジュースがなくなっているのには、驚いていたけど。詳しい説明は後後。
私はお昼の為にタップ。異世界のメニューは一切魔力を必要しないからね。お金だけだ。
めんどくさいから、JOY-Pのランチにしよう。リーダーさんとチュアンさんとミゲル君とテオ君は大盛と。テオ君、最後に見た時に比べて背が伸びてる。まだまだ成長期やね。私よりちょっと高い背が、晃太に迫る勢いだ。
こんなもんだね、さあ、私もそろそろ限界。
「じゃあ、私、寝ます。お母さん部屋借りるね」
「優衣、ご飯は?」
「今は食べれんわ」
私はお茶のペットボトルだけもち母の寝室へ。
エマちゃんが心配して付いてきたが、これは時間をかけないと治らなそうだしね。
「晃太、皆さんにルーム内の設備の説明しとって。夕方には起こしてね」
「ん、分かった」
「ユイさん、大丈夫?」
「うん、ちょっと寝てみるよ。エマちゃん、しっかり食べてね」
「うんッ」
後ろで、リーダーさんが、こらっ、うーん、見たことある。懐かしさあ。
『ユイ、ご飯食べないのですか?』
『受け付けないの?』
「そうやね、食欲ないだけやけん。じきに良くなるよ」
寝室に向かう途中で、ビアンカとルージュが顔を上げる。心配してくれている。ビアンカとルージュには、魔力を供給してもらったから、何かせんとね。ダイエットしてるけど、たまにはよかろう、ホールケーキを注文するかね。私の中毒が治ったら、銀の槌に行こう。
母が私に付き添い、ベッドに横になると布団をかけ直してくれる。
「ペットボトル1本でよか?」
「これでよか。お母さん、鷹の目の皆さんの栄養になるような夕御飯ば作って」
「まかせんしゃい」
頼もしい。
そう思って、目を閉じると、私はあっという間に眠りに落ちた。
「にゃあ~、にゃあ~」
ヒスイが私の寝かされていたベッドに上半身を乗せ、ペロペロ。う、ざらざらしてる。けど、かわいかあ。
「なんね。ヒスイちゃん、心配してくれとったんの」
もふもふ、もふもふん。
起き上がるが、全身に倦怠感がまとわりつく。
そう言えば、確か、最後に時空神様が抱っこしてくれたなあ。
………………………………………は、恥ずかしかぁッ
だけど、エマちゃんもリーダーさんも、両手があったし、自分で起き上がっていたし。
とにかく、自分の目で確かめたい。
私はパジャマに着替えていた。母がしてくれたんだろう。
立ち上がる、うわあ、ぐらつく、倦怠感もすごい、まるでインフルエンザの一番悪い時期みたいだ。だけど、歩けないことはない。慎重にドアまで歩いて開けると、近くにリーダーさんが立っていた。
「にゃあ~」
ヒスイが階段を駆け下りる。
「リーダーさん、寝てなくて大丈夫なんですか?」
「はい。なんの問題もありません、ユイ様」
「様、やめてくださいよ」
私が言うと、リーダーさんが苦笑い。
キズらしいキズがない。あの時のままだ、アルブレンで最後に見た時と同じ感じだ。彫りの深い顔立ちの、たくましい腕に、高い背丈。私の冒険者の初めのイメージの人だ。
「コウタ様が心配されていますよ」
「ああ、あれ? リーダーさん、ケガの具合は? 痛みはないんですか?」
胝のある大きな手を差し出されて反射的に乗せてしまうが、痛みがあるのでは、と引っ込める。
「問題ありません」
「本当に?」
私はあちこちチェック。たくましい腕や耳を、じーっと見ると、やはり途中でぐらぐらし始める。いかん、額を押さえて息を整える。
「ユイ様に安静が必要ですよ」
「様、やめてくださいよ。あ、エマちゃんも見ないと」
「エマも無事です。なんとお礼を言ったらいいか」
「いいんですよ。私の力じゃないし」
神への祈りのおかげだ、時空神様が特別に力を貸してくれただけだ。あ、今日のご挨拶しないと。
ぐらついたので、結局、リーダーさんの手を借りて階段を下りる。
『ユイ、ずいぶん魔力の流れがいいのです』
『そうね。あと一息って感じね』
「クゥンクゥンクゥーン」
ビアンカとルージュ、花が階段下で待っていた。
「ビアンカ、ルージュ、ありがとうね……………なんで花がおると?」
まあ、いいや。ぽちゃぽちゃボディのかわいかこと。
階段の先は居間に繋がり、晃太やエマちゃん達が揃っている。
「ユイさんッ」
チュアンさんが、様をつけろと注意している。
「エマちゃん、具合どう?」
見覚えのある服、あ、私のシャツとズボンだ。右手もきちんと動いているし、顔色もいいし。マデリーンさんも私の服。ミゲル君とテオ君は晃太のジャージだ。リーダーさんとチュアンさんは商会から着たまま。
駆け寄ってきたエマちゃんの顔に触る、キズなし。うん、良かった。
「痛いところなか?」
「うん」
「動きにくいとかなか?」
「うん………」
頷くエマちゃんの目に、涙が浮かぶ。
「手は、大丈夫な?」
「うん…………………」
「エマちゃん、よく、頑張ったね。えらかよ」
「うん………………………」
ぼろぼろと涙を溢すエマちゃんを、私はそっと抱き寄せる。
「うっ、うっ、ユイさぁん…………」
わなわな、わなわな、肩を震わすエマちゃん。
私は背中を優しくさする。
「ユイさぁん、うっ、うっ、痛かったぁ……………」
うん、きっと、その一言だけでは済まされない痛みがあったはず。
「うっ、うっ、こ、怖かったあ……………」
うん、きっと、私が思う以上の恐怖や不安があったはず。おそらく目は見えてなかったろうし、右手は失くなったし、何より顔のキズが酷かった。奴隷として、パーティーごと買われなければ、バラで売られる。そうなれば、皆離ればなれだ。毎日怖くて怖くて堪らなかったはず。
わなわな泣くエマちゃんを、私はそっと抱き締める。私の腕にすっぽり入る小さな体で、わなわな震えている。
「エマちゃん、ありがとうね、うちらが来るまで頑張ってくれて。もう、大丈夫やけんね、大丈夫やけんね」
「うっ、うっ、うわぁぁぁぁんッ、ユイさぁぁんッ」
とうとう声を上げて泣き出すエマちゃん。
リーダーさんが離そうとしたけど、私は手で制して、わんわん泣くエマちゃんを落ち着くまで抱き締めた。
エマちゃんが落ち着いて、居間のソファーに座る。皆さん遠慮したけど、座ってくださいと勧めて、やっと着席。ビアンカとルージュはゲストハウスの庭で遊ぶ仔達を見ている。
「晃太、お母さんは?」
花がソファーによじ登るため、引き上げながら聞く。花がいれば、つまり、母がいるのだが、見当たらない。
「おらんよ、実はな」
晃太の話だと、私が気絶したあと色々片付けて、両親と花はマーファにサブ・ドアを使って戻った。だけど、私が閉めなければドアは時間が来るまで開きっぱなしだ。で、花が母の目を盗んで時間ギリギリでルームに戻って来たため、花を溺愛している晃太が、花をルームに置き去りにできるわけなくこちらに連れてきたそうだ。
「ならまず花ばマーファに戻すかね。花ちゃん、お母さんのところにいこうね」
「ふんふんっ」
時間を見ると、11:26。ご飯時や。私はまったく食欲はない。と、言うか寝たい。が、花をこのままにしておけない。
「皆さん、今からルームを開けます。詳しい説明は後日で構いませんか?」
聞くと頷いてくれる。
よし。
「晃太、お昼まだやろ?」
「ん」
「ビアンカとルージュ呼んで、ルームでお昼にしよう」
「ん」
さて、と。
「ルーム」
いつものドアが現れる。
「さあ、どうぞ」
初めて目にしたエマちゃんとリーダーさんが驚いた顔をしている。
花は慣れたもので、ダイニングキッチンに走っていく。
「ユイさん、これ、何?」
「エマ、様をつけろ」
リーダーさんがピシャリと叱る。
「いいんですよ。リーダーさん、様、つけるのはやめてくださいよ。エマちゃん、これは私のスキルよ、内緒ね」
「うんッ」
全員でルームに入る。
ビアンカとルージュ、仔達を確認。私は一旦出て、ゲストハウスの厩舎で待つノワールの元に。
「ブルブルッ」
「ノワール、心配しとったん? ありがとうね。さ、ルームに入ろうかね」
「ブヒヒンッ」
再びルームを開け、ノワールを誘導する。
そして、サブ・ドアを開けて母を呼ぶ。
「優衣、大丈夫ね?」
「うん、だいぶいいよ」
「クゥーンクゥーンクゥーン」
花が母の足元でローリングする。
「花ちゃん、もう、心配しとったんよお」
母が花をでれれ、と抱き上げる。
「お父さんは?」
「ファベルさんの工房、足踏みミシンの試作品が出来るって」
「そうな」
いよいよやね。
私と母はダイニングキッチンに戻ると、晃太が以前使っていた足の低いテーブルを出している。そうや、鷹の目の皆さんのば、準備せんと。
「ちょっと、もへじ生活に行ってくる」
「あ、ダメばい姉ちゃん。時空神様が姉ちゃんは今、魔力回復ポーションの中毒状況やけん。明日までは魔力を流したり、消耗はさせたらいかんって」
「え? そうな?」
不便や。異世界への扉が使えない。鷹の目の皆さんの服や靴、生活用品揃えたかったなあ。
どうやら時空神様は、あの時、私が中毒死寸前だったのをギリギリまで中和してくれたそうだ。本当にありがたい、お礼しないと。
「明後日からも使ってもちょっとだけってさ。後は親父の鑑定しながら状況見ろって」
「そうなあ」
不便やあ。
「一応な、治療法は聞いたよ。朝晩にわいの光属性の支援と、チュアンさんの解毒魔力をかけたら、元に戻るのは早いはずやって。今日の朝の分はしとるけんね」
「そうね、ありがとう。チュアンさん、ありがとうございます」
「私は当然のことをしたまでですユイ様」
「様、やめてくださいよ、本当に。まあ、それはおいといて、お昼やね。私はいいけど……………」
まず、ビアンカとルージュにJOY-Pの日替りランチを5人前タップ。テーブルにいきなり食事が出て来て、鷹の目の皆さんが驚いている。本日のランチはハンバーグとコロッケだ。
「な、なんだ、食事がでてきた」
「どどどういう仕組みだ?」
「あ、きっとアイテムボックスに入っていたのね」
「なんだ、そっかそっか」
「ぐー」
「ぐー」
お腹の音はテオ君とエマちゃんだ。2人とも恥ずかしそうだ、かわいか。
「では、契約にありましたが、ビアンカとルージュのお世話です。この大きな皿に、移し替えてください」
私が驚いたままの皆さんに指示を出すと、すぐに動いてくれた。ビアンカとルージュの皿にてんこ盛りにランチが。リーダーさんとチュアンさんが運んでくれる。次に仔達のご飯とノワールのご飯を準備。落ち着いて、やっと神様にお供えだ。予め購入してあるもへじ生活の個包装のお菓子、多めに並べる。後は苺2パック、ブドウジュースとストレートティーを。
では。
私は神棚に向かって手を合わせる。晃太と母もだ。
「神様、昨日はありがとうございました」
と、言いそうになる。時空神様は、始祖神様に内緒だって言ってたから、あらためてお礼を言おう。
「今日もお見守りください」
お祈り。
目を開けると、きれいになくなっていた。
振り返ると、鷹の目の皆さんもお祈りしてくれていた。お菓子やジュースがなくなっているのには、驚いていたけど。詳しい説明は後後。
私はお昼の為にタップ。異世界のメニューは一切魔力を必要しないからね。お金だけだ。
めんどくさいから、JOY-Pのランチにしよう。リーダーさんとチュアンさんとミゲル君とテオ君は大盛と。テオ君、最後に見た時に比べて背が伸びてる。まだまだ成長期やね。私よりちょっと高い背が、晃太に迫る勢いだ。
こんなもんだね、さあ、私もそろそろ限界。
「じゃあ、私、寝ます。お母さん部屋借りるね」
「優衣、ご飯は?」
「今は食べれんわ」
私はお茶のペットボトルだけもち母の寝室へ。
エマちゃんが心配して付いてきたが、これは時間をかけないと治らなそうだしね。
「晃太、皆さんにルーム内の設備の説明しとって。夕方には起こしてね」
「ん、分かった」
「ユイさん、大丈夫?」
「うん、ちょっと寝てみるよ。エマちゃん、しっかり食べてね」
「うんッ」
後ろで、リーダーさんが、こらっ、うーん、見たことある。懐かしさあ。
『ユイ、ご飯食べないのですか?』
『受け付けないの?』
「そうやね、食欲ないだけやけん。じきに良くなるよ」
寝室に向かう途中で、ビアンカとルージュが顔を上げる。心配してくれている。ビアンカとルージュには、魔力を供給してもらったから、何かせんとね。ダイエットしてるけど、たまにはよかろう、ホールケーキを注文するかね。私の中毒が治ったら、銀の槌に行こう。
母が私に付き添い、ベッドに横になると布団をかけ直してくれる。
「ペットボトル1本でよか?」
「これでよか。お母さん、鷹の目の皆さんの栄養になるような夕御飯ば作って」
「まかせんしゃい」
頼もしい。
そう思って、目を閉じると、私はあっという間に眠りに落ちた。
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